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「こ……これって……」
「いまからあそぼ? キャラ変して。未央はお姫さま。僕は王子さま。着替え、後ろのファスナーあげてあげるから、着たら声かけて」
亮介はそっと寝室のドアを閉めた。
なんか、うれしすぎて鼻血が出そう。「亮介、着れたよ。ファスナーお願いします」
未央は寝室のドアをそっと開けて、亮介を呼んだ。
「向こうむいててね」
亮介にそう言われ、未央はドアのすぐそばで後ろを向き、ファスナーをあげてもらった。
「あの……」
「振り向かないで。コンコンってノックするから、そしたら出てきて?」
「うん……」
亮介の王子さまってどんなんだろ。ドレスと一緒に置いてあったティアラもつけてみる。寝室の鏡をみると、見たことない人がそこにいるようだった。
──コンコン
ドアをノックする音。未央はそろりと寝室を出た。
亮介は王子さまファッションに身を包んでいた。といってもさっきの格好にマントを羽織ったくらいだけど、十分王子さまだ。
「……きれい」
「なんか恥ずかしいね、でもうれしい」
「似合ってますよ。ごめん、自分のほうは予算オーバー」
「ふふっ、亮介も似合ってるよ。ありがとう。夢みたい。こんなドレス着たかったの」
未央の水色のドレスは肩の部分がレースになっていて、Aラインのふわふわとしたかわいらしいデザインだった。素直にテンションがあがる。
「喜んでくれてよかった。さあ、こちらへ」
ムード作りなのか、スマホで音楽を流してくれている。あのアニメの曲だ。
亮介はバルコニー近くの窓際に、未央を呼んだ。
「姫、先日のプロポーズ、もう一度やり直させてくださいませ」
「へ? やり直し?」
亮介は未央の手を取って手の甲にキスした。
「こうしてキスしたときには、もう私はあなたのこと好きになっていました。愛してます。ずっと」
顔が真っ赤になって、手がカタカタと震える。亮介はそのままひざまづいた。
「結婚してください、お姫さま」
まっすぐな目でそう言われる。未央は涙を浮かべながら、しゃがみ込んで亮介と目線を合わせた。
「ありがとうございます、ひとつだけお願いがあります」
亮介はなに? と笑顔でこたえる。
「いつも笑顔じゃなくてもいい。悲しいときは悲しんで、辛いときはつらいと言ってください。そのままのあなたが、ぜんぶ好きだから」
「……はい。承知しましたお姫さま」
図ったように、スマホから流れる曲がサビを迎えていた。すっと立ち上がってキスをしてぎゅっと抱きしめあった。
「亮介、ありがとう」
「ずっと一緒にいようね……。さあ姫、もう我慢の限界です。きょうは寝かせませんよ」
何度も聞いたそのセリフ。心臓がばくんと跳ねる。確かに、きょう寝るのはもったいなさすぎる。
「ベッドへ行きましょう。一晩中かわいがってさしあげますよ」
手をひかれて、寝室へ向かう。何度このシチュエーションを経験してもまったく慣れない。心臓が飛び出しそうだ。「姫、服を脱ぎましょう。レンタルなんで汚れるといけませんから」
えーっ、もう脱ぐの? もうちょっと着ていたかったのに……。ちょっと残念だったけど、亮介のファスナーを下ろす手がぎこちないのがかわいいくて、まあいいかと思った。