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開宴時刻の十五分ほど前に披露宴会場に入った奏は、木目調のグランドピアノの前に座り、演奏する楽譜の準備をしていた。


新婦から頂いたブーケは、プランナーの方に預かってもらう事にした。


念のため、楽譜の横に披露宴の進行表を出しておく。


このシーンで何を演奏するか事前に記入しておき、奏がセットリストとして作成したものだ。


新郎新婦入場の曲は、親友が大好きなイージーリスニングの作曲者兼ピアニスト、アンドレ・ギャニオンの『めぐり逢い』。


ケーキカットは、挙式でも聴いたメンデルスゾーンの『結婚行進曲』。


乾杯はヴェルディの『乾杯の歌』。


歓談中は、彼女の好きな曲をピックアップして、演奏する予定になっている。




「それでは、新郎新婦のご入場です。皆様、大きな拍手でお二人をお迎え下さい」


司会者の言葉で、奏は『めぐり逢い』を演奏し始めた。


スポットライトに照らされ、しっとりとした旋律と温かな拍手に包まれながらゆったりと会場を歩く二人を見ながら、奏も自然と笑みが溢れる。


二人がメインテーブルに着くタイミングに合わせて、曲を締めくくる。


披露宴は二人のプロフィールと馴れ初めが司会者から紹介され、新郎新婦それぞれの主賓の挨拶に移った。


新婦側の主賓の挨拶は、挙式の後、奏と少しだけ話をした谷岡だ。


司会者も『新婦の職場の上司でもあり、新郎の中学時代の友人』と紹介している。


谷岡の挨拶が終わり、いよいよ次はケーキカットだ。


旬のフルーツをふんだんに使った大きな長方形の生ケーキは、後ほどデザートで振舞われるらしい。


「それでは新郎新婦、ウェディングケーキの入刀です!」


奏は、メンデルスゾーンの『結婚行進曲』を堂々と力強く、音を掴むように演奏する。


新婦新婦の周りには、人だかりができ、シャッター音やカメラのフラッシュで溢れている。


人の波が引くまで、奏はピアノを弾き続けた後、乾杯の時にはヴェルディの『乾杯の歌』を奏でた。


煌びやかな旋律とともに出席者がグラスを合わせ、豪と奈美もグラスを合わせながら、カメラマンに笑顔を向けているのが見える。




歓談の時間となり、奏は、親友の好きなイージーリスニングの作曲者でもあり、ピアニストでもある中村由利子の曲を数曲弾き続けた。


弾きながら不意に思ったのが、奈美の夫、豪の溺愛ぶりだ。


朝、控え室に挨拶しに行った際、豪が奈美の事ばかり想っている事を感じた奏は、予定に無かった曲を弾こうと思い立った。


ピアノソロの曲ではないが、何せ、奏が大好きな曲だ。


メロディとコードネームさえ分かれば、何とか弾けるかもしれない。


ぶっつけ本番の即興演奏だ。


奏は、大きく息を吐き切った後、豪の奈美への溺愛ぶりを思い出しながら前奏部分を演奏し始めた。

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