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あれは、中学生の頃だっただろうか。
旧いノートパソコンで兄に見せてもらった『ワールドエンド・ダンスホール』が
いつまでも消えてくれない。
あれから十数年経ったというのに一字一句違わず歌うことが出来る。
鬱屈としていた学生時代を送っていた私にとって、ボカロは青春だった。
この文は、夢に破れた青年の述懐だ。
はじめて私の作品にコメントをしてくれた貴女への謝罪と感謝の手紙だ。
きっと貴女にはもう、届くことはないのだろう。
私がボカロPを志したのは二十一歳の冬。
ノートパソコンを片手に予備知識などない状況からボカロ曲を作り始めた。
今思えば夢、というよりも現実逃避に近かったかもしれない。
職を失った私は、このやるせなさをどうにかしたかった。
鬱屈とした気持ちをどこかに吐き出したかったのだ。
試行錯誤を繰り返し、やっと完成させた曲はひどい出来栄え。
その時の私は恋する乙女のように盲目で、私の曲が見向きもされない現実を、しばらく受け入れることが出来なかった。
それでも私は曲を作った。
私には才能はなかったが、それでもボカロが好きだった。今も好きだ。だけどもうずっと、いい曲を聞くたびに胸が苦しい。
自分語りが長くなってしまった。彼女の話をしよう。
はじめてのコメントは今でも脳に焼き付いている。
《あなたはボクの神様です。》
たった一言、それだけ。
それがSUDACHIさんとの出会いだった。
彼女は私の投稿する作品に毎日感想をくれて、私のSNSにも返信やリツイートをかかさずしてくれて……正直、少し怖かった。
私の作品の何が彼女の琴線に触れたのか、正直今でも分からない。
それでもSUDACHIさんは、欠かさずコメントを残してくれた。
SUDACHIさんの地道な布教活動が実ったのか、Tiktokにあげたボカロ曲が
バズった。
鳴りやまない通知の音。
ポコポコ増えるコメント。
当時は心臓がバクバクしてよく眠れなかった。
SUDACHIさんは私がバズったことをまるで自分の事のように喜んでくれて、
ファンアートまで送ってくれて、なんとTiktokで私の作品のコスプレまでしてくれたのだ。
私は、夢を見てしまった。自分は有名ボカロPになれるのではないか、と。
それが蜃気楼の夢だとも知らずに。
色々なことがあった。
編曲家の方とある日ぱったり連絡が取れなくなったこともある。
私の作品がとあるボカロPのパクリだと炎上したり、良く分からないYouTuberこき下ろされたり無断投稿されたりしたこともあった。
一番の問題は数字だ。
結局、私の曲は最初にバズった曲以外は伸びなかった。
DTMを学び、有償でMVに依頼し、あらゆるSNSで拡散したがまるで効果がない。
きっと、私はあの作品で人生の運を半分使い込んでしまったのだ。
もう半分はSUDACHIさんに見つけてもらえたこと。
私にとってSUDACHIさんは深海の中に照らされた一筋の光だった。
SUDACHIさん。
あの時、曲とアカウントを全部消してしまってごめんなさい。
私は自分の事しか考えられない屑です。
ずっと謝りたかった。
もう何年も前のことだけど、SUDACHIさんのアカウントは消えてしまったけれど、それでも謝りたかった。
SUDACHIさん。
私はボカロPにはなれませんでした。
貴女の応援も、言葉も、自分の曲ごと全部消してしまった。
SUDACHIさん。
誰にも見向きもされなかった私にとって、貴女は神様みたいな人でした。
私は今でもボカロが好きです。
それでももう曲を作ることは到底できません。
どうか健やかでいてください。
どうか健やかでいてください。
私はあなたが暮れた光を頼りに、この深海で生きていきます。
コメント
1件
ああもうこれ…読んでて胸がギュッてなった😭💔 「あなたはボクの神様です」ってコメントから始まった関係が、最終的に自分を「屑」って言わせちゃう後悔の手紙になるの、切なすぎるよ…。特に「深海の中に照らされた一筋の光」って表現、SUDACHIさんへの想いと感謝がひしひし伝わってきて泣ける。 最後の「どうか健やかでいてください」が二回も繰り返されるの、本当に心から願ってるんだなって思った。届かないって分かってても書かずにいられなかったんだね。一曲だけバズった後の沈黙と葛藤、すごくリアルだった…これからどうなるんだろ、続き読みたいです🌸