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屋上に連れられ、私は今、パーソンにカッターを向けられています。あと数センチ、私が前に行けば目に刺さるでしょう。パーソンは手を震わせながら、私にカッターを向けている。ぶるぶるという擬態語よりも、がたがたという擬態語の方があっているだろう。
「ほら、早く刺しなさい。」
「っふー、ふーっ。」
喉がきゅーっとなる。
(パーソン…。パーソンは、絶対に刺さないよね…?)
「ふぅーっ、はぁー…。ふーっ、はぁっ…。」
パーソンは呼吸を荒くして、両手でカッターを持ちあげる。パーソンの目が段々涙目になる。
「ご、…ごっ…」
パーソンは、手をプランと下げる。カッターを片手でぎゅっと握ったまま、口を開く。
「ご”めんなざ”っ…。ひっぐっ。わ”、わた”しには”っ…、さっ…はっ…、サへっ…っ、刺せま”せ”んッッ…っ。」
パーソンは膝から崩れた。嗚咽と泣き声がその場を静かにさせた。
「ごめんな”さ”いっ…。ご” め”んな”ざいぃぃ…。」
その途端、パーソンが突然奇行に走る。なんと、カッターで自分の首に浅く切り傷をつけ始める。何度も、何度も、何度も、何度も。素早く動く手が段々カッターを強く握りしめる。涙を流しながら、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……。
「あ”ぁ”あ”ぁ”あ”ぁ”あ”ぁ”あ”!!!!」
「逃げるぞ…っ。」
「うんっ。」
三人組は駆け足でその場から走り去る。
「パーソンっ、パーソンっっっ!!!」
私はパーソンの腕を握るが、また離されてしまう。
パーソンの動きがゆっくりと止まる。
「は”ぁ”っ”…。あ”ぁ”…っ”。」
「っパーソン。落ち着いて。」
私の「吸って、吐いて。」という言葉にパーソンはあわせて呼吸をする。私はそう言いながら、パーソンの首を清潔なハンカチで押さえる。
「ご、ごめんなさっ…。マリー様っ。」
「いいのよ。ちょっとここで待っててくださる。保健室から包帯もらってきますから。」
私は駆け足で保健室に向かう。
「ジェリー先生っ。今すぐ包帯をくださいません?」
「ま、マリーさんっ!い、いいわよ。」
私はペコリと頭を下げて、すぐに包帯を手に取る。「失礼しました。」と言って保健室を出ると、歩幅をいつもより広くして屋上に走った。
「顔上げてくださる?」
「は、はい…。」
くるくると包帯を首に巻いていく。正確な包帯の巻き方なんて覚えていない。だから、とにかく傷が消えなくなるまで巻いた。
「できましたわっ。」
「あ、ありがとうございます…。」
パーソンは俯きながら感謝した。私はパーソンの背中を優しく撫でた。
「大丈夫よ、パーソン。大丈夫、大丈夫。」
そうすると、パーソンは私の胸に顔を埋め、泣き声を上げた。私もそれにつられて涙をポロポロと流した。
ー続くー
ご視聴いただきありがとうございました。