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紙のつばさを作るのは、思ったよりもむずかしかった。大きな紙は家にはないから、古い新聞や、
お兄ちゃんがもう使わないノートのページをつぎはぎにして、
一枚の大きな羽の形にした。
机いっぱいに広がった紙を見て、
「これで本当に飛べるのかな…」って少し不安になったけど、
やってみなきゃわからない。
お母さんが台所でパンを焼いているすきに、
柱の近くで紙の羽を背中にしょってみた。
ひもは古いマフラーを細く切って使う。
「よし…」
家の前の小さな坂道まで出て、
両手を広げて走ってみた。
風が紙をぱたぱた揺らして、
ちょっとだけ鳥になった気分。
でも、足はぜんぜん浮かない。
「もっと速く!」
思いきり走ったら、紙がびりっと破けて、
バランスをくずしてゴロンと転んだ。
そのとき、ふわっと何かが舞いおりた。
昨日の夕方に見た星の粉──
破れた羽にひらひら落ちて、
光の跡を残した。
「やっぱり、この粉があれば…」
わたしは胸がどきどきした。
紙の翼はまだ完ぺきじゃないけど、
星の粉と合わせたら、本当に飛べるかもしれない。
そのとき、家のほうからお母さんの声がした。
「ミナ〜、何してるの〜?」
「……練習!」
そう答えて、破れた紙の翼を背中に隠した。
──明日はもっと大きな翼を作ろう。
そして、あの粉の行き先を見に行くんだ。