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呼び鈴も何もないのでドンドンと引き戸を叩いた
暫くしても誰も出てこないので何度も叩いた・・・
家には誰もいないのかもしれない、ひょっとすると美鈴は入院してるのかな、美鈴がここにいなくても誰か戻って来るまでは帰るまいと心を決めた
住宅はよく見ると古ぼけた二階建ての家がピッタリと何件も繋がっていた、こんな古く狭い所に人が住んでるなんて信じられない、玄関の上には小さなベランダがあり、隣の家の玄関には〈貸間あり〉などと貼り紙が張ってあった
「鳩山さぁ~~~ん!いらっしゃいますかぁ~~?」
呼んでもなかなか出てこないが、家の中に誰かいる気配がした
数十分経って・・・やっと年配の女性の影が玄関先のガラス引き戸に映ったと思うと、ドアが5cmばかり右に開き、一人の老婆が片目をそのすき間から覗かせた
そして低い声で「誰だ」 ときつい声で言った
私は自分は早川スミレと言って鳩山美鈴さんが結婚した男性の連れ子だと早口でしゃべった
老婆は、「美鈴はいないよ!」とつっけんどんに答え、引き戸を私の顔の前でピシャリと閉めた。
私はもう一度引き戸を叩いた、私が望みをかけられるのはここしかなかったのでもう一度あの老婆に話を聞くまで帰るつもりは無かった
やがてまた老婆の陰が玄関に現れ、引き戸が開いた
「何だっていうんだい」出てきた老婆はひどく不機嫌だった
「あの、美鈴さんの今おられる場所を教えて頂きたいんです、体調を崩されていると聞いて心配でやってきたんです」
ヒキガエルみたいにずんぐりした顔のその老婆は、 爬虫類を思わせる不透明な目で、ひどく無遠慮に私をジロジロと見た。私ももしかしたら老婆をジロジロ見ていたかもしれない・・・
「こっちへ入っとくれ」と老婆は言い、よいしょと敷居をあがり、奥へヨタヨタと歩き出した
慌てて私もは後についていった