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“価値のある人間になれ”
昔からの父様の口癖だ
その言葉を父様は何度も俺にぶつけてきた
また”価値ある人間”になれなかった
怒りと悔しさを噛み締めながらチッと舌打ちをすると聞き覚えのある声が聞こえた
「またお父様に呼び出されていたのですか」
実の兄のオーター・マドルだ
「..てめえには関係ねぇだろ..」
才能に恵まれ、価値があると認められた人間がこっちの気持ちなんか分かる訳ねぇ
昔から兄貴は才能に恵まれていた。学校のテストではいつも満点を取り、成績も優秀
勿論素行も悪いはずがなく1部の教師からは「子供らしくない」と気味悪がられたという
昔兄貴が父様と喋っているところを俺は1回だけ見た事ある
まだ兄貴が小学校高学年の頃だろうか
俺と同じく成績の話や価値のある人間になれたかどうかだった
「オーター最近の成績はどうだ」
「はい、お父様。テストはいつも通り満点、授業も積極的に挙手しています 」
「前にも言ったことを覚えているか」
「…価値のないものとは関係を持たない 」
「嗚呼そうだ。」
「何度も言っているが、この世は魔法で人間の価値が決まる。」
「魔法の才能がある者には価値があり魔法の才能がない者は価値がない」
「価値のない人間と絡んでいるとお前まで価値が下がる」
「テストで満点を取る事や授業で積極的に挙手するなどそんなの当たり前のことだ」
「勉強を怠るんじゃないぞ。お前はそこらの遊び回ってる子供なんかと違うんだからな」
「..はい、お父様。期待に応えます。」
と、その後はあまり良く聞こえなかったが
あの時の兄貴はまるで”機械”のようだった
司令に従って行動をし、優秀な成績を収めても褒められることは無い。まるで機械だ
あと、これは俺の勘違いかもしれねぇがあの後、兄貴はどこか”寂しそうな”表情をしていた
兄貴がそんな表情をするなんてとても珍しい、明日は雪でも降るのではないかと疑うぐらいだ
その後は兄貴が部屋を出ようとしてバレたらまずいと思い、急いで父様の部屋から離れた
「また成績のことですか」
「チッ……嗚呼」
「あんなに呼び出してお父様も飽きないですね」
「知るかよ..」
「たまには話くらい聞きますよ」
「…は…?」
「成績の事呼び出されていたのでしょう?溜め込むことはよくありません。私が話を聞きますよ」
「….なん….か…だろ……」
「…….?」
「テメェなんかに分かる訳ねぇだろ!!!」
「..?!」
「昔から才能を持っていて価値があると認められた人間にこっちの気持ちなんか分かる訳ねぇだろ!!!」
「良いよなぁ?!神覚者になったらあとは何にも縛られなくてよぉ!!!」
「話を聞いてやるだと?!巫山戯んじゃねぇ!」
「どうせ同情して後から見下すんだろ?!!」
「価値のある人間とだけ絡んでおけよ!!」
「出来損ないと関係を持ってんじゃねえ!! 」
「二度と俺の前に現れんな!!!」
「クソ兄貴がぁ!!!!」
「ッ…………….」
気がついたら兄に暴言を吐いていた
日頃のストレスと怒りが随分溜まっていたのだろう
ジロリと兄貴を睨みつけた後、俺は魔法局の中庭に急ぎ足で向かった