翌朝、花梨は柊の腕の中で目覚めた。
柊は、右手で花梨に腕枕をし、左手を彼女の腹部に添えてぐっすりと熟睡している。
花梨は柊を起こさないように、寝顔をそっと観察した。
間近で見る彼はやはりイケメンで、顎にはうっすらと髭が伸びている。そのワイルドさに、花梨は思わずゾクッとした。
(かっこいい……こんな素敵な人と、昨夜私は何度も愛し合ったの?)
思い出すだけで頬が赤くなる。
柊とのセックスは、回を重ねるごとに大胆になり、花梨は何度もイカされた。
それまでの花梨は、セックスに対しそれほど特別な思い入れはなかったが、柊に抱かれたことにより、女としての喜びを知ってしまった。
『もう以前の自分には戻れない……』花梨はそう感じていた。
その時、柊が目を覚ました。
花梨の存在に気づいた彼は、眩しそうに目を細めながら優しく微笑む。
「おはよう」
「おはようございます」
「眠れた?」
「はい、ぐっすり」
「そうだよな。あれだけ激しく反応したんだから、疲れてぐったりだろう」
からかうような柊の言葉に、花梨は少しムッとする。
「課長が激しすぎるせいです!」
「お? 俺のせい?」
「そうですっ!」
「ははっ、でもそれは、花梨が魅力的すぎるからだよ」
柊はそう言って、花梨の鼻の上にチュッとキスを落とす。
その優しい感触に、たちまち幸福感に包まれる。
柊の体臭、肌感覚、柔らかな髪や低くセクシーな声、そして巧みなキスと経験豊富なテクニックは、昨夜花梨を捉えて離さなかった。こんな経験をしたのは、生まれて初めてだ。
その思いは、柊も同じだった。
彼は一晩ですっかり花梨の虜になってしまった。彼女と結ばれてから、今までに感じたことのない感情が次々とあふれ出してくる。こんな気持ちになったのは初めてなので、自分でも驚いていた。
柊は腕枕をそっとはずし、少し身体を起こしてから花梨にキスを始める。
燦々とやわらかな日差しが降り注ぐ朝、二人は再び昨夜と同じ動きを繰り返していく。
それは、さわやかな朝に相反し、深く熱く、とても濃密な愛の時間だった。
少し仮眠をとった後、二人はようやく目を覚ました。
シャワーを浴びた後、花梨が用意した朝食を食べ始める。
向かい合って座っているとなんだか照れくさい。
花梨が口数少なく静かに食べていると、柊がこんなことを言った。
「昨夜の花梨は最高だったよ」
平静を装っていた花梨だったが、その一言で頬がみるみる赤く染まる。
「課長! 恥ずかしいので、そういうことは言わないでください!」
その言葉に、柊は不思議そうな顔をした。
「どうして? 正直な気持ちを言っちゃダメなのか?」
「ダメってわけじゃないけど……でも、恥ずかしいです」
花梨がムスッとしていても、柊は気にする様子もなく穏やかに微笑んでいる。
そこで花梨は、昨夜からずっと気になっていたことを口にした。
「課長、ちょっと聞いてもいいですか?」
「何?」
「私たち、白馬で本当に……結ばれたんですか?」
その問いに、柊は一瞬ドキッとしながらも、微笑みを浮かべて答えた。
「ごめん! あれは嘘なんだ」
「やっぱり!」
予想が的中した花梨は、思わず声を上げる。
「本当にごめん!」
平謝りする柊を見ながら、花梨はさらに尋ねた。
「でも、どうしてあんな嘘を?」
「そう思わせておけば、君を他の男に取られる心配がないだろう?」
「え……?」
「俺はいずれこうなることを望んでいた。だから、順序なんてどうでもよかったんだ」
「…………」
花梨は、どう返していいのか分からない。しかし、柊が自分を望んでいたのだと知り、胸がじんわりと温かくなる。
それと同時に、クスクスと笑いが込み上げてきた。
「それにしても、そんな強引な手を使う人、今まで会ったことがありません」
「言っただろう? 俺は狙った獲物は逃さないって」
「それにしたって、強引すぎです」
「結果オーライなんだからいいじゃないか。それに、俺は本気で花梨とこういう関係になりたかったんだ」
熱を帯びた瞳で見つめられると、花梨の身体はたちまち動けなくなる。
そんな花梨に、柊が真剣に聞いた。
「俺とこうなるのは……嫌だったか?」
直球の質問を投げかけてくる『王子様』を見つめながら、花梨は降参したように答えた。
「嫌じゃないです。私も……こうなることを望んでいたのかもしれません」
その答えを聞いた柊は、心底ほっとしたような表情を浮かべた。
「花梨、こっちに来て」
「え?」
「今すぐ君を抱きしめたい」
「え、でも……まだ朝食が……」
「大丈夫だよ。ほんの少しだから……」
その言葉に、花梨はコクンと頷いて柊のそばへ歩み寄った。
すると、柊は花梨を膝の上に横座りさせてからギュッと抱きしめた。
「この先もずっと俺と一緒にいてくれるか?」
「はい……」
「うん、素直でよろしい! さすが、俺の優秀な部下だ!」
「ふふっ、課長ったら……」
花梨は思わず笑みをこぼした。
その笑顔を、柊は愛おしそうに見つめる。
彼の優しい眼差しには誠実さが滲み、まるで二人の幸せな未来を予感させるようだった。
秋の穏やかな日差しに包まれながら、二人は笑い声を上げながら、いつまでも抱き合っていた。
コメント
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花梨ちゃんと柊さま 素敵!素敵すぎる❣️ もうこれでハッピーエンドでいいんじゃ無いかしらと思うくらい素敵💓 あっ でもまだお仕事ありました 浜田様と菊田優子さん 二人にも素敵な結末がないとですね^_^ マリコ様 この後も楽しみに更新待ってますね
夜だけでなく、朝も熱くて甘々…💕💕 ラブラブの二人👩❤️👨に、読者までほんわか幸せ気分〜💓✨️ 元彼とか毒親とか、また変な邪魔が入ってきそうだけれど…🤔 そんな者をものともせずに、幸せに向かって進んで行ってね‼️🍀✨️
柊さん最高です✨✨ 花梨ちゃん、呼び方が課長になってるよ〜😆 プライベートでは柊さんにしましょう💓