テラーノベル
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「佳苗ちゃん?どうかしたの?」
俯いたままの佳苗を気遣い、美月が優しく声をかける。
しばらく黙っていた佳苗は、ぽつりと呟いた。
「みんなを助けたのは
私じゃなくて千歳だから・・・」
「佳苗・・・」
信愛が心配そうに名前を呼ぶ。
「私・・何も出来なかったから・・・
千歳が居なかったら私・・みんなを
私たちの世界に閉じ込めてたから・・・」
自分を責めるようなその言葉に、信愛はすぐさま首を横に振った。
「そんな事ないよ」
そして佳苗の目を見つめ、優しく言葉を続ける。
「佳苗が私たちを避難させて
くれたから無事に済んだんだよ?」
「そうだよ佳苗」
さくらも励ますように声をかける。
それでも佳苗の表情は晴れなかった。
「でもそれは・・・」
「結果論って言いたいの?」
千歳が問いかける。
「けっかろん?」
意味が分からないらしく、佳苗がきょとんとする。
「結果的にみんな戻って来れたけど
もしかしたらそうなってなかったかもしれない
そう言いたいんでしょ?」
図星だったのだろう。
千歳の問いかけに、佳苗は黙って俯いた。
「佳苗・・・」
心配そうに信愛が名前を呼ぶ。
しかし、千歳はそんな佳苗を責めるでもなく、あっさりと言った。
「いいじゃん、結果論でも」
「え?」
佳苗が顔を上げる。
「だってみんなこうして無事に
戻って来れた。それで充分しょ?」
「千歳・・・」
佳苗の目に、じわりと涙が浮かぶ。
「ぐすっ・・千歳・・・」
堪えきれなくなった佳苗は、そのまま千歳の胸へ飛び込んだ。
「はいはい、泣かないの」
千歳は少し困ったように笑いながら、佳苗の頭を優しく撫でる。
その様子を見ていたさくらが、微笑ましそうに口元を緩めた。
「なんか千歳さんがお姉ちゃんで、佳苗が妹みたい」
「ふふふ、確かに姉妹みたいだよね」
信愛も思わず笑みをこぼす。
その言葉を聞いた佳苗は、千歳の胸に顔を埋めたまましばらく黙っていた。
やがて、何かを思いついたように顔を上げる。
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
そして満面の笑みを浮かべると、もう一度ぎゅっと千歳に抱きついた。
「お姉ちゃ〜ん♥」
「あー、もうほら!みんなが余計な事言うから」
千歳は呆れたように言いながらも、本気で嫌がっている様子はない。
「あはは、ごめん」
信愛が楽しそうに笑う。
「まあ、いいけど」
そう言って、千歳は再び佳苗の頭を撫でた。
ひとしきり場の空気が和んだところで、千歳は信愛へ視線を向ける。
「それより信愛は早くその千秋って人の所に
行ってあげなよ。助けるんでしょ?その人の事」
「うん、そのつもり」
「信愛だったら絶対出来るから」
「千歳・・・」
「助けてあげてよ。信愛が私にしてくれたみたいに
多分その千秋さんも信愛の助けを待ってる」
千歳の真っ直ぐな言葉に、信愛は力強く頷いた。
「うん・・・わかった」
そして、決意を込めるように続ける。
「絶対助けてくるから!」
それを聞いた美沙が、すぐに声を上げた。
「なら私の車で向かいましょう!」
信愛たちは頷き合う。
こうして彼女たちは、未だ深い怨念に囚われている千秋を救うため、再び動き始めた。
しかし──。
「あ〜!しまったそうだった〜!」
病室を後にし、そのままZeppへ向かおうとしていた時、美沙が突然焦ったように声を上げる。
その大声に、信愛たちが一斉に振り返った。
「どうかしました?」
信愛が不思議そうに尋ねると、美沙は気まずそうに呟いた。
「私の車──」
そこで一度言葉を切り、思い出したように顔をしかめる。
「事務所に停めたままだ・・・」
「事務所?」
「ほら、私たち死後の世界から
そのまま病院に来たでしょ?」
「あ・・・そっか!」
朝陽もようやく事情を理解したらしく声を上げる。
「だから、今私の車
事務所の駐車場に停めたままだった」
「なら・・・どうします?」
信愛が尋ねると、美沙は困ったように腕を組んだ。
「タクシーかなぁ〜・・・でも
ここからZappまでかなり距離あるのよね」
そう言いながら、美沙はしかめっ面で財布の中身を確認する。
「あ、なら私たちもタクシー代を──」
信愛が申し出ようとするが、美沙はすぐに首を横に振った。
「いやいや、それはダメ」
「え?」
「高校生に出させる訳にはいかないから!」
きっぱりと言い切る美沙。
その様子を見ていた美月が、小さくため息をついた。
「仕方ないわね・・・ほら」
そう言って、美月は財布から5千円札を取り出すと、美沙へ差し出した。
「み、美月さん!?」
「見てらんないからね」
「め、面目ないです・・・」
申し訳なさそうに肩を落とす美沙に、美月は苦笑する。
「まあ、生徒の事頼むわね?
私は八乙女くんの怪我の件で
また学校に呼ばれちゃったから」
「は、はい!もちろんです!
後日ちゃんとお返ししますから!」
美沙は5千円札を大事そうに受け取り、力強く頷いた。
それから病室を後にした信愛、さくら、朝陽、美沙の4名は、タクシーに乗り込み、Zappへ向かうことになった。
コメント
1件
うわあ、第200話おめでとうございます!ここまで積み重ねてきた物語の重みが、このエピソードの空気感にじんわり滲んでますね。 佳苗が「みんなを助けたのは千歳」と自己否定するシーン、胸がぎゅっとなりました。でも千歳の「結果論でもいいじゃん」という言葉がとても沁みる。結果だけじゃなく、そこに至るまでの気持ちも含めて認めてくれる感じがして。最後に佳苗が「お姉ちゃん」って呼ぶ流れ、自然で温かかったです。 美沙の車问题のオチもほっこりしました。美月先生の五千円、絶対忘れないエピソードになりそう。次、Zeppでの展開が楽しみです!