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鮮やかな赤い色のラズベリーソースがかかったレアチーズケーキを前に、ふとテーブルの向かい側に目をやると、蓮水さんが小さめのデザートフォークでショートケーキを切り分けていた。
クールなスーツ姿とはあまりそぐわない、真っ赤なイチゴの乗ったショートケーキとのギャップに、萌えを感じて目を奪われてしまう。
その格好良さで、実は甘党だなんて……。思わず胸が、キュンとしちゃいそうで……。
「……ん? 何を見てるんだ?」
「……あっ、いえ、な、なんにも!」
ギャップ萌えに見とれていただなんて言えるはずがなく、レアチーズケーキをもごもごと口に放り込む。
──だけど、いくら見とれたところで、この人には息子さんも奥さんもいるんだよね……不意をついて、そんな思いが頭の隅をかすめる。
「……あの、まだ会社には戻られなくていいんでしょうか?」
無意識のうちにドキドキと高鳴る胸のスイッチを、どうにか切り替えられたらと、その場しのぎとも言える問いかけをした。
「ああ、かまわない。私は責任者に名を連ねてはいるが、今は実質的な経営権を担《にな》っているのは、社長である息子だからな」
「……そう、ですか…」
気持ちを逸らすつもりが、息子さんがいらっしゃるという現実を改めて突きつけられて、わけもなく落ち込みそうになる。
「……息子さんは、おいくつなんでしょうか?」
口の中に残るケーキをごくんと呑み下して尋ねると、
「26歳だ。会社の内情を早くから知ってもらいたかったんで、若い内に社長の座を譲ったんだ。もっとも私も経営陣としてまだ参加はしているし、年若い息子の周囲は優秀な陣営でしっかりと守っているからな」
息子さんと、そうして配下の方達を心から信頼しているんだろうなと感じられる答えが返った。
「……そうなんですね」と、頷いて、「……26歳と言うと、おいくつの時の息子さんなんですか?」やや気になっていたことを投げかけた。
確か42歳と話されていたはずだけれど、息子さんがその年齢だと、だいぶお若い時にご結婚をされたんだろうかとも感じた……。