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#普通
野々さくら
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ありあ
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救急車が走り去った後のZappには、重苦しい空気が残されていた。
先ほどまでの楽しかった雰囲気が嘘のように、辺りは静まり返っている。
「なんか、とんでもない事になっちゃいましたね」
朝陽が沈んだ声で呟いた。
美沙は俯いたまま、唇を噛みしめる。
「ごめんね・・・みんな」
震える声を絞り出し、深々と頭を下げた。
「私がみんなを
巻き込んでしまったばかりに
本当にごめんなさい!」
「ちょ!やめて下さいよ!」
さくらが慌てて美沙の肩に手を添える。
「あれは単なる事故だったんですから!」
朝陽もすぐに続いた。
だが、その言葉を信愛が遮る。
「いや、違う!」
「え?」
さくらが目を丸くした。
「それってどういう・・・」
朝陽が問いかけると、信愛はゆっくりと口を開いた。
「照明が落下する直前・・・霊を視た」
「え!?れ、霊!?」
美沙の顔から血の気が引く。
「あれは間違いなく霊でした・・・」
「って事は、さっきのは霊の仕業って事?」
さくらの問いに、信愛は少し考えてから頷いた。
「そうだと思う・・おそらくね」
「じゃあ白縫さんがこの前言ってた人縛霊?」
「確証はありませんが、可能性はあります」
「まじで・・・」
さくらが息を呑む。
朝陽は信愛へ視線を向けた。
「どんな感じの霊でした?」
信愛は記憶を辿るように目を細める。
「金髪のボブでデニムの
オーバーオールを着てた」
「金髪ボブで、オーバーオール・・・」
朝陽がその特徴を繰り返した、その時だった。
──カシャン!
突然、何かが床に落ちる大きな音が響いた。
その場にいた全員が、弾かれたように音のした方へ振り向く。
そこに立っていたのは、摩耶だった。
その顔は真っ青で、何かに怯えるように身体を小刻みに震わせている。
「摩耶さん?どうかしました?
震えてるみたいですけど?大丈夫ですか?」
信愛が心配そうに尋ねる。
「え、ええ・・・」
摩耶は明らかに動揺しながらも、小さく頷いた。
「そ、そうですか・・・」
信愛は腑に落ちない様子で摩耶を見つめる。
すると摩耶が、探るように尋ねた。
「と言うかさ?霊って何?
もしかして霊感あるとか?」
「ま、まあ、一応・・・」
信愛が曖昧に答える。
「もしかして美沙さんに頼まれたりした感じ?」
摩耶の問いに信愛は答えなかった。
その沈黙を見て、摩耶が小さく呟く。
「やっぱり・・・」
「摩耶さん?あなたは
大丈夫だって思ってるかもしれないけど──」
美沙が心配そうに声をかける。
しかし、その言葉を遮るように摩耶が声を荒らげた。
「だから大丈夫だってば!」
一同が息を呑む。
「摩耶さん・・・」
「私が大丈夫って言ってるんだから
大丈夫なんだってば!」
そう言い切る摩耶の声は、強気な言葉とは裏腹に、わずかに震えていた。
「でもね?摩耶さん?現にあなたを
庇って八乙女くんが怪我したのよ?」
「それは・・申し訳なく思ってる・・
けど、大丈夫だから・・・」
そう言い残すと、摩耶は逃げるようにその場を離れ、奥へと歩いていった。
その後ろ姿を見送りながら、信愛は小さく呟く。
「何かありそうですね」
朝陽も同意するように頷いた。
「何か隠してるって感じですね」
「確かにそうね・・・」
美沙も摩耶が消えていった方向を見つめる。
すると哲哉が、何かを思い出したように口を開いた。
「もしかしたら、タマちゃんの
前の元アシスタントの子かもね」
一同が首を傾げる。
「アシスタント?」
信愛が聞き返すと、美沙の表情が僅かに曇った。
「それって、前に自殺したっていう?」
「ああ・・・」
「じ、自殺!?」
朝陽が驚きの声を上げる。
美沙は静かに話し始めた。
「私は3年前から摩耶さんのマネージャー
やってるんだけどね、それより前に
アシスタントとマネージャーを
兼任していた女性が居たそうなの」
信愛の胸に、嫌な予感がよぎった。
「なんで自殺なんて?」
「それが分からないんだよ・・・」
哲哉が答える。
「分からない?」
「彼女はタマちゃんを、まるで
実の姉のように慕っていたんだよ」
哲哉はそこで言葉を切った。
何かを思い出すように、遠くを見る。
「それが急に・・・」
信愛はすぐに問いかけた。
「名前は分かりますか?」
「ああ・・・もちろん」
哲哉はゆっくりと、その名を口にした。
「名前は佐敷千秋」
「佐敷・・千秋・・・」
さくらが確かめるように、その名前を繰り返す。
哲哉は続けた。
「千秋ちゃんは、いつもオーバーオールを着ていてね
いつもタマちゃんの側について離れなかったんだ」
信愛たちの表情が、一斉に変わった。
金髪のボブにオーバーオール。
そして、自殺した摩耶の元アシスタントだった女性。
先ほど信愛が視た霊の特徴が一致している。
偶然とは思えなかった。
そして何より、霊の特徴を聞いた瞬間に見せた摩耶の動揺。
「大丈夫」と頑なに繰り返し、何かを隠すように立ち去った姿。
すべてが一本の線で繋がり始めていた。
信愛は摩耶が消えていった奥の通路へ、静かに視線を向ける。
「2人は本当の姉妹なんじゃないか?
ってくらいに仲が良かったんだよ」
そう語る哲哉は過去を振り返る。
コメント
1件
×××さん、今回もじっくり読ませてもらいました。 事故の余韻がまだ冷めない中で、信愛が「霊を視た」と切り出すシーン、一気に背筋が伸びましたね。金髪ボブ・オーバーオールというヴィジュアルが、哲哉さんの語る佐敷千秋さんの姿とぴったり重なって、ゾッとしました。そして何より、その特徴を聞いた瞬間の摩耶さんの動揺――「大丈夫」を繰り返すほど実は大丈夫じゃない感じが、すごく生々しくて……。 過去に自♡♡♡た女性と、今の摩耶さん。信愛が視た霊。この三つがどう絡むのか、めちゃくちゃ気になります。伏線がじわじわ効いてくる構成、さすがです。続き、楽しみにしてますね!