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#普通
野々さくら
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ありあ
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昼休みになっても、信愛の頭から朝のことが離れることはなかった。
皆が集まる部屋で椅子に腰掛けながら、ただぼんやりと天井を見つめ続ける。
そんな信愛の様子に気づいた朝陽が、心配そうに声をかけた。
「あの・・・大丈夫ですか?」
「あ、ああ、ごめん・・ちょっと考え事してて」
信愛は我に返り、慌てて視線を戻す。
「やっぱお母さんの件?」
茜に尋ねられ、信愛は曖昧に笑った。
「ま、まぁ・・・う、うん・・・」
さくらが少し心配そうに顔を覗き込む。
「やっぱまだ聞けてないの?」
「そうなんだよね、いや、聞こうとはしたんだけどさ」
信愛は今朝の母の姿を思い浮かべる。
あのとき、あと一言踏み込めば聞けたはずだった。
それでも、どうしてもできなかった。
「忘れたい過去かもしれないじゃん?」
信愛はぽつりと呟く。
「もしそうなら無理やり
聞き出すのは違うかもって思ったら」
焔垂が静かに頷いた。
「まあ、そうだよな・・聞き出しづらいよな」
「でも『気になる』『知りたい』
って思うもう一人の自分もいて・・・」
信愛は自分でも矛盾していると思いながら、胸の内を吐き出した。
「なんか、こう、頭がモヤモヤしちゃってさ・・」
「なるほどね・・・」
さくらは納得したように呟いた。
すると、これまで黙って話を聞いていた朝陽が口を開く。
「その気持ち・・分かりますよ」
信愛が朝陽へ視線を向ける。
「僕もお母さんに、僕が癇癪起こしてた時
どうだったとか、やっぱり聞き出しづらいですし」
朝陽は少しだけ困ったように笑った。
「先輩の気持ち・・分かりますよ」
「朝陽くん・・ありがとう」
自分の迷いを理解してくれるその言葉に、信愛の表情がわずかに和らいだ。
それを聞いた茜が、感心したように朝陽を見る。
「いやぁ♬朝陽くんも成長したね〜♬うんうん♬」
「いや誰目線?てか元から朝陽くんは大人でしょ」
さくらがすかさず突っ込みを入れる。
そんな二人のやり取りに、ほんの少しだけ空気が軽くなった。
けれど、信愛の胸に残る疑問は消えてはいない。
「でもさ・・・薄々思ってたんだよね」
信愛は再び真剣な表情を浮かべる。
「お母さんは実は私より
霊気の量が多いんじゃ無いかって」
朝陽が驚いたように目を見開く。
「え?なんでです?」
朝陽の問いに信愛は、ふと思い出したように皆の顔を見渡した。
「千歳の件覚えてる?」
「それって、古海商店街の?」
焔垂の問いに、信愛は小さく頷く。
「うん・・・」
「千歳さんの件がどうかしたの?」
茜が首を傾げると、信愛はあのときの出来事を思い返しながら話し始めた。
「あの時の千歳ってさ?私の霊気が霊圧を
拒否するレベルに霊気が多かったでしょ?」
「だね、だから信愛が目視できなかったんだよね」
さくらの言葉に、信愛は頷いた。
「そう・・だから茜がLINEしてくれた
画像や動画を見たとしても
私は千歳を目視する事が出来なかった」
そして、それは母も同じだった。
少なくとも、信愛はそう聞かされていた。
「お母さんも目視出来ないって言ってたし」
「けど佳苗ちゃんには視えてたんだよな?」
焔垂が確認するように言う。
「そう・・・だからあの画像や動画には
確実に千歳が映り込んでたはず」
信愛はそこで一度言葉を切った。
「それから先輩は佳苗ちゃんに取り憑いてもらって
初めて千歳さんの事を目視出来たんでしたよね?」
朝陽の問いに、信愛は頷く。
「そうなんだけどさ・・・」
信愛の受け答えは、どこか納得がいっていないような雰囲気だった。
「ん?どうかしたの?」
そんな信愛が気がかりになった茜が尋ねる。
信愛の表情が、わずかに険しくなった。
「問題はここからなの」
皆の視線が信愛へ集まる。
「私は千歳の魂に刻まれた記憶を見た」
千歳と魂を重ね、ソウルメイトとなったことで、信愛は彼女が生前に経験した記憶を見ることができた。
「だから私は千歳とソウルメイトになって
千歳は霊気が少ない人でも目視できる存在になった」
「確かそれがお母さんにバレて怒られたんだよね?」
さくらの言葉に、信愛は静かに頷く。
だが、引っかかっているのはそこではなかった。
「その時のお母さんの発言がおかしかったの」
「おかしかった?」
朝陽が聞き返す。
「お母さんはね?千歳に会った時──」
信愛はあの日の母の言葉を、記憶の中からそのまま引き出す。
「『交差点の霊よね?』って言ったの」
その瞬間、部屋の空気が変わった。
誰もすぐには言葉を返さない。
信愛の中でずっと燻っていた疑問が、ようやくはっきりとした形を持ち始めていた。
コメント
1件
あおいです、読了しました🌷 「『交差点の霊よね?』って言ったの」——この一文で全部の空気が変わったのがすごく印象的でした。千歳を目視できなかったはずの母が、場所を特定するような発言をする。信愛の違和感、読んでるこちらにもじわじわ伝わってきました。朝陽くんが「その気持ち分かりますよ」って寄り添うところも優しくて、この仲間たちの空気感が好きです。母の過去がどんな真実に繋がるのか、気になります。