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夜の帳が静かに落ち、世界が柔らかな闇に包まれていく。
空には雲一つなく、星がまるで宝石のように瞬いていた。
ふと何かを感じて下を見てみると……チミーが手を振っている。
ナイトメアはゆっくりと草の上に腰を下ろす。
身体はまだ少し痛んでいたけれど、心は……不思議と落ち着いていた。
「……来てくれて、ありがとう」
彼女は遠くで瞬く星々を見上げながら、そう話しかけてくる。
この星々の奥に何を見ているのだろう?
「今日はね、星がきれいだって思ったから……誰かと一緒に見たくなったんだ」
チミーの声は、星明かりみたいに柔らかくて優しい。
しばらく二人は黙ったまま空を見上げていた。
風の音すら眠ったような夜。遠くの木々が、ほんの少しだけざわめいている。
星を見ていると心の奥に閉じ込めていた疑問が浮かんできた。、
「……本当の優しさって、なんだと思う?」
思わずぽつりとこぼした。
それは唐突な問いだった。でもチミーは驚かず、少し考えてから答えた。
「そうだなぁ……」
「…………」
「ナイトメアは?」
ナイトメアは少しだけ、星を見つめる目を細めた。
「昔は、笑顔でいること、誰も悲しませないことが“優しさ”だって思ってた。
自分が我慢すれば、周りは笑ってくれる。それでいいって思ってたんだ。
でも今は……わからなくなった。今は優しさを誰かに与えられるほど心に余裕がないんだ。」
声が小さく揺れる。吐く息が、夜の空気に溶けていく。
チミーは黙って聞いていた。
そして、そっと言葉を重ねる。
「私の優しさは、たった今決まったよ。」
僕は星に向けていた眼差しを彼女へ向ける。
彼女も僕に視線を向ける。
「私にとっての優しさは、誰か人知れず優しくあろうとする人の傍にいて、寄り添ってあげること……かな!!」
そんなことを言う彼女は満天の星よりも輝いていた。
僕は目を伏せる。
星の光が、まるでそれを慰めるように輪郭を淡く照らす。
「……キミって、ずるいよ」
「え?」
「そんな風に言われたら、僕……泣きたくなる」
「泣いてもいいよ?私はずっと傍にいるから。」
言葉はやさしくて、強かった。
その一言で、僕は少しだけ目を細めて、小さな声で笑った。
「……今日は、泣かない。でも、ありがとう」
風が少し吹いた。
その音が、まるで空が二人の会話を聞いていたかのように、やさしく流れていく。
沈黙がまた訪れる。
でも、それは居心地の良い静けさだった。
──この時間が、続けばいい。
ナイトメアはふと、そう思った。
けれど同時に、心の奥底で、どこかに小さな不安が灯る。
この穏やかな時間が……長くは続かないことを、どこかで理解している自分がいた。
空を見上げる。
この広い世界に本当の優しさを知っている人がいるとするなら、それはきっと温かくて静かに僕らを照らす、星のような人なんだろうなと思う。