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#普通
野々さくら
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ありあ
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美沙は着信に応じ、スマホを耳元へ運んだ。
「もしもし?」
「あ、やっと繋がった」
聞こえてきた哲哉の声に、美沙はわずかに眉をひそめる。
「あの、どうかされたんですか?」
「それはこっちのセリフだよ」
「え?それはどう言う──」
美沙が聞き返そうとしたところで、哲哉はそれを遮るように問いかけた。
「君たち無事か?今どこに居るんだ?」
「え?どう言う意味ですか?」
ただならぬ様子を感じ取り、美沙の声にも緊張が滲む。
すると哲哉は、ようやく事情を説明し始めた。
「実はね、僕の知り合いに君の事務所まで
様子を見に行ってもらってたんだよ」
「え?」
「そしたら彼の話では、社長がゴルフクラブを
振り回しながら暴れていて、しまいには君らが
目の前から消えたと社長が言ってるって、そう連絡もらったんだ」
「あ、それは・・・」
美沙は言葉に詰まった。
哲哉の話を聞き、彼がなぜこれほど心配していたのかをようやく理解する。
「僕もその話聞いて、ずっと君に連絡してたんだけど
全然連絡つかなくてね。今やっと繋がったんだ」
そして、少し間を置いてから、安否を確かめるように尋ねた。
「でも普通に通話出来てるって事は無事って事だね?」
「は、はい・・・無事です。
高校生の子達もみんな無事です・・・」
その返事を聞いた瞬間、電話の向こうから大きく息を吐く音が聞こえた。
「はぁ〜・・・よかった。心配したよ〜ホント」
「申し訳ありません」
美沙は申し訳なさそうに頭を下げる。
「でも何があったの?」
その問いに、美沙は部室にいる信愛たちへ視線を向けた。
何から説明すればいいのか。
起きた出来事は現実味がなく、あまりにも常識からかけ離れ過ぎていたからだ。
「ちょっと口で説明するのは難しいので
すぐにそちらに向かわせてもらいます」
「ああ、分かった・・・」
通話を終えると、美沙はゆっくりとスマホを耳元から離した。
◇ ◇ ◇
通話を終えた美沙は、哲哉と交わした会話の内容を信愛たちに説明した。
「かなり心配かけちゃってたみたい」
「まあ、そりゃそうですよね」
信愛が苦笑する。
突然連絡が取れなくなったうえ、事務所では社長がゴルフクラブを振り回して暴れていたのだ。
事情を知らなければ、最悪の事態を想像してもおかしくない。
「なら吉次さんはこのままZappに?」
朝陽の問いに、美沙は頷いた。
「ええ、心配かけたからね。で、お願いなんだけど」
美沙は信愛たちへ視線を向ける。
「白縫さんたちも一緒に来てくれない?
私だけじゃ、その・・・死後の世界とか
魂に刻まれた記憶とか、うまく説明する自信ないから」
美沙は困ったように笑った。
確かに、霊に関する知識が乏しい人間が説明するには、あまりにも現実離れした出来事ばかりだ。
信愛は迷うことなく頷いた。
「はい、そのつもりです。それに、千秋さんとも
ちゃんと話さないといけませんから・・・」
「だね・・・」
さくらも静かに同意する。
朝陽は少し考え込んだあと、茜へ視線を向けた。
「茜先輩の予想通りなら、かなりの
怨念に満ちてるでしょうからね」
TAMAYAに自分の歌を奪われ、その事実を闇に葬られたのだとすれば、千秋が抱えている感情は、決して軽いものではないだろう。
むしろ重いと言える。
「なら私たちは行くね」
千歳がそう告げると、信愛は彼女へ振り返った。
「ありがとうね千歳」
そして、その隣にいる佳苗にも笑顔を向ける。
「それから佳苗もありがとうね」
「・・・」
しかし、佳苗から返事はなかった。
少女は俯いたまま、じっと床を見つめている。
「佳苗?」
その様子に気づいた信愛の表情から、ゆっくりと笑みが消えていった。
佳苗は何も言わない。
ただ黙ったまま、俯いていた。
コメント
1件
佳苗の沈黙、すごく気になりますね……。ここまでの展開で、彼女が何か抱えているのは分かってましたけど、無言で俯くだけって状況が不穏すぎます。それに、美沙さんが「死後の世界や魂に刻まれた記憶」を説明しなきゃいけない場面、どう語られるのか続きが楽しみです。設定の重なり方が丁寧で、引き込まれました。