🏗️ シーン1:コア建造開始
塔の最上階よりもさらに奥、
“都市の鼓動”を制御するための区画――そこに、最終コアユニットが設置される時が来た。
「さぁて……いよいよやな。ここが街の“心臓”になる場所や」
ケンチクがゴーグルを額に乗せ、作業ジャケットの袖をまくった。
日焼け肌の額には汗、だがその目には興奮の色が宿っていた。
「中枢のフラクタルバランサー、安定軸に置くなら、ここの三点で支えよう」
アセイがホログラムを起動する。黒髪を後ろで束ね、銀縁の眼鏡がホログラムの青を映している。
白と青の設計スーツは細かい修正コードが浮かび上がる最新仕様だ。
空中に浮かぶ設計図――
その中心には、まるで心臓のように脈打つ青い球体が据えられていた。
「コアユニット《律核》(りっかく)――この街に生きるための脈を与える」
🔧 シーン2:バランサー設置
処理チームの三人も現場に待機していた。
ゴウが重機型のアームを担ぎ、構造杭を抱えている。
「よっしゃ、塔の下から支えてやるっぺ!絶対に傾かせねぇぞ!」
ギョウがスキャナーをかざし、リアルタイム解析を続けていた。
「地熱ライン、安定。内部圧も問題なしっぺ。これは、過去最高精度のバランス構造になる」
キョウはすでに杭を3本打ち終えていた。
「……バランサー起動、準備完了」
すずかAIの声が響く。
「バランサーの同期信号、全系統一致。
設計者ふたり、起動コードを」
ケンチクとアセイが同時に指を走らせる。
《BALANCE_CORE = ACTIVE》
《SYNCHRO_Δ = MATCHED》
《FRACTAL_HEART = BOOTING》
中央の青球体が光を帯び、都市中のラインが淡く震えた。
まるで、街が“鼓動”し始めたかのように。
🎇 シーン3:試験、そして共鳴
「すずか、最終テストいけるか?」
「はい。これより“街の自律判定”を行います。
条件:バランス持続/エネルギー循環/構造応答」
ホログラムに次々と数値が流れ、塔の中枢が脈打つ。
碧素ラインが一斉に起動し、塔全体が青白く輝く。
ケンチクが唇を震わせる。
「……きれいやな」
「……うん。でも、これはただの設計じゃない」
塔は、音を立てて響いた。
“律”――音の名を持つコアが、街と呼応するように共鳴し始める。
風が通り、振動が起こり、建物たちが静かに「応えた」。
すずかAIが低く、しかし確信に満ちた声で告げた。
「都市機能、完全起動。
以後、この都市は“共鳴構造型フラクタル都市《碧律-09》”として、独立稼働します」
🌃 シーン4:静かなる夜にて
夜。中央塔のてっぺん。
ケンチクがゴーグルを外し、手すりに寄りかかっていた。
「アセイ……お前のおかげで、ワイも前に進めたわ。失敗した街の記憶に、ようやく勝てた気がする」
「それは違う。僕も、君の直感と執念がなければ、この都市を描けなかった。
……これは、ふたりの設計だ」
塔の下では、建物たちが互いに呼吸を合わせるように光り、
まるで“街そのものが合奏”しているようだった。
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