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第7話「血の塔、沈む月」
📷 シーン1:廃墟の塔、侵入
星峰特区の外れ、夜霧に包まれた塔――かつて観測所だったというその建造物は、赫察総局の秘密拠点と目されていた。
ナヴィスは、灰色のローブに身を包み、静かに手を上げる。
青い瞳が夜の闇を見据え、隣のギアに指示を送る。
「侵入開始。すずか、情報開示頼む」
天井からナヴィスの耳元に優しく滑り込むような声が響く。
すずかAIの声は、静謐で知的な女性の声だった。
冷たいようであたたかく、鋭さと包容力を兼ね備えた不思議な響きだ。
「ナヴィス。敵兵数、およそ10名。外周パトロール2、内部警戒3、階上5。フラクタル起動反応あり。敵フラクタルは《ディゾルブフィールド》。物理・エネルギー系無効化の可能性」
「了解。ゼイン、行けるか?」
霧の向こうから、黒いコートを翻して現れたゼインは、短く答えた。
「いつでも。先に潰すぞ」
ゼインの瞳は鋭く輝き、手には銀色のフラクタルコード銃が握られていた。
📷 シーン2:塔内の激戦
ギアがフラクタルを起動し、光を吸い込むような音が辺りに響く。
「《ジャミング・コード》、展開。通信妨害完了」
塔の中へ突入――壁を蹴って先行するゼインの動きは、闇の中で疾風のようだった。
一人目の兵士に気づかれる前に、《シャドウピアッサー》を発動。
黒い閃光が直線を走り、敵の胸を貫く。
「っ……侵入者——」
叫び声は最後まで続かない。
ゼインの身のこなしは獣のようで、しかし動作は洗練された舞のように美しい。
「お前ら、無駄に強化されてんな」
次の敵がフラクタルを展開、《アサルト・パイル》で壁を破壊しながら迫る。
だがゼインはかわし、《オーバーライド》を発動。
敵のフラクタルに干渉し、一瞬だけ発動を停止させる。
「次は——こっちだ」
《ブレイク・バースト》
ゼインの拳に碧光が走り、敵の胸を砕く。
まるで重力ごと相手を押し潰すような威力だった。
📷 シーン3:ナヴィスの支援とすずかAI
後方支援に徹していたナヴィスは、《リバースバリア》を展開し、背後から撃たれた銃弾を跳ね返す。
ギアが壁を解体し、突入口をつくると、ナヴィスが中へ。
「ゼイン、階上にフラクタル中枢がある。奴ら、ここでカムリン族、碧族を利用して実験してる」
すずかAIの声が再び、静かにナヴィスの耳元に届く。
「中枢へ到達した場合、すぐにフラクタル構成図を取得して。赫軍兵団が使っている《エンフォース・エッジ》と互換性が高い」
「了解。ギア、援護頼んだ」
「まったく……便利に使いやがって」
ギアは小さく舌打ちすると、《インパクト・ドライヴ》を発動。
床下からパイプをせり上げて敵を吹き飛ばした。
📷 シーン4:中枢到達と“塔の崩壊”
中枢で待っていたのは赫察総局の改造碧族だった。
その身体は金属で覆われ、瞳には感情がなく、フラクタルを連射してくる。
ゼインは、《シンギュラリティ》を一瞬だけ起動。
その瞬間、ゼインのフラクタルは極限状態に到達する。
「……こいつは、オーバーキルってやつだ」
《ラグナロク・スパーク》
雷のような衝撃波が敵を打ち砕き、塔の上部をも吹き飛ばす。
ナヴィスがフラクタルコード端末を回収し、すずかAIが確認する。
「データ、確保しました。ギア、転送準備を。塔の崩壊まで、残り120秒」
「りょーかいっと。急ぐぞ」
📷 シーン5:退避
瓦礫の中を走り抜ける3人。
ゼインは最後に塔の頂上を振り返り、フラクタルを発動。
《フォールトシフト》
彼らの姿は、碧光の渦に飲まれ、塔の外へ瞬時に転移した。
夜空に崩れ落ちる赫の塔を背に、3人は森の中へ消えていった。