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結愛
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ありあ
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#純愛
結愛
93
信愛は、自分たちが龍河に電話するに至るまでの経緯を詳しく説明した。
高館家での日本人形の一件。
そして、母親の霊気が自分より多かった事。
その事実を銚子がずっと隠していたという事。
一通り話を聞き終えると、龍河は少し考え込んだ。
「なるほどね〜・・・霊気の量が
多い事をずっと隠していた母親か」
「ど、どうですかね?」
信愛が不安そうに尋ねる。
続けて、茜の声が飛んできた。
「何か知りません?」
「悪いけど、それだけじゃ情報が少なすぎるな」
「そ、そうですよね・・・」
信愛の声が沈む。
「ヘタしたら俺が産まれる前の話かもしれないしな」
「やっぱそっか・・・」
さくらも残念そうに呟いた。
その時、龍河の頭に一つの可能性が浮かぶ。
「いや、待て」
電話の向こうが静かになった。
「編集部なら何か資料があるかも
それに編集部だったら誰かしらいるだろうし
その中にもしかしたら詳しいヤツが居るかも」
「ほ、本当ですか!?」
信愛の声が一気に明るくなる。
「仮にそうなれば調べやすいだろ?」
「調べてもらえるんですか?」
「いや、君らが直接来た方が早くないか?」
「来た方がって──」
焔垂が何かを察したように声を上げる。
「編集部に行って良いって事っスか!?」
次の瞬間、電話越しに焔垂の大声が響き渡った。
「もう、うるさい!声デカ過ぎだって!」
茜のツッコミが飛ぶ。
「いやいや、そりゃ興奮すんだろーが!
MWの編集部に行けるかもなんだぞ!
こんなすげー事ねーよ!」
どうやら焔垂にとっては、母親の謎を追うことと同じくらい、いや、それ以上に重大な出来事らしい。
「だからってそんなに叫ばなくても良いじゃん」
電話の向こうで言い合う二人の声を聞きながら、龍河は思わず苦笑する。
「おーい!聞いてるかー?」
「あ、ごめんなさい」
信愛が慌てて返事をする。
「でも、お邪魔じゃないですか?」
「邪魔なんてとんでもない」
龍河は即答した。
「君らにはバスの件で世話になったからな」
あの一件で助けられたのは、紛れもない事実だった。
「それにいずれ、君らの事は
編集長に紹介したいって思ってたしな」
龍河がそう付け加えると、焔垂が食い気味に声を上げた。
「ぜひ行きたいっス!」
その声には、隠しきれない期待が滲んでいる。
龍河は苦笑しながらも現実的な問題を口にした。
「でも来るって言っても、平日は厳しいよな?」
「そうですね。平日だとしたら
行けたとしても放課後になるかと」
「なら今週の土曜はどうだ?」
「あ、はい、それなら大丈夫だと思います」
話がまとまり始めたところで、龍河はふと気づく。
「事務所の住所は・・まぁ八乙女くんが知ってるよな」
「はい!もちろんっス!」
即答だった。
すると茜も、思い出したように声を上げる。
「それなら私も!前に名刺もらって──」
だが、焔垂はそんな茜の言葉を遮るように、すらすらと住所を読み上げた。
「郵便番号110の0005
東京都台東区下野三丁目24の6
下野フロンティアビル14階っスよね?」
あまりにも淀みのない回答に、一瞬の沈黙が落ちる。
「あ、知ってたし(笑)」
茜が呆れたように笑うと、電話の向こうで龍河の豪快な笑い声が響いた。
「だーはっはっは!ゆ、郵便番号から
知ってんのかよ(笑)俺ですら危ういってのに
さすがはオカルトマニアだな(笑)」
「あざっス」
褒められたと受け取ったのか、焔垂は満更でもなさそうに返す。
「まあ、いいや。なら土曜日に
現地集合でいいかな?」
「はい!」
「時間はどうする?12時くらいにするか?」
「そうですね。そのくらいの時間で問題ありません」
「なら土曜の12時にな」
「はい、ありがとうございます」
「はーい、なら土曜な」
◇ ◇ ◇
土曜日にMW編集部へ行けることが決まり、焔垂はすっかり浮かれていた。
「ついにMW編集部に!くぅ〜土曜日が待ち遠しいぜ」
憧れ続けてきた場所を訪れる機会を得た焔垂は、先ほどから終始ニヤけっぱなしだ。
そんな彼の様子を見ていた茜が、呆れたようにため息をつく。
「はぁ~・・あのさぁ~・・・
なんか本来の目的忘れてない?」
続けて、少し釘を刺すように言った。
「あくまでも信愛のお母さんの事を
深く知る為なんだからね?」
「それな!ちょっと浮かれすぎ(笑)」
さくらにも突っ込まれ、信愛は苦笑しながら二人をなだめる。
「まぁまぁ二人とも」
そして、今回ここまで話が進んだきっかけを改めて口にした。
「元を辿れば焔垂くんが
馬場さんの連絡先を知ってたから
こうしてアポ取れたんだから」
「そう!その通り!」
焔垂は胸を張って即答する。
そんなやり取りを聞いていた朝陽が、期待を込めて呟いた。
「何か知ってる人居ればいいですけどね」
「そうだね」
信愛も小さく頷く。
母の過去について、まだ分からないことは多い。
だがMW編集部なら、何か新しい手がかりが見つかるかもしれない。
その期待は、信愛の胸にも確かにあった。
「早く土曜になんねーかなぁ」
待ちきれない様子で焔垂が呟く。
「まだ月曜だよ?焦りすぎ(笑)」
さくらがすかさず返した。
その一言に、部室には小さな笑いが広がった。
土曜日までは、まだ5日。
焔垂にとっては、いつもよりずっと長い一週間になりそうだった。
コメント
1件
古書研究してる身としては、龍河さんが「編集部に資料があるかも」って発想したところがすごく自然で、なるほどなって思いました。あと焔垂くんの郵便番号まで暗記してるオカルト愛、笑っちゃいましたね(笑)「だーはっはっは」って龍河さんの笑い声がめっちゃ温かくて、このチームの関係性がよく出てる回でした。土曜日が待ち遠しい気持ち、すごくわかります。