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#戦国時代
眠狂四郎
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#戦国時代
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#軍師
眠狂四郎
153
ガラメールは夜陰に紛れ、わずかな供回りだけを連れて戦場を離脱した。
燃え落ちる陣営を一度だけ振り返る。
敗北――。
その二文字を胸に刻みながら、黒い森へ馬を進めていく。
同じ頃。
騎兵隊長ゲリダリクもまた、生き残った騎兵をまとめて戦場を脱していた。
誇り高きヴァルケン軍は、ついにガラリア侵攻を断念したのである。
本営では、王アテイラが静かに天幕へ戻っていた。
帰還する兵は皆、疲れ切った表情を浮かべている。
負傷兵のうめき声。
折れた槍。
血に染まった軍旗。
勝利の宴などあるはずもなかった。
「兵の再編は任せる。」
アテイラはそう言うと、軍師オルフェンスへ全権を委ね、自らの部屋へ入った。
椅子に腰を下ろすと、誰もいない部屋で静かに目を閉じる。
(……神託。)
雷神トールから授かった言葉。
――部族をまとめ、西へ向かえ。
その一言だけだった。
(俺は信じていた。)
(神なき土地を討ち、世界を統一することこそ神の意思だと。)
だが、現実は違った。
大軍を率いて西へ進み、多くの都市を蹂躙しながらも、最後には敗れた。
(違う……。)
(目的は、世界征服ではなかったのか。)
静かな沈黙が流れる。
アテイラは拳を握った。
(では、神は何を望んだ。)
(部族をまとめること……。)
(それだけで目的は果たされたというのか。)
(神の真意とは、何なのだ。)
その時だった。
「失礼します。」
天幕の幕が開き、ゲリダリクが姿を現した。
鎧にはまだ戦場の土がこびりついている。
「戻ったか。」
「はい。」
アテイラは椅子から立ち上がり、彼を奥へ招き入れた。
「報告を聞こう。」
ゲリダリクは一瞬だけ言葉を選び、ゆっくり口を開く。
「……妙なことが起きています。」
「妙なこと?」
「ガラリアの諸部族です。」
その名を聞いた瞬間、アテイラの眉がわずかに動いた。
「ほとんど戻ってきません。」
「何だと。」
「撤退命令は伝わっています。しかし、各部族の軍勢が本隊へ合流していないのです。」
アテイラは無言で地図へ目を落とした。
「別の場所へ向かっているのではないか、と。」
ゲリダリクの声は低い。
「確かな情報か。」
「まだ断定はできません。」
「撤退の混乱で散り散りになっているだけかもしれません。」
「ですが……数が多すぎます。」
部屋に沈黙が落ちた。
アテイラは地図の上に指を置いたまま、微動だにしない。
やがて、小さく息を吐く。
「……ふむ。」
胸の奥に、戦場で感じたことのない寒気が走った。
神託は終わった。
そう思った瞬間に起きた、この不可解な動き。
偶然とは思えない。
(まさか……。)
(部族をまとめたこと自体が、神の目的だったのか。)
アテイラはゆっくりと顔を上げた。
胸騒ぎは、ますます大きくなっていく。
その予感が何を意味するのか――。
まだ誰にも分からなかった。
一夜が明けた。
勝利を収めたグラン軍の陣営には、まだ歓声の余韻が残っていた。
兵たちは互いの健闘を称え合い、生還を喜ぶ。
だが、将軍たちに休む暇はない。
机の上には次々と報告書が積み重ねられていく。
略奪を受けた村や町はあまりにも多かった。
焼け落ちた集落。
奪われた家畜。
行方知れずとなった住民。
さらに、敗走したヴァルケン軍の残党も各地に散らばり、なお略奪を続けているとの報せが相次いでいた。
「勝って終わりではない。」
誰もが理解していた。
この戦いは、ガラリアを取り戻すための始まりにすぎないのだ。
軍議では、諸将の意見は自然と一致した。
「掃討戦へ移行します。」
「各地に兵を分散させ、残敵を排除し、住民を保護すべきです。」
「今回の勝利で、ヴァルケン側についていた部族も態度を変えるでしょう。」
「今こそガラリアを完全に取り戻す時です。」
ライナーも静かにうなずいた。
勝利は戦場だけで決まるものではない。
その後の統治こそが、本当の勝敗を決める。
やがて、現地を最も知る将軍アルミンが一枚の地図を広げた。
「各軍の担当区域です。」
彼は慣れた手つきで地図の上を指先でなぞっていく。
「あとは私の案内する部族長が、それぞれ現地まで導きます。」
アグリや各将軍は配置を確認し、それぞれの任務へ散っていった。
一方、ライナーとドルトスには別命が下る。
「お二人は総督府へお戻りください。」
アルミンが言った。
「現地行政の立て直しには、王自らの姿を見せることが必要です。」
ライナーは異論なくうなずく。
その時、ドルトスが尋ねた。
「街道は安全なのか。」
アルミンは少しだけ考え込むように地図へ目を落とした。
「念のため、人目につきにくい道を選びましょう。」
そう言って、一筋の細い道を指差す。
「こちらです。」
その先に記されていた名を見て、部屋の空気がわずかに変わった。
――トルトブルグ大森林。
ガラリア最大の深い森。
昼なお薄暗く、古くから旅人を飲み込む魔の森として知られている。
森を貫く街道は一本だけ。
そこを抜ければ、最短で総督府へ辿り着くことができた。
「ここなら敵も大軍では動けません。」
アルミンは静かに言った。
「少人数で進むには最も安全な道です。」
ライナーは地図を見つめ、小さくうなずく。
「では、その道を行こう。」
その決断に、誰一人として異を唱える者はいなかった。
だが、その場にいた誰も知らない。
トルトブルグ大森林が、
勝者となったライナーたちを待ち受ける新たな戦場になることを
コメント
1件
うわあああ読み終えたよ…!!😭💦 めっちゃ深い…!戦いに勝ったあとの“その後”がもうたまらん。ライナーたちは勝利したけど、残るのは焦土と復興の重み。それにアテイラの内面の揺れが切なくて…「神託の真意って何だったんだろう」って問いかけ、すごく心に刺さった。そして最後のトルトブルグ大森林が不穏すぎる…!勝者の道がまさかまた新たな戦場になる伏線とか鳥肌立ったよ…😭💕続きが気になりすぎる!!