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老婆は私を何十年も窓を開けた事がないのかと思われるほど埃っぽい、ゴチャゴチャと物を置いた狭苦しい居間に案内した
彼女の薄くなった頭には、茶色に染めた乏しい髪をていねいにカールしてまとめている。 どことなく爬虫類を思わせるのは、肩にめりこむように据えたこの頭のせいかもしれないと私は思った
とにかくかなりショッキングな老婆だった
それを見て私はやっと、この老婆は使用人とかではなく、美鈴の母親だと気づいた
この女性を愛し、結婚した人がいるなんて・・・そしてあの美しい美鈴がこの女の人から生まれ出てきたなんて、とうてい信じることが出来なかった
「それで何が知りたいって?」
と老婆はじれったそうに角ばった顎をつき出して聞いた
「美鈴さんに会いたいんです、どんな容態か知りたいので、実は父が凄く心配して・・・・流産したって」
弁護士が調べた美鈴の母・・・「ツネ」はギロリと私を睨んだ
「ここにいるってどうしてわかったんだい?」
老婆は容赦なく私の言葉を遮って聞いた
「私の顧問弁護士に美鈴さんの実家の住所を調べてもらいました。お恥ずかしいのですが、彼女のご実家の住所を聞くのをすっかり忘れてしまって・・・・多分今は具合が悪くて美鈴さんは私達と連絡を取れる状態じゃないかもしれませんが・・・一応家族なんで・・・」と
私は丁寧に言った、そして持ってきたお見舞いのカーネーションのアレンジを目の前のテーブルに置いた
「本当にお気の毒でした・・・・」
グフフッと老婆は気持ちの悪い薄ら笑いを浮かべた
「この花をあの子に? 優しいね~。預かっとくよ、あの子の手に渡るようにするから」
「ありがとうございます・・・でも、直接渡したいんです。それでわざわざこちらへ伺って来たんですから・・・もし入院とかされてるんでしたら病院さえ教えて頂ければ、お手数はかけさせません・・・タクシーで行きますから」
「いや、それはダメだね」
と老婆は言った