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第6話 二人なら、戦える
硝子の向こうで、栖梧は記録板へ目を落としていた。
「……予想以上ですね」
隣で澄明が頷く。
「彪守は、正面制圧と危険への即応性が高い。以前ほど先走らなくなりました」
栖梧が記録を確認する。
「理珀の判断を、かなり正確に拾っていますね」
汀生が静かに二人を見た。
「信頼しているんだろうね」
訓練場では、理珀が何かを言い、彪守が反論し、理珀がさらに返す。彪守が、黙った。
「……相変わらず、言葉では勝てないようですが」
栖梧が言うと、澄明の口元がわずかに緩んだ。
「勝つ必要もないでしょう」
記録板へ視線を戻す。
彪守。危険察知、即応、制圧能力良好。守護反応についても、他者の意思を無視して先行する傾向は大きく改善。
理珀。状況把握、観察、言語処理、即時判断能力――極めて良好。
そして、二名による共同訓練時。互いの判断を阻害せず、それぞれの不足を補完し合う。
「栖梧さん」
「はい」
「卒業後の進路希望は、まだ提出されていませんね」
「ええ。これからです」
澄明は最後の欄へ、一文を書き加えた。
《理珀・彪守ともに、卒業後の戦闘系実働班への適性あり》
少し考えて、その下へもう一行。
《特に二名一組での運用を推奨》
栖梧がそれを読む。
「……同感です」
硝子の向こう。彪守が、理珀の肩へ腕を回した。
「暑い。離れろ」
「訓練直後だ。ふらついたら支える」
「ふらついていない」
「念のためだ」
「必要ない」
「…………」
「離れろ」
腕が外れる。
汀生が小さく笑った。
「戦闘中の方が、息が合っているね」
「そのようですね」
澄明は、記録板を閉じた。閉じる音が、思いのほか静かに硝子の向こうへ響いた。
かつて――一方は、弱い者を守ろうとして囲い込んだ。一方は、それを恐れ、震えながら「離れろ」と言った。
あの日の「離れろ」と、今の「離れろ」は、同じ言葉なのに、まるで違う響きをしている。
一人が前を見る。一人が周囲を見る。一人が道を開き、一人がその道を選ぶ。
守る者と、守られる者ではない。
二人なら、戦える。
#🌀🌧️⚡️
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コメント
1件
ああ、もう……このエピソード、すごく良かったです……。 「離れろ」が、前は拒絶の言葉だったのに、今は彪守なりの気遣いや信頼に変わってるのがたまらなくて。同じ言葉なのに全然違う響きになるって、それって二人がちゃんと歩み寄ってきた証拠だと思うんです。 それに澄明たちが「二人一組での運用を推奨」って書いたところ、じんわり来ました。守る・守られるじゃなくて、対等に戦える関係——その変化が静かに、でも確かに描かれていて、読んでて胸が温かくなりました。 Hp2さん、本当に素敵な話をありがとうございます。次も楽しみにしてますね🌙