テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「えっと……お二方は、全国は出場されてるんですか?」
「いや、俺はないんだけど、藤学は俺の入学する前年と、俺が卒業した年に全国行ったんだよなぁ……」
怜は腕を組み、天井の梁部分へ視線を向けながら答えた。
「私もないですね。片品は、私が卒業した年に初めて全国に行ったけど……。あ、そういえば菅戸は、私が高二の時だからもう十一年前かな? 全国出場したなぁ」
奏の言葉に、瑠衣の瞳が更に丸くなり、さっきから驚いてばかりの状況に心の中で困惑する。
(え? 音羽さんが十一年前で高二の時って事は、私が高二で全国出場した年? って事は……音羽さんと私、同学年って事?)
少し言いにくい雰囲気かも、と思いつつ、瑠衣は恐々と話を繋げた。
「あ、私その年…………高二で全国行きました……」
瑠衣の言葉に、今度は奏が『マジですかっ!』と、見た目から想像付かないリアクションを見せた。
「じゃあ、もしかしたら私と九條さん、都大会の会場で、すれ違ってたかもしれないですね! しかもタメ年! ヤバ過ぎなんですけど!」
「そうか。奏と九條さん、都大会の会場で会ってたかもしれないんだ? それってすげぇな。しかも、全国出場経験者を目の前にして、俺も興奮してるっ」
奏と怜、瑠衣の三人で吹奏楽談義に花を咲かせ、すっかり『蚊帳の外』状態になった侑は、仏頂面で腕を組んでいる。
「三人の話を聞いてたら、是非とも三校の演奏を聴いてみたいものだな。連盟から全国大会、いや、都大会の審査員の依頼が来て欲しいくらいだ」
侑は予想以上に瑠衣が二人と打ち解けている様子に、フッと薄く笑い、四人が注文したコーヒーがすっかり冷めるほど、取り止めもなく話が続いた。
「なぁ。せっかく久々に会ったんだし、今から家に行かね? 二人の楽器、家に置いてあるんだよ。調整もした事だし、一度試奏してもらいたいんだよなぁ。うちはここから車で三十分くらいの所だし。侑と九條さん、時間は大丈夫か?」
初対面の方々から、自宅へのお誘いを受けて、瑠衣は思いもよらなかった展開に焦っていた。
(葉山さんの自宅とはいえ、音羽さんも週末に来ているお部屋でしょ? 行っていいのかなぁ?)
瑠衣がぼんやりと考えていると、侑は迷わず即答していた。