これは私が再婚する少し前で、娘は幼稚園児の頃の話です。時系列的には『叔父/〇〇〇〇』よりほんの少し後になります。一難去ってまた一難と言いますか、『それ』は突然始まりました。
まず就寝しようとすると最初に必ず頭に浮かぶ光景があって、背景がやけに真っ暗な公園なんです。全く知らない公園で、住宅街でもなくめちゃくちゃ閑散とした地域の公園って感じで、街灯も周りに全然ありません。例えるなら漆黒の中にぽつりと公園だけが浮かんでいる、そんな感じです。唯一あるのが公園内にある灯りだけで、遊んでいる子は周りに全く居なくて、気付けば私と自分の娘だけ。おそらくこの辺りからは夢なんだと思うんですが……。
最初は娘が遊びたい遊具で遊ばせているんですが、途中でいつ入ってきたのかもわからない背の高い女性(25~30代くらい)が、いつの間にか私の真横に立っているんです。その女性、口が裂けてるのかなってくらい口角が頬の辺りまで上がっていて、目も大きく見開いてるから雰囲気からして物凄く不気味(服装はベタですが白っぽいワンピースに見えました/髪は黒髪ストレートで前髪は長いですがセンター分けだったので顔ははっきり見える状態)で、生きてる人じゃないなってのが直感でわかるんです。
その女性 最初は私の隣に立ってるんですが、遊んでいる娘だけを異様なほど凝視していて、何となく長居してはいけないような、嫌な予感がして私は娘の手を引いて帰ろうとします。まだ遊びたがっていた娘を強制的に連れて、公園から走って出ました。途中でチラッと振り向けば、女性は口角を上げたままこちらをじっと見つめています。見開いたままの目が、不満そうに見えました。
そこでふと目が覚めるので、なんだ夢かぁ……となるんですが、隣の娘の部屋から「な ん で」とはっきり怒った口調で低めの女性の声がして、寝ているはずの娘の部屋(幼稚園の頃から娘には自分の部屋を持たせていたので寝室が別でした)からドタバタと何かが暴れる音がしました。飛び起きて娘の部屋を見に行くと、机に無造作に置いてあった自由帳や棚にあったぬいぐるみなどが空き巣にでもあったように荒れています。娘はうなされている様子だったので叩き起すと「夢でね、公園で遊んでるんだけど、変な女の人に何回もおいでーおいでーって言われて怖かった」との一言。
偶然の一致にしては不気味でした。
その日の日中は娘も私も心霊現象的なことはなく平和だったんですが夜娘が寝た後、私もうつらうつらしてきた頃に再び公園の風景が見えました。娘がブランコに座っているのですが、その背後に昨日の女性が立っていました。私からしたら『幽霊の怖い女性』というより『不審者』という認識が強くて、「近付かないで!」と半ば怒鳴りながら娘と女性の間に割り込みました。女性は無言で、終始口角が上がって満面の笑顔なんですが目だけは怒ってる、そんな雰囲気が伝わってきて正直怖かったです。ブランコから娘を下ろしてとにかく急いで公園から抜け出すんですが、やはりそこで目が覚めます。
目を開けたら、真上に女性の顔がありました。金縛りはなくて普通に動けるんですが、あまりにも至近距離で驚き過ぎて固まってしまいました。女性は口角を上げたままですが怒った口調で物凄くはっきりと「邪 魔」と私に言いました。(流石にちょっと心外でした)その後 私の瞬きと同時に女性はふっと消えて、娘も健やかに寝ているのを確認したのですが、娘の部屋の窓の外にその女性が立っていて睨んでいるのが見えました。
流石に2日連続こんな体験をすれば、女性が「驚かせる系」とかそんな生易しいものじゃなく「明確に子供を連れ去る系」だと直感で思いまして。その日の晩、今日はいつもよりもっと嫌な予感がして私は娘のベッドで、娘の手を繋いで寝ようとしました。就寝しようとすると、ベッドの真下から複数の子供の泣き声が聞こえました。驚いてベッドの下を見ると、何故かあるはずのフローリングがなくて、ぽっかり空洞のような暗闇があり、そこに数えきれないほどの子供達の顔がありました。乳児から小学生(おそらく0歳~10歳)くらいまで、年齢もおそらく性別もバラバラでした。瞬きをしたら消えたんですけど、何となく夢の中で(?)あの女性に連れ去さられた子達なのかな……と思いました。考え過ぎかもしれませんが。
まあその時はまだ私、見えるだけでどうすることも出来なかったので、一応3日目にしてちょうど私も休日だった為、高額を覚悟して地元のお寺の住職さんの所にダメ元で行ったんですが、娘を見て凄く嫌そうな顔をした後、言いにくそうに一言「わたしでは助けられません」と。変に希望持たせるよりはいいと思うんですけど はっきり拒絶の姿勢で、正直 まじか……となりました。御守りはもらったんですけど、まあ見える範囲で確認できるのは、その辺の低級な浮遊霊が家に入って来れなくなったかな、くらいです。ないよりマシかな……程度。二度と最寄りの住職はアテにしないと心に決めました。ちなみに事故物件ではないと聞いていたんですが、一応不動産にも掛け合って、女性 もしくは母親、子供が亡くなっていないか確かめたところ、以前は御老人夫婦がいて、普通にといったらあれですが老衰で亡くなっているそうです。私の周りでも子持ちで亡くなっている母親もいませんし、住んでる地域でもそんな都市伝説とか伝承とかもないので、これといって関連する手がかりはないままです。ただ 必ず公園の風景なので、昔 田舎の公園とかそういう所で起きた事件絡みなのかな?とも思ったり……。
手を繋いで寝ているのが効果的なのかわかりません。でも4日目からは再び公園の風景でやはり遊んでいる娘のそばに女性は現れるんですが、公園の外に立ってこちらを睨むだけで敷地内には入って来なくなりました。
そろそろ1週間経つ頃、私も寝不足気味だったので同じく見える とてつもなく霊感の強い職場の後輩(後の夫)にその話を持ち掛けたところ、私の足元を見て「最近その子ずっと憑いていますよね」と言われました。(※私の職場は見える、実家がお寺、祓えるなど様々ですが類は友を呼ぶと言いますか、何故か霊感持ちの人が多いのです)
実は女性が夢に出てくる少し前から私、娘と同じ4~5歳児くらいの女の子の霊体を何処からか拾っていまして。特に害がないのでずっと放置していたんですが、言われてみたら女の子が来た直後から公園の風景を見るようになっていました。女の子自体は悪意が強いわけでもなく、言うなら迷子に近い雰囲気だったので大して気にもしていなかった私ですが、もしかしたらと思い 彼に霊視で女の子と女性の関係を見てもらいました。私はてっきり、この女の子はあの女性の娘さんなのかと思っていましたが、彼が視たものは全くの別物でした。
「全然違いますよ。女性の方は、多分生きてる時に子供が産めない体質だったんじゃないでしょうか。昔の人みたいなので、子供が産めない事を理由にいびられていたのかもしれませんね。だからなのか、子供に執着が凄いみたいです。寝ている間に接触して連れ去る系なのは間違いなくて、ほら、たまに聞かないですか?寝る前は元気だったのに、眠っている間に急に亡くなるって話。表向きは原因不明だったり心臓麻痺だったりするんですけど、でもあれ、実際は魂ごと連れ去られて戻って来れなかったって事もあるんです。特に小さいうちは、凄く強い霊体だと霊魂ごと連れ去る事も出来ちゃうみたいなんですよね。そもそも生きてる人間を霊体が連れ去るって本当に出来るの?って話なんですけど、生きてる人間って幽体離脱した時に1本の線が肉体と幽体にくっついていて、まあ繋がっている部分は腹だったり頭だったり人それぞれですが……海外では『シルバーコード』って名前が付いているの、聞いた事ないですか?日本では『霊子線(れいしせん)』って言うんですかね。あれが途中で切られてしまうと、肉体離れしてしまって自分の身体に幽体が戻って来れないんです。つまり『死』って事ですよね。『夢』って大概は朝起きたら忘れるじゃないですか。でも時々目覚めても感覚まではっきり覚えている事ってあるでしょ?それって知らないうちに『幽体離脱』していることが多くて、その際に『シルバーコード』で肉体と幽体が繋がっていて、最後は目覚める時に戻ってこれる仕組みなんですけどね。……で、話を戻しますとその女の子も生前連れ去られた子の1人みたいです。連れ去られた先に、多分たくさんの子供達の霊魂が閉じ込められてると思うんですけど、その女の子だけ逃げたんでしょうね。女性はきっとその子を探していて、たまたま同じ性別で同じくらいの歳の娘さんに目を付けた……って感じじゃないかと思います。あと、公園って言ってましたけど、実在する公園じゃなくて、うーん、ゲーム風に例えるなら単純に『その女性のフィールド』って感じなんじゃないですかね。見えているのは公園の風景でも、実際は何もない空間だったり荒地だったり。小さい子供って遊べる所を好むと思うんで、連れ去りやすい場所が公園だったから公園の風景が見えてるんじゃないでしょうか」
つまるところ、娘は偶然逃げてきた女の子のとばっちりを受けているらしいのです。確かに霊体の女の子は常々怯えた顔はしていました。私がベッドの下で見た無数の子供達は やはり過去に同じように連れ去られた子で間違いなかったようです。ただこの先どうしたら娘から気を逸らしてくれるか、そこが問題でした。ーーー前回話した『叔父』の後半で出てきたネックレスに宿した小狐ですが、あの一件で消耗させてしまったので一度休ませてあげようと、ネックレスごと彼に返していました。あれから数ヶ月は経っていたので、彼は再び小狐を宿し直したネックレスを持ってきてくれたのです。「とりあえず回復はしたので、また様子見を兼ねて小狐で対応してみましょう。ただし今回は睡眠中なので、窒息しないよう首以外に巻いて身に着けさせてくださいね」と言われた私は、娘の手首にネックレスを巻いて一緒に隣で寝ることにしました。
うつらうつらしてくると同時に見える不気味な公園の風景も、数日経てば見慣れてしまいました。今夜の娘は砂場で一人、山を作って遊んでいます。私は砂場の横にあるベンチでしばらく娘の後ろ姿を眺めていたのですが、なんだか今日の娘の背中にだけ いつもと違う違和感を覚えました。寝る時に手を繋がなかったせいか、例の女性が娘の目の前にふっと現れました。やはり女性の視線は娘に注がれていて、私には見向きもしません。いつもはその場から動かない女性ですが、この時突然 娘に素早く手を伸ばしました。まずい、と私の中で警告音が鳴りましたが、距離的に私が割り込むのは不可能です。連れて行かれる!!と思ったのと、娘が動いたのはほぼ同時でした。正確には娘が、というより、遊んでいる娘の身体から暖色系の煙のようなものがフワッと浮き出て女性の手に絡み付き、鋭い悲鳴のような甲高い声がして、女性の手に小狐が噛み付くシルエットが見えました。小狐とは思えない、引きちぎるくらいの強い力で暴れる女性の手を噛みながら公園の外に引きずって行きます。公園の外は相変わらず真っ暗で、終始女性は暴れていましたが、その暗闇の中に飲まれるように引きずられて行きました。
ーーー本当に本当に、あっという間の出来事でした。遊んでいた娘は女性にすら気付いていないのか、砂をすくって呑気に遊んでいます。呆気に取られた私も我に返って娘を連れて公園を出ました。するとやはり目が覚めて、慌てて隣を見れば、娘はいつも以上に健やかに眠っていました。
後日「今回のは俺、話に聞くだけだったんで、小狐が対等にやり合えるか不安だったんですけど、引きずって外まで持って行けたなら大丈夫です!もう娘さんも夢の中で遭遇する事はないと思いますよ」と彼はほっとしたように言っていました。
そして本当にそれ以降、一度も例の女性と夢の中でも現実でも遭遇する事はなくなりました。逃げてきた女の子の霊体も、もう逃げて隠れる必要がなくなったのか、数日後には私の傍から居なくなってしまいました。何処に行ったのかも知りません。ちなみにその日娘は、同い歳くらいの知らない女の子と公園の砂場で楽しく遊んでいた夢を見たそうです。「あの子優しくて、凄く凄く楽しかったし、今日は怖くなかった」と起きた時 娘は喜んでいました。
ーーー悩む時間は長くても解決する時はこれまた呆気ないですが、以上がここ数年前に実際に体験したお話です。
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