テラーノベル
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圭が異動してきた事もあり、彼の自己紹介から会議が始まった。
現在開発中のスマートフォン向けの楽曲制作アプリ『スマートミュージック』の進捗状況について、意見が交わされている。
圭も配られた資料に目を通すが、DTMに関しては、知らない事ばかり。
彼にとって、DTMは異世界と同じようなものだ。
そもそも、圭は、音楽鑑賞は好きだが、楽器の演奏は全くした事がない。
双子の弟、怜は、吹奏楽部強豪高校、藤森学園高校に入学してサックスを始め、さらに楽器好きが昂じて、管楽器リペアラー(管楽器修理調整師)になった。
「そこで、だ。動画配信サイトで有名な女性DTMer、Hanaさんにメールでコンタクトを取り、『スマートミュージック』を使って作曲してもらい、使用感を聞きたいと思っているんだが、どうだろう?」
柏木の意見に、会議室は、歓喜とも取れる静かなどよめきに包まれた。
DTMerとは、DTMで楽曲制作する人の事を指すらしい。
(Hanaって人…………そんなに有名な人なのか……? 俺には分からない世界だな……)
圭が考えを巡らせている間にも会議は進み、手元の資料に目を落とす事しかできない。
柏木の提案に、部署の社員たちは賛成したようだった。
「葉山」
「はっ…………はい」
部長の呼び掛けで、圭が我に返る。
「君は、恐らくDTMに関して分からない事も多いだろう。葉山にはDTMを知る事を踏まえて、まずはHanaさんが楽曲投稿している動画サイトで、彼女の曲を聴いてみてくれ。それと、葉山に頼みたいのは──」
柏木が、両手を組みながら、前のめりな姿勢で圭に眼差しを向ける。
「Hanaさんに連絡を取り、楽曲制作アプリ『スマートミュージック』を実際に使って作曲してもらい、使用感を聞きたい事を依頼して欲しい。いいか?」
圭にとって、異動初日から重要な仕事を頼まれ、怯んでしまう。
だが、そうも言っていられない。
「…………分かりました」
彼が小声で返答すると、柏木が立ち上がる。
「本日の会議は、これで終了します。お疲れさまでした。各自、通常業務に戻るように」
上司のひと言で、社員が一斉に立ち上がり、それぞれの仕事を始める。
異動日初日、圭は、その後も何とか仕事を熟し、心身ともに疲労困憊で会社を後にした。
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