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春の桜が散り、奈良の街は新緑に包まれていた。悠真と美咲は、大学を卒業し、それぞれの道を歩み始めていた。悠真は就職活動を経て、奈良の企業に勤めることになり、美咲は再び短期の留学を計画していた。
だが、二人の関係は揺らぐことなく続いていた。休日には奈良公園を散歩し、図書館で並んで本を読む。かつての「偶然の出会い」が、今では「日常の風景」となっていた。
ある日、二人は東大寺の大仏殿を訪れた。観光客で賑わう中、悠真がふと立ち止まり、美咲に言った。 「ここで初めて夢の話を聞いたよな」 「うん。あの時は、不安でいっぱいだった」 「でも、今は違う。美咲は夢に向かって進んでるし、俺も少しずつ自分の道を見つけてる」
美咲は微笑み、悠真の手を握った。 「一緒に歩いてるから、怖くないんだよ」
夕暮れ、二人は奈良公園のベンチに座り、鹿たちを眺めていた。風が心地よく吹き抜け、桜の花びらの残りが舞う。 「ねえ、悠真くん。これからも、ずっと奈良で過ごす?」 「奈良は俺たちの場所だからな。……でも、どこに行っても一緒だ」
美咲は頷き、静かに目を閉じた。未来はまだ不確かだ。だが、二人の心は確かに繋がっていた。
冬の図書館で始まった物語は、春の桜の下で結ばれ、そして奈良の風の中で続いていく。 それは「終わり」ではなく、「新しい始まり」だった。