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夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
🖤(康二…!!)
目黒はマンション内の廊下を全力疾走した。
嫌な想像ばかりしてしまう。
どうか手遅れでありませんように。
<ガチャッ>
鍵を開け勢いよく自宅の中に入る。
向井がいない。
🖤「康二!!」
叫んでも返事がない。
辺りを見回すとすぐ気づいた。
風呂場に続く脱衣所の扉が開いている。
そして灯りがついている。
一目散に風呂場へ行く。
<ガラッ>
🖤「康二!!」
🧡「めめ来やんで!!」
予想通り向井は風呂場にいた。
ただ扉を開けた瞬間、目黒は硬直して動けなかった。
向井は泣きながら包丁を自身の首に当てていた。
🖤「康二…落ち着いて」
🧡「俺は至って…冷静や」
本人は冷静だと言うが涙をボロボロこぼし手も震えているこの状態は 明らかに落ち着いていない。
🧡「俺がおる限り…めめはどこへも行けんくなる」
🧡「いつか…めめの…人生潰してまう…」
🧡「めめの…足手まといになるのはもう嫌や…」
ポツポツと話す向井かける言葉を目黒は脳内で必死に考える。
腰をゆっくり下ろし、向井と目線の高さを合わせる。
🖤「康二、俺は足手まといとか迷惑とか思ったことは1回もないよ。それに元々は俺がここに連れてきた。康二は悪くない」
🧡「めめは…優しいから…そんなこと言ってくれるんやろうけど…俺はもう、しんどいねん」
<ガチャッ>
🤍「めめ!」
その時、後を追ってきたラウールが入ってきた。
もちろん風呂場に灯りがついているからこちらに向かってきた。
🤍「めめ…? …!!」
ソロソロ入ってきたラウールの目に向井が映った瞬間、思わず後ずさった。
🤍「こ、康二くん…?」
🧡「ラウ…黙っとってごめんなぁ…俺な、今こんなんなってもうてん」
🤍「……」
もちろん思ってもいない展開にラウールは声も出なかった。
🧡「めめ…俺のせいで、ハリウッドのチャンス逃そうとしとるんやろ? 俺がここにおったら、めめは日本出れへんのは分かっとる」
🖤「違う、康二ちがう。俺ほんとに落ちて…」
🧡「分かっとんねん! そりゃ普通に考えたら…国民的俳優のめめが…落ちるわけあらへんもん…
俺がこんなんなってるせいで…めめに嘘までつかせて」
🖤「俺が勝手にやったことだって。康二のせいなんかじゃないよ」
🧡「あとな、俺調べてん。人魚のこと」
🧡「人魚の歌ってな…人を狂わす力があるんやって」
🖤「人を…狂わす?……もしかして…」
🧡「……めめがおかしなってもうたあの事も…俺のせいやねん…」
向井は包丁を握っていた手に改めて力を入れる。
🧡「普通の生活もできんくて…めめに迷惑ばっかかけて…見た目もどんどん変わってって…
もうこんな俺嫌やねん…!
俺……どんどんバケモンになってってる……!」
🖤「バケモンなんかじゃない!康二は康二だよ」
🧡「めめさ…俺が人魚になった日言うてくれたやろ?
『俺は綺麗だと思う』って
めめん中の俺が…まだ綺麗なうちに…消えたいねん…」
目黒の瞳をまっすぐ見つめ、大粒の涙を流し声を絞り出すように言った。
🧡「俺…これ以上醜くなりとうないねん… 」
向井の表情は本気だ。
本当に居なくなろうとしている。
目黒はゆっくり話す。
🖤「康二、俺は今でも綺麗だと思ってるし、これからどんな姿になろうとそれは変わんない。
さっきも言ったけど迷惑なんて思ったこともない。
それに…
康二に死なれたら…俺が生きてられなくなる」
🧡「……ゔぅ…グスッ…めめは…ホンマに優しいな…」
🖤「だから康二、それ…下ろして」
🧡「ほんだら…めめ…お願いがある。
俺を…海に捨ててくれへん?」
🖤「はぁ…!? そんなことできるわけ…!」
🧡「めめは優しいから…! 俺の事を突き放せんのやろ? せやったら…俺からめめんとこ離れたらええ」
🖤「落ち着いてよ康二…!」
🧡「めめが良い言うても俺が俺を許せへん…!」
🖤「なんでそうなるの…!俺はただ…!」
🧡「選んでや…!
ここで死ぬか!! 海に捨てるか!! めめが選んでや!!」
🖤「康二…!」
気づけば目黒の目にも涙が浮かび始めていた。
しばらく沈黙が続いた。目黒は悔やむような顔をしている。
その後頭を垂れ、目黒がポツリと呟く。
🖤「わかった…わかったから。
海に……連れてく。だから……死なないで…」
向井はえずきながら首に当てていた包丁をゆっくり下ろした。
目黒は向井の手から包丁を抜き、後ろへ軽く投げ捨てた。
黙って見ていたラウールがその包丁を拾い、キッチンへ持っていった。
🧡「なんで…めめまで…泣いとるんよ…」
目黒は歯を食いしばりながら向井をゆっくり抱きしめる。
何も言わず、ただ抱きしめるだけ。
🧡(めめに最悪な選択をさせてもうた。
やっぱ俺……最低やな…)
夜中の12時を過ぎた頃。ラウールには申し訳ないが帰ってもらった。
そして目黒と向井は前に来た穴場の砂浜に再び来ていた。
🧡「上着も…もういらんな」
🖤「………」
向井は着ていたパーカーを脱ぎ捨てる。
海の中では必要ないから。
目黒は何も言わずに向井を抱え、 前と同じように波を分け海へと歩みを進める。
ある程度の深さまで来た。
あとは向井を下ろすだけだ。
🧡「めめ…下ろしてや」
向井がそう言っても目黒は一向に動かない。
目黒の目にはまた涙が浮かんでいた。
🖤「…ぅ…康二…」
🧡「めめ。お願いやから。…俺までまた泣いてまうやん」
🖤「…ほんとに行くの?」
🧡「ごめんな…最悪な選択させてもうて。俺がおらんくなったら、めめは自由になれるんやで」
🖤「自由なんか…いらない…」
🧡「そんなん言わんでや。めめはもっと世界に出るべきなんやから…俺なんかに時間使ったらあかん…」
🖤「世界とか…どうでもいい…」
目黒の涙は止まらず向井の体にも落ちていく。
向井は目黒とおでこ同士を当てる。
🧡「めめ…ごめんな。…俺を、自由にしてくれへん…?」
降参したかのように、目黒は静かに海へと向井を下ろした。
最後に目を合わせて、精一杯の笑みで言った。
🧡「ありがとうな…今まで」
🖤「……うん…ありがとう…俺の方も…」
向井は背を向け、海の沖へと姿を消した。
目黒の零す涙は未だ止まらず、海の一部となっていく。
その場から動けもせず、ただ向井の名前をポツリと呼ぶだけだった。
🧡(めめごめんな…好きやで…ずっと)
ひたすら沖へと、深海へと泳いでいく。
自分が泣いていることにも気が付かず。
─────鱗とは
本来、外敵や刺激から身を守るためにあるいわゆる「鎧」の役割がある。
向井は自分の恋心にまで鱗をまとわせ、誰にも見つからないように海へ沈めたのだ。
それはもう、月明かりが届かないほどに奥深く。
𓏸 𓈒 𓂃 恋心に鱗. END𓂃 𓈒𓏸
コメント
3件
うわぁー、切ないー、、😭😭 尊くて切なくて、ピュアな2人の恋が最高でした😭✨ 神作ですこれは😇🫶
うわっ…最終回、読み終わった…涙が止まらないんだけど…。康二の「これ以上醜くなりとうない」って台詞がめちゃくちゃ刺さった。自分をバケモン呼ばわりするのが辛すぎるし、めめに「選んで」って迫る場面も息が詰まったよ。めめが「自由なんかいらない」って泣きながら言うとこで完全にやられた…。最後の「恋心に鱗」ってタイトル回収も美しすぎて言葉にならない。おつかれさまでした、透子さん…本当に素敵な作品をありがとう。