テラーノベル
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翌日、二人は海へ向かった。
サーフショップで、栞のボードやウェットスーツをレンタルし、海へ向かった。
直也は自前のシーガルウェットスーツを着て、車に積んでいたサーフボードを手にしていた。
逞しい彼の姿に、栞は思わず視線を奪われてしまう。
(先生、かっこいい!)
砂浜を歩いていると、直也の知り合いたちに何人か出会った。
直也は彼らに栞を紹介した。皆、感じの良い人ばかりで、栞はすぐに打ち解けた。
その後、波打ち際まで行くと、直也は栞にサーフィンの指導を始めた。
「まずは、準備体操ね!」
「はーい!」
栞は直也の動きを真似しながら準備運動を終える。
続いて直也がサーフボードの説明に移り、ボードの上の足の位置や角度を丁寧に指導する。
さらにパドリングの方法を教えた後、海でのルールや怪我を防ぐための行動まで詳しく説明した。
直也は波の優先順位についても詳しく説明した。
良い波が来ても、順番を守らずに乗ることはマナー違反であると栞に教える。
直也の説明は、まるでサーフィンスクールの講師そのものだった。
言葉一つひとつが的確で、分かりやすい。
「先生、まるでサーフィンスクールのスタッフみたいですね」
「大学時代にバイトで教えていたことがあるからね。じゃあ栞、海に入るぞ!」
「はーい! 緊張する~!」
「僕が傍にいるから、大丈夫だよ」
そして二人は海の中へ入る。
波待ちにちょうどいい深さまで進み、二人はじっくりと良い波を待った。
「良い波が来たら合図するから、すぐにパドリングを始めてね!」
「了解です!」
栞はその瞬間を待つ。
いくつもの波をやり過ごした後、ついに直也の力強い声が響いた。
「栞、今だ! 行けっ!」
栞が全力でパドリングを始めると、直也が後ろからボードを力強く押し、波に乗りやすいよう手伝ってくれた。
栞は波に遅れまいと、懸命に漕ぎ続ける。
その時、再び直也の声が響いた。
「栞、立て!」
指示に従い、栞は瞬時にボードの上に立ち上がった。
すると、ボードが軽やかにスーッと前へ滑り始めた。
(わぁ、私、今、波に乗ってる……?)
波に乗ったボードが足元で滑る感触を、栞ははっきりと感じていた。
思わず笑みがこぼれ、目の前に広がる景色を見つめる。
(この景色が、先生が話していた景色なのね……)
その景色はまさに、直也が言った通り、栞の人生観を変えるほどの力強さを持っていた。海から陸を眺めると、自分が地球と一つになったような感覚が湧き上がる。
栞は、それまでに味わったことのない自由を全身で感じていた。
(なんて気持ちがいいの!)
感動に浸っていると、やがてボードは静かに砂浜へたどり着いた。
喜びに満ちた笑顔で振り返ると、直也が波に揺られながら、両手で大きな丸を描いているのが目に入った。
「やった! 先生、私、波に乗れたわ!」
栞は嬉しさのあまり、その場で飛び跳ねた。そんな彼女に、直也は親指を立てグッドサインを送った。
その後しばらくの間、栞はサーフィンに夢中になり、何度も波に挑戦した。何回か練習を繰り返すうちに、栞は一人で波に乗れるようになっていた。
途中、直也がやってきて、二人で栞のロングボードに乗った。背後に直也の存在を感じながら、栞は波乗りの楽しさを存分に味わう。
(生きているって、こんなに楽しいんだ!)
栞はこれまでにない喜びに満たされていた。
やがて、二人が乗ったボードは静かに砂浜へ辿り着く。振り返った栞は、勢いよく直也に抱き付いた。
「先生、大好きっ!」
直也は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに優しく栞を抱き締めた。
「僕も愛してるよ」
そして二人は、人目を気にすることなく唇を重ねた。
オフショアの優しい風が二人の頬を撫で、繰り返し響く波の音が耳に響いていた。
長いキスを終えると、栞が降参するように言った。
「先生、すっごく楽しかったけど、もうクタクタ~!」
「お嬢さん、お若いのにもうギブアップですか?」
「ギブアップでーす!」
「じゃあ、一人で乗ってくるかな!」
「行ってらっしゃい! ここで見てるね」
「おうっ! 僕の雄姿に惚れ直すなよ!」
直也はそう言ってウインクをすると、ショートボードを手にして軽やかに海へ向かった。
栞は、直也のサーフィンを見たことがなかったので、楽しみだった。
直也は海へ入ると力強いパドリングを始め、ぐんぐん沖へ向かっていく。その動きには無駄がなく、栞は目を奪われる。
あっという間に深いところへ到達すると、直也は向きを変えて波待ちを始めた。
しばらくすると、背後から大きな波が迫ってくるのが見えた。
直也は波を確認すると、すぐにパドリングを開始し、ボードの上にスッと立ち上がった。そして、大きな波にノーズを突き刺しながら、かなりのスピードで波の上を滑り始めた。
腰を捻りながら巧みにターンを繰り返し、波の力を完全に操るかのように滑り続ける。その派手なアクションに合わせ、水しぶきが広がっていた。
(先生、なんてかっこいいの……!)
栞の心臓は高鳴り、直也の見事な波乗りに釘付けになる。
ふと気付けば、周囲のサーファーたちも息を呑んでそのアクションを見守っていた。
しばらくし波乗りを楽しんだ直也が、栞の元へ戻ってきた。
「先生、すっごくかっこよかった!」
「惚れ直した?」
「うん♡」
「やったね! 狙い通りだ!」
直也は濡れた髪をかき上げながら、得意そうに言った。
その言葉に、栞は思わずクスクスと笑ってしまう。
その時、二人の背後から声が響いた。
「直也パイセーン、お久しぶりっす!」
「おーっ! 佐野~、久しぶりだな! 相変わらず元気そうじゃないの」
「元気っすよ! 俺から元気を取ったら何も残らないっすからね! で、そちらが噂のカノジョさん?」
「ああ、紹介するよ。こちらは交際中の鈴木栞さん。で、こっちはバンドのボーカルの佐野君だ」
「初めまして、鈴木です」
「佐野ですぅ~! わ~、めっちゃ若くて可愛い彼女さんっすねぇ。パイセン、犯罪じゃないっすか?」
「犯罪ってなんだよ……人聞きが悪いなぁ」
「だって、まだピチピチの女子大生でしょ? 犯罪以外のナニモノでもないっすよ~」
「お前だって、前に付き合ってた子は10代だったよな? 人のこと言えるかっ!」
直也はそう言いながら、佐野の頭を軽くコツンと叩いた。
二人のやり取りを見ていた栞は、可笑しくなってクスクスと笑い始める。
そんな彼女に向かって佐野が言った。
「直也パイセンが浮気したら、すぐ俺に報告して下さいね~! ちゃんとお仕置きしますから~」
「浮気なんかしねーよっ!」
「あっ、確かに! こんなに若くて可愛い恋人がいたら、浮気なんて考えもしないっすよねぇ!」
佐野がそう言って頭を搔いたので、栞はまたクスクスと笑った。
三人はしばらく立ち話をした後、菊田の店で落ち合う約束をして別れた。
ボードとウェットスーツを返却した後、二人は一旦ホテルへと戻った。
コメント
54件
いいな〜🎵 楽しそう。 サーフィンが上手な人って素敵だよね🩷
栞ちゃんのサーフィン🏄すぐ波に乗れるのがすごい👍🤩 そして直也さんの教え方も明確で素晴らしい👍きっとモテモテだったと思うけど、今は栞ちゃんにゾッコンだし🥰👨❤️💋👨 2人の呼吸がぴったりなのが一番羨ましい💗💗 そして佐野さん、菊田さんの名前も出てきて懐かしい〜〜o(^▽^)o🙌
イケメンでサーフィンするとかカッコよくて反則です(*¯罒¯*)💕💕 きっと女子皆のハート鷲掴み💗 栞ちゃん💕素敵な直也さんをみれて惚れ直しちゃうね❀(ㅅ•᎑•)❀ こうやって2人で波乗りする時間は貴重だね。栞ちゃんに指導できて直也さんも嬉しいよね🤭