「卯川、着いたぞ」
耳元で急に声が聞こえ、
驚いて顔を上げると目の前には
1つのベンチがあった。
「大丈夫か?顔色悪いぞ」
「全然大丈夫!!」
私は慌てて笑う。
「….とりあえず座って話そう」
そう言って私たちはベンチに座った。
「なぁ、俺の名前を聞いて驚かないのか?」
「なんで?」
「……俺の父さんはあのオバケを捕まえる発明品を作った人だぞ?」
確かにそうだ。
なぜ気づかなかったのだろうか。
あの発明者の名前は鳥井博士。
そして蒼空の苗字は鳥井。
でも、ただの偶然だと思っていた。
「俺のこと憎んでいいよ」
「なんで?だって蒼空のお父さんがやったことで蒼空は悪くないじゃん」
「は…」
蒼空が私の方を見ながら目を丸くしている。
「だからさ私に蒼空の過去話して欲しいな〜なんて──」
「お前に俺の苦痛が分かるはずないだろ!!」
慰めたつもりが間違ったことを
言ってしまったかもしれない。
それでも私は蒼空の過去が知りたい。
どことなく私と似ている気がするからだ。
「分かるよ。だって私と似てる気がするし」
そういうと蒼空はとても驚いた顔をしていた。
「私にはねお父さんが居ないの。でも周りにはお父さんが居て私には居なくて不公平だなってずっと思ってた。」
「あとごめんね。」
「なんで謝────」
「私は人見知りで、インドア派で全然明るい人じゃないよ」
「ただ、” あの時 ” みたいになりたくなかったから….」
「知ってる。」
「へ…?」
「全然明るくないって知ってる。なんとなくそうだと思ってた」
「え…..」
「先に話させてごめん。俺もちゃんと話すから」
「分かった…」
「まず最初に俺の母さんは俺のせいで亡くなったんだ」
「え…?」
「俺が小さい頃、物陰に隠れてたオバケを見つけ、母さんに見せた。」
「そしたら母さんはオバケを気に入っていつもオバケの傍に居た」
「オバケは追いかけっこが好きでいつも母さんと追いかけっこをしてたんだでも、オバケが道路に出た時、車が来たんだ」
「それで母さんは青ざめた顔で助けようとしたけどオバケの代わりに轢かれて….」
「父さんはその日から毎日俺に『母さんはお前のせいで亡くなった』とか『母さんはお前がオバケを拾ってきたからあんな目に遭ったんだ』とか言われた」
「そうなんだ….」
「でも私は悪いのはきっと蒼空じゃないと思うよ。だって─」
慰めようと思ったがこれ以上何を言ったら
正解なのか分からなくて言葉が詰まる。
でも何故ここにいるのだろうか。
そういえば看板の文字は
何故日本語じゃないのか。
沢山の疑問が頭を駆け巡る。
「そういえばここに来た時の看板見たよね?」
心を見透かされたようだ。
「うん。でもあれ日本語じゃなかったけど…」
「俺が作ったんだ。」
「え?」
「ミユル語。もし密猟の人間が来た時用に」
「へ〜、すごいね!!」
「教えよっか?ミユル語。」
「なんで?」
「こいつらと少し会話できるようになるぞ」
出来るならすごいファンタジーっぽい。
そう思った私は元気よく
「教えて!」
と言った。
「じゃあ看板のとこ行こう」
「うん!」