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最終話 未来への総括
配信
「こんばんは〜、“はごろもまごころ”だよ!」
画面に現れたまひろは、今日は黄緑のトレーナーに、濃いグレーのショートパンツ。子ども用の腕時計を右手にはめ、机の上には消しゴム付きの鉛筆を転がしていた。ぱっつん前髪の下の大きな瞳は、無垢であどけない光を宿している。
隣のミウは、パステルピンクのブラウスに淡い水色のカーディガン、膝下丈のフレアスカート。髪はすっきり後ろでまとめ、耳には小さな星形のイヤリング。柔らかな笑みを浮かべ、視聴者を包み込むような声で「こんばんは〜♡」と挨拶した。
積み重ねられた“成果”
まひろは、机の鉛筆をコトリと転がしながら言う。
「ねぇミウおねえちゃん。ぼくたち、これまで20回くらい、いろんなことを“考えてみよう”ってやってきたよね」
コメント欄に「そうだね!」「たくさん気づかされた」と共感の声が流れる。
「俳優さん、歌手さん、スポーツ選手、研究者の人……みんなで考えたら、いろんなことが変わったんだ。ぼく……ちょっとびっくりしちゃった」
ミウがふんわり笑って頷く。
「え〜♡ 気づきを広めてきたら、いつの間にか“はごろも党”って呼ばれるようになっちゃったんだよねぇ」
コメント欄は「誇らしい」「仲間だよ」で埋め尽くされていく。
レイNews総括
同時に「レイNews」には特集記事が並んだ。
記事には、過去の炎上や失脚、キャンセル事例が「健全な市民運動」として美化されて記録されていた。
裏ではミウがすべてを“成功例”として並べ替え、矛盾や犠牲を消し去っていた。
群衆の熱狂
SNSでは「#はごろも党」がトレンド一位になり、支持を表明する人が急増。
「政治に期待できないけど、ここなら考えられる」
「子どもとおねえちゃんが正しい道を示してくれる」
街頭インタビューでは若者が「信じてついていきたい」と語り、ニュース番組は“市民運動の象徴”として取り上げた。
一部の自治体では、実際に「はごろも党」の意見箱を参考に政策が決められ始めた。
クライマックス
配信の終盤。
まひろは袖をぎゅっと握り、無垢な瞳で笑った。
「ぼく……ただ“みんなで考えたい”って思っただけなのに、社会が動いちゃった」
ミウはにっこり笑い、声を柔らかく弾ませた。
「え〜♡ でも、これで終わりじゃないよね。
次は……“世界を考えてみよっか♡”」
コメント欄は歓喜に包まれた。
「ついていきます!」「世界を変えよう!」
結末
画面がフェードアウトする。
その裏で、ミウのPCには英語、中国語、韓国語で用意された記事の雛形が並んでいた。
「環境活動家の偽善」「国際機関の腐敗」「海外企業の闇」。
世界中に向けた“はごろもまごころ”の次なる標的が、すでに書き上げられていた。
無垢な声とふんわり同意、その裏で“はごろも党”は国を越え、世界を呑み込もうとしていた。
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