あの後輩アイドルキラーのトリックスター…通称トリスタがサバイバーになったとトラッパーから聞いた。
理由は単純。
全滅を一度も取れなかったこと、そして自分の欲のためだけにサバイバーを殺し、
彼らを一度もフックに吊るさなかったこと。
まぁあの目立ちたがりのトリスタにはいい罰だと思っていたが、数日経っても戻ってくる様子はなかった。
あの邪神の気が済めば戻るとトラッパーから聞いてはいたが…。
「そうだ!来ないなら連れ戻せばいいんだ。」
僕は知らず知らずの内に彼に依存していた…多分。
あの子犬のように僕に引っ付き、怒鳴ったり冷たくすれば目に涙を浮かばせる程打たれ弱い彼の表情を、
僕にだけ見せてくれた孤独と絶望の入り交じった表情を…僕だけが知ってる彼を忘れることが出来なかった。
僕に、気になったことを執拗に質問責めで近づいてくる彼の声や体温の暖かさが忘れられない…。
彼はまだサバイバーとして儀式をやっているのか?
僕以外にあの表情を見せていないだろうか?
そんな考えでいっぱいだった。
「ついた…」
僕はサバイバーがいつも集まる焚き火の焚いてある場所まで行き、木の影に隠れる。
「─ありがとう。」
彼の声だ。久々に聞けて嬉しい…だが、どうしてキラーである君があの無意味な行動をする奴らに感謝を述べてるの?
そんな疑問がよぎった。
なんだ?この胸が押し付けられる感覚は…。
息をするのが苦しくなってくる。
嗚呼、速く彼と話がしたい。
また彼の表情を見たい…。
そんな考えでいっぱいだった。
しかし次の瞬間、僕は吐き気のするような光景を見てしまった。
彼が…僕のトリスタが、女のサバイバーを抱き締めていた。
「(え…)」
なんで?なんでソイツを抱き締めてるの?
儀式終わりに『疲れた~ぁ…』と重たい体を僕に預けてくれた君は、自分から抱き締めに行ける力があるのか?
そんなことはどうでもいい。
今すぐにでもあの女を殺したい。
彼は僕のものだ。
どんな色目を使ったのかは分からないが、これは相当万死に値するぞ…!!!
ナイフを取り出し、無防備を発動しようと態勢を取った時、僕にある考えが思い付いた。
「(そうだ…)」
トリスタには悪いけど、僕以外の女に目を付けた事への罰として殺そう。
どうせこの世界では『死』なんて存在しないんだ。
次に目を開ければあら不思議、生き返ってる。
そしてあの女…彼を殺した後に儀式で殺してやる。
彼が自分から抱き締めに行くほどだ。
相当な色目を使っているはず…もしかすると…肉体関係…いや、それは考えないことにしよう。
「エンティティ様」
僕は大急ぎで邪神のいる場所に向かい、ある取引をした。
《ほう?面白そうだが…それをする事への私のメリットは?》
「それならこんなのはどうでしょう。かくれんぼという呈で儀式を行い、彼をメメントで処刑するのです。」
《なるほど……それなら許可する。》
「それからあともう一つ。これは質問なのですが…彼を処刑した後、彼をキラーに戻す余地はありますか?」
《ふむ…その時になれば分かるまい。私を満足させてくれよ?》
「承知しました。」
これですべての計画が整った。
空に珍しく月が見えた。
あの黄色い満月と彼の目の色を合わせてしまう。
想像する度、胸が苦しくなる。
速くこの気持ちを晴らそう。
「待っててね、トリスタ。僕が取り戻すから」
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