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微かに明るさを纏ったベッドルームで、優子はゆっくりと瞼を開く。
頭を僅かに上げ、ヘッドレストのデジタル時計に目を向けると、既に八時を回っている。
冷んやりとしたシーツの感触で、彼女は全裸のままだった事に気付き、慌てて跳ね起きた。
(は……裸……!?)
目を見開きながらも、優子は昨夜の記憶を辿る。
バスルームでも、ベッドルームでも淫らな事をされ、最後はバルコニーへ繋がるガラス戸の前で、立ったまま背後から攻め立てられた。
忘我しながら喘ぎ、色を滲ませた声を上げ、快楽の沼にズブズブと嵌まっていたように思う。
(あんな激しいセックス……豪でさえ……しなかったよ……)
かつての恋人と拓人の情交を比較して、顔が熱くなっていると、男がベッドルームに入ってきた。
「起きたようだな」
拓人が、唇の端に意味深な笑みを滲ませると、寝起きの優子の隣に腰を下ろす。
「昨夜は…………相当乱れまくってたな」
男は、面白がっているのか、ククッと小さく吹き出した後、真面目な表情を浮かべて女を見据えた。
「あんた、実質、ホームレスみたいなモンだよな?」
「まぁ……そうだけど。っていうか、ホームレスって例え、酷くない!?」
優子は、拓人を睨みながら、頭をクシャクシャと掻き上げると、スレンダーな身体を抱き寄せられた。
「そんな事言うなって。俺が、あんたをこの部屋に住まわせてやる」
「…………ホントに?」
優子の表情が、微かに明るくなる。
何しろ、これから先、どうしようか途方に暮れていたようなものだったから。
「ただし、条件がある」
「条件……?」
訝しげな優子に対し、男は、足を組みながら不気味に笑い、鼻先まで掛かる前髪を掻き上げた。
「今日の正午。西新宿の電鉄系ホテルで、あんたの身体を男に売ってきてもらう」
ありえない条件を提示され、彼女は瞳を丸くしつつ、愕然とした。