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第5話「告白バトン」
ナナは高校二年生。肩まで伸ばした黒髪をポニーテールにまとめ、制服のスカートは膝丈、ソックスにローファー。明るい茶色の瞳で運動神経も良く、クラスの人気者だ。
だが彼女の中には四人の人格が住んでいた。
一つ目は“代表人格”で活発な性格。
二つ目は“恥ずかしがり人格”。顔をすぐ赤らめる。
三つ目は“正直すぎ人格”。思ったことを全部口に出す。
四つ目は“毒舌人格”。調子に乗るとすぐ人をからかう。
放課後の校舎裏。赤い夕日が差し込む場所で、ナナはクラスメイトのユウキを待っていた。
ユウキは背が高く、黒髪を短く刈り、サッカー部のユニフォーム姿。額にかいた汗をタオルで拭いながら現れる。
「……ナナ、呼び出しって何の用?」
代表人格のナナが一歩前に出て、深呼吸。
「ユウキくん、私……ずっと、好きでした!」
その瞬間、恥ずかしがり人格に切り替わり、頬を真っ赤に染めて小さな声で言う。
「……でも無理かも、ごめん」
ユウキが戸惑っていると、正直すぎ人格が勢いよく前に出た。
「本当はずっと、授業中に君の横顔ばっか見てた! 体育の時、ユニフォームが似合ってるなって思ってた! 髪が汗で濡れてるのもカッコいいと思ってた!」
本人は気づかぬまま、心の中の全部を口にしてしまう。
ユウキの顔がどんどん赤くなる。
追い打ちをかけるように、最後に毒舌人格が出てきた。
「……でもさ、サッカー以外は勉強ダメダメだよね。そこが可愛いんだけど、バーカ!」
ユウキは言葉を失い、目をぱちぱちさせる。
この社会では「告白にどの人格が出ていたか」を証明するため、後で校内システムに“告白ログ”を提出できる仕組みまである。だが、ユウキはただ困惑していた。
「……えっと、ナナ。どれが本当の気持ちなの?」
ナナは代表人格に戻り、必死に手を振った。
「ぜ、全部……本当、かな!」
ユウキは頭をかきながら笑う。
「すごいな……一度に4人から告白された気分だよ」
校舎裏の空気は気まずさと照れくささでいっぱい。
ナナの中では4人の人格が大騒ぎしていた。
「うまくいった?」「言いすぎた!」「でも本音!」「バーカ!」
その声の渋滞が、彼女の心をさらに赤く染めていった。