テラーノベル
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カエンボクは不機嫌そうにこちらを見た後、出来上がった肉を乗せた皿をドン!と審査員の目の前の机に乗せた。
「さぁ、審査員ども! 俺の至高の飛竜ステーキを味わうがいい!」
肉の外側は炭になっており、香辛料が大量にまぶされていた。特等席に座っている審査員たちがナイフとフォークでそれを口に運ぶ。
「ふむ、香辛料のおかげで、飛竜特有の獣くささは消えている」
「力強い味わいだな。でも噛み切るのに顎が疲れるわい」
「香辛料がきついな……舌が痺れてくる」
審査員たちの渋い評価に、カエンボクは眉間にシワを寄せた。
「はっ、馬鹿なことを! 飛竜の肉は分厚くて硬いものだ! 元々噛み応えを楽しむ食材だろうが!」
負け惜しみのように吠えるカエンボクをよそに、俺は堂々と前に出た。
「お待たせしました。これが俺たちの料理っす」
俺が皿を差し出すと、審査員たちは目を見開いた。
「な、なんだこの美しい肉の色は…!?」
「上に乗っているのはソースか? 食欲をそそる甘辛い香りがするぞ!?」
「ふふ、飛竜のローストドラゴン、特製オニオン風ソースがけっす。どうぞ冷めないうちに」
審査員たちがフォークで肉を口に運んだその瞬間。
「あ、あぁぁぁぁぁぁっ……!?」
審査員たちが突然フォークを落として天を仰いだのだ。
「なっ、なんだこの柔らかさは!? 肉が舌の上でトロトロに溶けていく……!」
「噛むたびに肉汁がソースと絡み合って……あぁっ! 美味いっ! 美味すぎる!」
俺はその感想を満足げに聞いていた。
「ふぉぉぉぉぉぉっ! 体の中の悪いものが全て抜け落ちてイク……っ!」
「あぁ……っ! 体が、体が内側から熱い……っ!」
「はぁっ、はぁっ……な、なんなんだこの快感は……ッ」
(あ……やべ)
気づいた時にはもう遅かった。
審査員のおじさんたちは顔を真っ赤に染め、熱い吐息を漏らしていた。
暑さに耐えきれなかったのだろうか。たまらず首元のスカーフやシャツのボタンをパツン、パツンと弾けさせ始めたのだ。
(いやいやいやいや、おっさんたちの赤ら顔とか露出とか、マジで需要ないんでやめてもらえないすか!?)
俺は真顔でドン引きしながら一歩後ずさった。先程までよだれを垂らしそうな表情をしていたティアレもポカンと口を開けている。
「ば、馬鹿な!? 飛竜の肉がそんなに柔らかくなるわけがない!」
カエンボクが血走った目で叫んだ。
「インチキだ! 貴様ら、肉を取り替えたか? それとも幻覚を見せる薬でも盛ったのか? 俺が食べてその嘘を暴いてやる!」
カエンボクは俺の皿からローストドラゴンを素手で掴み、やけくそのように口の中に放り込んだ。
「ふんっ! こんなお湯に浮かべただけの肉が美味いわけが……っ!? んほぉぉぉっ!!??」
カエンボクの動きが完全に停止した。極限まで柔らかくなった肉の旨み。そして何よりサフランとティアレの凄技と、俺の家事スキルによる超絶浄化パワー。それがカエンボクの体内に一気に流れ込んだのだ。
「んっ、おぉっ……!? 全身に快感が走っ、んほぉぉぉぉぉっ!?」
絶頂。
そう表現するしかなかった。
爆発音とともに、料理人の服から下着まで、全ての衣服が木っ端微塵に弾け飛んだ。
「あ、あぁ……」
広場の中央に一糸まとわぬ全裸の男がポーズを決めたままビクビクと痙攣している。
「きゃぁっ! 変態!」
サフランは顔を真っ赤にして、両手でしっかりと自分の顔を覆った。
「……ふーん。ちっさ」
ティアレは冷ややかな、まるでゴミでも見るかのような目で全裸の男を無表情で観察している。
(あわわわわわわわわ!? 公衆の面前で放送事故すぎるっすよ! そしてティアレ、何冷静に見てるんすか!)
「ティアレ、見ちゃダメだ!」
俺は内心パニックになりながら、慌ててティアレの目を手で覆い隠した。
「き、貴様らぁぁ! 俺に何をしたぁぁぁぁっ!?」
股間を両手で隠しながら、顔を真っ赤にして喚き散らすカエンボク。そこへ広場の警備をしていた憲兵団が物凄い勢いで走ってきた。
「そこまでだ! 貴様、公然猥褻とは何事だ! 連行しろ!」
「はぁ!? 違うわ! これはあいつらの罠で……離せぇぇっ!」
屈強な憲兵たちに取り押さえられ、全裸のまま引きずられていくカエンボク。その惨状を見て特等席にいた悪徳貴族のマホガニーが顔面を蒼白にして立ち上がった。
「わ、私は関係ないぞ! あんな変態、うちの専属料理人ではないわ!」
だが、憲兵団をまとめていたリーダーの男がマホガニーのところに歩いてきた。
「マホガニー卿。貴方にも同行願おうか。専属の料理人の公然猥褻だけではない。先日の国庫からの横領疑惑、ならびにエルムの料理人を飛竜討伐の際に嵌めて大怪我をさせた件など、数々の不法行為の証拠が上がっている」
「は、はぁーーー!? ふざけんな。そんな証拠でもあるのか!」
するとリーダーの男が大量の書類を取り出して突きつけた。
「証拠はたんまりある。抵抗はするな」
悪徳貴族とカエンボクが一網打尽にされ、広場は静寂に包まれた。
「えー、コホン……」
進行役が気を取り直すように咳払いをした。
「満場一致で、この料理対決……エルム卿の陣営の勝利とする!!」
「ワアアアアアアァァァァァッ!!!」
広場に今日一番の歓声が上がった。
「やったぁ! 勝ったよ、ユウト! これで奴隷にならなくて済むね!」
「ユウトの言うことを聞いたら、本当に勝てた……」
サフランとティアレが、俺の両腕に抱きついてくる。二人の柔らかい感触が両腕に押し付けられ、俺は少しだけ顔を熱くした。
「まぁ、当然の結果っすよ」
俺はいつものポーカーフェイスを装いながら返した。
(これでやっと明日からのんびりできるっすかね)
俺は少しだけほっとしながら、空になった皿を見つめた。
#異世界ファンタジー
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コメント
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うわっ第19話読み終わったよ…!料理対決、まさかの勝利おめでとう!✨ 審査員のおっさんたちがトロトロになってくシーン、笑いと衝撃が混ざってやばかった(笑)「おっさんの需要はないっすよ」って心の声、めっちゃわかる…。カエンボクの全裸放送事故も含めて、スッキリ爽快な展開だったね! 悪徳貴族もまとめて退場って、まさかの伏線回収!次話ものんびりできるといいなあ〜🌙