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弘人が古びた自宅マンションへ帰ると恋人の留美が部屋に来ていた。


「遅かったじゃない。佐倉健吾どうだった?」


留美はニコニコしながら興味津々に聞いてきた。

留美は投資の事は全く知らないのになぜか健吾の事は知っていた。

聞けば健吾は時々女性誌等の『投資講座』や『イイ男の条件』等の特集でよく取り上げられているらしい。

だから留美は健吾の事を知っていたのだ。

今日は弘人が健吾のセミナーへ行くと知ってわざわざ感想を聞きに来たようだ。


質問を無視する弘人に少しいらだった様子の留美はもう一度弘人に聞いた。


「ねぇねぇ、佐倉健吾って本当にイケメンだった?」

「大した事なかったよ」

「え、そうなの? でも佐倉健吾って億トレーダーなんでしょう? タワマンに住んでてイケメンで独身! 彼女いるのかなぁ? いるとしたらきっと素敵な人なんだろうなぁ」


留美がうっとりした様子で言うのを聞き弘人は苛立っていた。


留美と付き合い始めたきっかけは留美からちょっかいを出してきたからだ。

留美は理紗子の2年後輩だったので以前から知っていた。理紗子の妹分のような存在だったので特に女として意識した事はない。


弘人が理紗子と交際している事は会社では秘密にしていたのになぜか留美は気づいていた。

そしてその事で話しがあると呼び出される。

二人きりで初めて話した時、留美はとても奥ゆかしくて清楚な雰囲気だった。

その時弘人は理紗子との交際が二年目に入り少しマンネリ化していた。

だから留美に誘われた時正直弘人はときめいてしまった。


二人で何度か会ううちに留美は弘人をホテルへ誘って来た。

留美は清楚な雰囲気とは正反対のとても刺激的なセックスをする。男の本能をかき乱すような留美の奔放なセックスに弘人はすっかりハマってしまった。

そしてとうとう理紗子と別れる決意をする。


理紗子に不満があった訳ではない。留美と出会う前までは理紗子とは上手くいっていたしこのまま付き合い続ければいずれ結婚してもいいと思っていた。

しかし仕事の営業成績が伸び悩み投資も上手くいかない現状に少しイライラしていた弘人はつい留美の身体に溺れてしまった。

ただそれだけなのだ。


しかしそんな留美の化けの皮が剝がれたのは付き合い始めてわずか数ヶ月後の事だった。

どうあがいても勝てない理紗子から弘人を奪った留美はそれだけですっかり満足し、今まで弘人に尽くしてきた態度は姿を消し急にふてぶてしい女へと変わっていった。

セックスにおいても今まで弘人に精一杯奉仕していた姿はどこへやら、今はただのまぐろ女と化している。


留美はただ理紗子から弘人を奪いたかっただけで弘人の事を愛していた訳ではなかったのだ。

完璧に仕事をこなし上司からも同僚からも頼りにされ好感を持たれている理紗子の事をただ妬んでいただけなのだ。

だから理紗子の大切なものを奪えばそれで満足なのだ。


そして今はその理紗子も会社にはいない。

たまに理紗子が雑誌に載っているのを悔しそうに見ている留美だが理紗子はもうとっくに手の届かない場所にいる。

そのストレスをまるで弘人にぶつけるように弘人に対しての態度が日に日に酷いものになっていた。


その一つがおねだりだ。

弘人は給料やボーナスは全て投資に回したいと思っているのに留美がしょっちゅうおねだりしてくるので経済状況は火の車だ。

理紗子と付き合っていた頃結婚資金として少しずつ貯めていた貯金もどんどん減る一方だった。

だから弘人は今かなり焦っている。この辺りで投資での一発逆転を狙いたかった。


億トレーダーになったら留美の事は切るつもりでいた。つまり留美はそれまでの繋ぎの女なのだ。


その時弘人は先ほどの理紗子の姿を思い返していた。

理紗子は生き生きと輝いてとても美しかった。あの頃よりも歳を経ているはずなのに若々しく見えた。

きめ細やかな肌、柔らかな髪、女らしい身体つきも男をそそるには充分過ぎるほどの魅力に溢れていた。

弘人は今の理紗子なら何度でも抱ける自信があった。もしかしたらあの頃よりも情熱的に抱けるだろう。


その時ふと目の前にいる留美を見つめた。留美はソファーに寝転がりスマホをいじっている。


留美は出会った頃よりもかなり体型が崩れていた。

理紗子に隠れて密会していた頃は留美もきちんとメイクをして女子力の高い色気のある服を身に着け会う度に弘人を興奮させていた。

しかし今目の前にいる留美はジーンズにヨレたTシャツ姿のただのオバさんだ。理紗子よりも若いはずなのにかなり劣化している。


(俺は間違えた選択をしてしまったのか?)


弘人は理紗子と付き合っていた頃の事を思い出す。

理紗子が作ってくれた数々の美味しい家庭料理、弘人の体調に合わせて作ってくれた料理には深い愛情がこもっていた。

弘人の家に遊びに来ると散らかった部屋に文句を言いながらもいつも綺麗に片付けてくれた。弘人が苦手なアイロンがけも土日にまとめて済ませてくれた。


その時弘人は急に思い出した。別れ際に理紗子に言った酷い言葉を。


『理紗子とは…さ、身体の相性がね…….やっぱりそういうのって長く付き合っていく上では大事な事だと思うから…….』


弘人はがっくりと首をうなだれる。

あのままもし理紗子と結婚していたらそれなりに幸せな家庭が築けていただろう。

そして今頃は子供もいたかもしれない。小さな赤ん坊を連れて三人でスーパーへ行き楽しく買い物をしていたかもしれない。

弘人は思いつめた表情のまま部屋の中を見回した。


洗濯物が散乱した部屋、ペットボトルやカップ麺のゴミが無造作に置かれたままのキッチン、電化製品や棚の上に積もった埃、いつ掃除機をかけたかわからない床、そしてゴミ箱から溢れるゴミ、そして何もしない役立たずの女。


「今日は帰ってくれ」

「え? なんでよ! さっき来たばかりなのに」

「いいから帰ってくれ! しばらく来ないでくれ!」

「なんで急にそんな事を言うの? せっかく来てあげたのに」

「今日は疲れているんだ」

「じゃあ、車で送ってよ」

「車は売った」

「えっ? 嘘でしょう? 売っちゃったの? まだローンが残っているのに?」

「ああ」

「ばかじゃないの? 新車買ってすぐ売るなんて」

「投資の資金が必要なんだよ。お前に金がかかり過ぎるせいでスッカラカンなんだ。俺はしばらく投資に集中したいんだ。だからもう来ないでくれないか」

「なによっ! 億トレになるなるって言って全然ならないじゃない! いつまで待たせる気? これじゃまるで詐欺だわ」

「………….」

「理紗子先輩の彼氏だからちゃんとしている人だと思ってリスク承知で奪ったのに全然駄目じゃない! おまけに理紗子先輩はあなたと別れた途端有名人になっちゃうし。ほんとばっかみたい」


留美は吐き捨てるように言うとバッグを持って玄関までドスドスと歩いて行った。

そして帰り際叩きつけるようにドアを閉めた。


弘人は苦しそうな表情でただその場に立ち尽くしていた。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

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ユーザー

らびぽろちゃん、ノルノルさん、 私も理紗子&健吾の見守り隊に参加 希望しまーす🙋‍♀️❤️ 弘人&留美....しょうもない二人だけど-、めちゃくちゃお似合いだと思います😁 間違っても 理紗子&健吾の邪魔をしないようにお願いいたします🙏

ユーザー

らびぽろさん、理沙子&健吾の見守り隊に参加しまーす♪ そしてらびぽろさんの意見に激しく同感です‼️ もう同じ穴のムジナとしか言いようのないこの2人😩💧 妬んで弘人の彼女の座を横取りした留美と、刺激を求めて留美に手を出して理沙ちゃんを捨てた弘人😡💢 2人が離れたところで理沙ちゃんは戻らないし、もうお好きなようにどうぞ🤲

ユーザー

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