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散って舞う

6 - 自己紹介

♥

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2024年05月20日

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「じゃあ、ご飯食べながら自己紹介しよっか!」

その言葉を合図に各自手を合わせ「いただきます」とテーブルに置いてあるご飯に手を伸ばす。


白米にわかめのお味噌汁、焼き鮭に野菜の漬物、飲み物には冷たい緑茶。


The和風な料理に私も不器用に箸を持ち、恐る恐る白米1口を食べてみる。

すると口に入れた瞬間にほのかに香る白米の優しい甘さが口いっぱいに広がった。

その甘さは噛めば噛むほどより甘く、私の鼻から口まで覆ってしまいそうな程に広がっていった。

その美味しさに完全に心を許してしまった私は夢中でバクバクと食べていた。



3分の1減った頃だろうか。そう言えば自己紹介をすると言っていたとハッと思い出し顔を上げると、向かい側に座っていた案内してくれた少年と目があった。


「あ、自己紹介しちゃう?」

「ん?俺は別にいいけど…」

「じゃあやっちゃおうっ!」

私も必死に首も縦に動かしてうなづいた。

すると案内してくれた少年が少しだけ頷き言葉を発した


「じゃあ自分から!」

「ソメイです!よろしくね!」

その流れに続く様に片目の少年が話す

「俺はシダレ!仲良くしような!」

次にふわふわヘアーの少年が話し出す

「僕はヤエ!仲良くしようねっ!」


続けて私も話そうとする



否、話そうとした。

でもどうしても自分の名前が思い出せない。

親は私をなんて呼んでいたか思い出してみるが記憶の中から聞こえてくるのは「お前」や「あんた」などの物ばかり。

名前を書けるように口うるさく躾られてきたのに。


名前の1文字も思い出せなかった。


3人は優しくこちらを見て待ってくれているけれど、私の中には焦りだけが募っていった。

その時だった


「ねぇ、もしかしてだけど…名前覚えて無い…?」

そうヤエが聞いてきた。

「怒られる…!」そう思ったけれど分からない物はどれだけ経っても分からないのだ。

叱られてしまう恐怖で目には涙が浮かばせ下を向き、素直に私はこくりと頷いた。


するとダンッ!と机が叩かれてビクッと体をはね上げギュッと目をつぶる。


「緊急!名前決め会議だー!!」


とソメイが声を上げ

「あ、苗字も含めて!」と後付けあの様に言い出した。


思っていた物と違い思わず顔を上げ目をパチクリさせてしまう。


するとガタッと大きな音をたてながら立ち上がりヤエが勢いよく

「はい!!愛癒きゅあ桃姫ピンクとかどうでしょう!!」

と主張する。


するとこちらもガタッと大きな音をたてながら立ちシダレが

「キラキラすぎますね!!桜坂さくらざか一子いちこなんてどうでしょう!」

と勢い良く主張した。


すると負けじと立ったソメイが

「キラキラと渋いの極端すぎます!!なのでヨシノ サクラなんてどうでしょう!!」

と主張する。


さっきまで目に浮かんでいた涙なんてとっくに引っ込んでしまい今は状況が読み込めず、目が点になってしまう。

それでもお構い無しに言い合いを続ける3人


「それじゃ普通すぎると思います!なのでやっぱり僕のが1番良いと思います!」

「普通なのが良いんですー!」

「じゃあ!間をとって俺の…!」

「「それは無い!!」」

「はぁ?!」


「じゃあ!君!」

「はい…!?」

ソメイが唐突に私に話を振り少し驚いてしまう。でもそんな事は気にもせずに話を続ける


「3人の中ならどの名前がいい!?」

「え…さ、サクラ…」

とほぼ一択の質問に悩みもせずに答えた。


すると「うわぁぁぁ!!」とシダレとヤエの悔しがる声が聞こえ

ソメイは「ふふん!」と聞こえて気そうな自慢げな表情をしていた


少し、ほんの少しだけ申し訳無くなったけどきっと私じゃ無くても同じ結末だったはずだろうからしょうがない。

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