アラームが夜明けを告げる。止めても止めてもまた鳴る。昨晩も夜更かしをしてしまった。視界が霧でおおわれ、布団の重力は私を手放さない。なんとか体を 起こさせ食卓まで運ぶ。
トーストがそこにある。ニュースをみる。芸能人のスキャンダル、Youtuberの炎上、首相に対する罵詈雑言、誹謗中傷のドッチボール。笑む。スマホを片手に朝食を押し込む。食べても味がしない。コーヒーの苦さが心を陰に染める。
音楽を流す。トイレで用を済ます。今日の荷支度をする。シャワーを浴びる。制服を着る。歯を磨く。ドアの閉まる音のみが聞こえる。単調。
耳のリズムが歩調を定める。変に速いリズムには流石に追いつかない。電車の前にいる。誰もが下を向き己の脳と対話しながら亡霊のように階段を登る。今や機械は階段を登れるのか。自嘲。他人は端末と接続している。それに倣う。通知は無いが娯楽は有る。
電車内にいる。葬式の様な静かさだ。優先席は何故か空いていた。座る。視線を気にする。その必要もなかった。隣の高齢者は諦めきった様子で顔の皺や腹部の膨らみが悲しい。寝ている。その手が私の膝にあたる。膝を避ける。寂しくも手は落ちる。
まもなく到着する。駅員の稚拙な英語の発音は変わらない。嘲る。席を立つ。老人がまじまじと私を見る。少し怖い。前の軍隊に従って行進を行う。途中で、誰かと肩をぶつけた。顔も合わせない。
学校だ。塾のチラシ配りを横切る。前のクラスの人だ。名前もわからない。ホームルーム。教師の声は響くけど共鳴しない。話し声が聞こえる。スマホを触っている。絵を描いている。視線を向けるも別の考え事をしている。気体を圧縮した時の原子の様にまとまりない。
受験に使わない授業は他事をする。教師は自分に関心のある生徒がいると信じて授業を行う。8分の3程度だろう。仲間とは同調していればいい。昼食。板を片手にご飯を放り込む。ロングホームルームという時間は教室でチームを分けてクイズ大会をした。周りに強いられ口角を上げる。目を合わせる恐怖。早く帰宅する。
一人で行動を決められない。日常という作業をこなす。寝る意味を探し寝られない。今日も晩御飯が置かれる。食べられない量が並ぶ。私が食べていいのか?
今日はトンカツらしい。牛の解体が脳裏で行われる。
状況を察して微かに暴れる
足枷は柱と繋がっている
トーストを切る様に刃が喉を横切った
慟哭が血で表される
目は虚ろで足はバタつき口は開く
腹部まで裂け目ができる
頭蓋骨まで割られる
悲しくて微笑む。吐瀉物を喉で感じる。此れは誰のものなのか。購入した親のだろうか。その肉塊のだろうか。 肉の親のか。殺牛者のか。地球のか。宇宙のか。神のか。神のだとは思いたくない。神という免罪符で思考から逃れるのは、罪悪感を感じる。
体は思考を無視し食す。私の気持ちなどお構いなく現実は時に追従する。
私は何を知っているというのか?
知識?は問いを前に霧散した。
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<銷魂。自嘲。悲観。自棄。
憤慨。消沈。楽観。絶望。>
_ ____
「
[メはオマえを擒ェタ]」
視界が蒸発した。全てが粒子となり消え失せる。そこには(瞳)があった。
浮いてる
いや後ろにある
しかしそこにはない
流れている
頭上にある
脳内に侵入した?.,?
五感がイカれた。その存在以外何も感じない。視線が私を射抜く。遮る腕がない。血が凍える恐怖。虚無感が代わりに駆け巡る。心の底から見通され絶対に逆らえない存在としての差。動く体がない。どうしようもない。逃場がない。足もない。親も仲間も教師もクラスメイトにも誰にも助けられない。圧倒的なほどの絶望感。
「充実感」
支配される喜び。
魂を売っぱらう愉悦。
骨を素手で撫でられるほどに
心身が嬲られる心地よさ。
ヒレフシたい
ツカエたい
フリマワサレたい
コロサれたい
私の全てがそれを拒絶しまた求める。
「それ」は言った。
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祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらはす
奢れる人も久からず
ただ春の夜の夢のごとし
猛き者も遂にはほろびぬ
偏に風の前の塵におなじ。
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遂にはワタシ?も蒸発した。
(瞳)は閉じた。
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