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ずっと無口のままの侑に、瑠衣は様子を伺うように呼び掛けた。
「せんせ……?」
「あ……ああ、すまない。風呂から出たら少し休むか? 全然寝てないんだろ? それとも何か食うか? ほとんど食ってないんだろ?」
「…………眠くなってきちゃったから寝たい」
「ならば、ベッドで休もう」
バスルームから出ると部屋着に着替え、侑は瑠衣の髪をドライヤーで乾かした後、侑はタオルドライで大雑把に髪を乾かす。
寝室へ向かい、二人でベッドに横になると、瑠衣が身体を擦り寄せてきた。
(俺に……甘えたかったのか……)
侑は瑠衣を包み込むように抱きしめると、すぐに寝息を立て始めた彼女。
赤ちゃんを寝かしつけるように、ベージュブラウンの髪をゆっくりと撫で続ける侑。
瑠衣が深い眠りに入った所を見計らい、侑は静かにベッドから抜け出した。
リビングへ向かった侑はソファーに腰を下ろし、警察に電話した。
担当の捜査員に繋いでもらい、瑠衣が自宅近くのホール前で見つかった事を報告する。
『そうですか。無事に見つかったようで何よりです。瑠衣さんの体調はどんな感じですか?』
「今は眠っていますが、食事はほとんど摂ってないようで、大分痩せてしまったようです」
『なるほど。では瑠衣さんの体調が回復したら、一緒に署まで来て頂けますか?』
「分かりました。それともう一つ……」
侑は、先ほど瑠衣が言っていた事を思い出し、捜査員に伝える。
「ある人物について調べて頂きたいのですが」
『ある人物……とは?』
「恐らく、今回の拉致事件に関係していると思われる者なんですが、私も恋人から聞きかじった程度なので、彼女と一緒に事情聴取に行った際にお話したいと思います」
『分かりました』
「よろしくお願いします」
侑は電話を切った後、友人の葉山怜にメールで瑠衣が見つかった事を報告した。
連絡が済み、ホッとしたのか急に眠気が侑を襲い、再び寝室へ戻ると、瑠衣が不安に押し潰されそうな表情で身体を起こしていた。