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第4話「ペンシルの答えは絶対!?」
1.円 真和志、すべてを鉛筆で決める男
「さて、次の問題は……。」
算数の授業中、先生が黒板に問題を書いた。
「この問題、分かる人?」
数人の生徒が手を挙げるが、教室の後ろで鉛筆を回し始める少年がいた。
「……ふむ。」
円 真和志(えん まわし)。
彼の決断のすべては、鉛筆の目で決まる。
「どっちの答えか……。」
彼の肩に乗っている害獣、ペンシル(細長いフェレットのような姿で、尻尾が鉛筆の形になっている)がくるくると回転する。
「行くぞ、ペンシル!」
円は鉛筆を指の上で回し、転がった先の答えを見て——。
「先生、答えは『A』です。」
「……正解!」
「やっぱりな!」
円は満足げに頷いた。
「いやいや、たまたまだろ!」
目蒲 安(めがま やすし)が即座にツッコミを入れる。
「何言ってるんだ、ペンシルが回した答えは100%正しいんだぞ?」
「そんなんでテスト受けんなよ……!」
2.「ペンシルの答えを信じるのか?」
休み時間、円はいつものように鉛筆を回していた。
「さて、今日のジュースは……オレンジかリンゴか……。」
カフェテリアでジュースを買うにも、鉛筆で決める。
「お前さ、それで本当に人生決めてるの?」
目蒲が呆れたように聞く。
「当然だろ?」
「でもさ、もし間違ってたらどうするんだ?」
「間違わない。ペンシルの答えは100%正しい。」
円は絶対的な自信を持っていた。
「……でもさ。」
目蒲がふと考える。
「じゃあ、例えば……テスト問題じゃなくて、誰かを助けるかどうかを鉛筆で決めるのか?」
円の手がピタリと止まった。
「……え?」
「例えば、友達がピンチのときに、鉛筆を回して“助けるかどうか”決めるのか?」
ペンシルは無言でくるくると尻尾を回転させる。
「……そ、それは……。」
円の表情に、初めて迷いが生まれた。
3.円 真和志、鉛筆なしの決断!?
その日の放課後、事件は起こった。
校庭の隅で、低学年の子どもが高い遊具に登って降りられなくなっていた。
「た、高すぎるよぉ……!」
円がその場に駆けつけると、何人かのクラスメイトも集まっていた。
「先生呼んだほうがいいんじゃ……。」
「いや、時間かかるぞ……。」
円はポケットに手を突っ込み、鉛筆を握りしめた。
(……どうする? 助けるか? それとも先生を待つか?)
ペンシルが彼の肩の上で動く。
「さぁ、俺を回せ!」
「…………。」
円は鉛筆を回そうとした——その瞬間、
「いや……今はそんな時間じゃない!」
彼は鉛筆を投げ出し、子どものもとへ駆け寄った。
「手を伸ばせ!」
「え、えぇ?」
「大丈夫、俺が受け止める!」
円は腕を伸ばし、子どもをゆっくりと引き寄せた。
「う、うわぁ……!」
子どもは円の手を掴み、無事に遊具から降りることができた。
「……よかった。」
円はようやく安堵の息をついた。
「え……円、お前、今……鉛筆回さなかったな?」
目蒲が驚いたように言った。
「……あぁ。なんか、今はそんなことしてる場合じゃないって思った。」
ペンシルがくるくると尻尾を回しながら、ポンと円の頭を軽く叩いた。
「たまには、回さずに決めるのも悪くないだろ?」
円は照れくさそうに笑った。
4.「ペンシルの答えは絶対」から「自分で決める」へ
翌日。
円はいつものように鉛筆を回していたが、
その目には、少しだけ新しい自信が宿っていた。
「……ペンシルの答えは正しい。けど、それが絶対じゃない。」
「へぇ、ちょっとは成長したな?」
目蒲がニヤリと笑う。
「まぁな。でもやっぱり、ジュースの味くらいは鉛筆で決めるけどな!」
「そこは変わらんのかよ!」
こうして、円 真和志は**「鉛筆の答えに頼るだけの男」から、「自分で決めることを覚えた男」へと成長した**のだった——。