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#玉座がメインヒロイン
#漫画原作希望
「おう、おやじ! あいてっか?」
毎度おなじみ流浪のサキュバス、メリッサが来店した。
飲み屋感覚で、ふらりとネコ科フェにやってくる。
店が開いていようが閉まっていようが、気にせず入店してくるのだ。
活発女子という表現がピッタリかもしれない、メリッサのファッション。
白いシャツに、紺のブルマという装い。女子高生の戦闘服『体操着』だ。
メリッサは、体操着を借りパクしたのだろうか。
『まるれいん』と書かれた布が、シャツの胸元に縫いつけられている。
着衣に慣れないメリッサは、ブルマをグイグイ引っ張りV字状態のハイレグから超ハイレグへ。最終的に股間あたりを超V字からIの字へと変えていた。
レンタロウの思ったとおりだ。
来店客の視線は、メリッサに向いている。
「ラジオ体操の最終形態か?」
「ブルマが股に食い込んでいてぇ!」
メリッサは言いながら、脱いだブルマをレンタロウに渡した。
「連たんにやるから、ちゃんと穿けよな!」
「失敬だな、ブルマなんて穿くわけないだろ! ちゃんと被るわ!」
「連たん。そんなことより、メリッサのココをみてくれ!」
メリッサは、今日も自慢げに新作のバンソウコウを大股開きで見せびらかしてくる。
「透明のヤツじゃねえか! 具が見えてんだよ!」
「貼ってんだからいいだろ?」
メリッサは貼っていると言い張る。
体がヌメっているせいかバンソウコウが取れかけている。
もはや全裸と言っていい。
「もういいよ……。はい、メニュー。注文が決まったら呼んでな」
「これにすっぞ」
あいかわらずメリッサは諦めが早い。
注文も早かった。
「だからね……メニューに挟まって死んでる虫だから……」
開店当初からメニューに虫が挟まりっぱなしなのは、レンタロウ自身もどうかと思っていた。
「んじゃ、これにすっぞ!」
「ページ番号だから……」
「じゃ、これ!」
メリッサの視線は、レンタロウの股間にロック・オンしている。
このポンコツ系サキュバスは、とにかくレンタロウの股間にちょっかいを出してくる。
サキュバスの性分だから仕方ないと、レンタロウは諦めていた。
メリッサとの恒例のやり取りだが、いつもと違うところがある。
女騎士のアデルがいないことだ。
忙しいようだ。最近はあまり顔を出さない。
アデルがいないとメリッサを制止してくれる人がいなくて非常に困る。
そんなメリッサは、アデルの代わりに空気嫁の『カタクリ子DX』を連れてくる。
えらく気に入った様子で、いつも脇に抱えて歩いているのだ。
メリッサが可愛がっているおかげか。
カタクリ子DXの顔面偏差値が、5くらい上昇したように見える。
おっと、お客さんか?
鉄扉の開く重々しい音に振り返る。
「いらっしゃいま……。なんだ。ボブ子か」
「取引先兼お客さんに向かってなんですか、その言い草は!」
ボブ子は、レンタロウがこの世界にきて日も浅いうちに知りあったホワイトゴブリン族の少女だ。
今日もカウガールスタイルでキメている。
本名は『アシュリン』だが、ボブ子という呼びかたが定着してしまったらしい。
今では、だれもアシュリンと呼ばない。
というか、彼女の本名を皆が忘れている。
「はい、これ。スライムです。小ぶりですけど、いいのが獲れたので持ってきました」
ボブ子は|頭陀袋《ずだぶくろ》から取り出したスライムをそっとテーブルに置いた。
赤と黄のスライムは魔力回復と体力回復用だ。
隣に位置するハミデール王国に、ボブ子は住んでいる。
週1くらいのペースでスライムを持ってきてくれるのだ。
「いつも悪いね。で、この虹色のやつは?」
「毒です。よかったら味見してください」
顔を赤らめたボブ子が、禍々しいオーラと臭いを放つスライムを差し出してくる。
「今日ってバレンタインデーだっけ? 告白か?」
「殺人予告です。私は人間が嫌いなんで。特に連太郎はアレなんで」
「まあ、殺意の裏の裏は愛情ともいうからな」
「それ、殺意ですよ……。ところで連太郎。何か必要なものはありますか? 視力回復、古くなった角質、上司との確執を除去する成分が入ったスライムもありますよ?」
「どれも必要ないな。そういや、スライムって何種類くらいあるんだ?」
「正確な数はわかりません。数百はあるんじゃないですか。スライムには――」
「おう、ボブ子たん。元気か?」
目を細めたメリッサが、超高速でボブ子に向かって手を振りたくる。
「はう! 空飛ぶワイセツ物!」
スライムの話に夢中になっていたボブ子。
とっさに怪物を迎え撃つヒーローみたいなポーズを取ってワイセツ物を威嚇する。
メリッサは天井に頭をこすり付けながら、宙を移動してボブ子に近づいてくる。
「おい! だきつくな。なんかヌルヌルする……」
ヌメったメリッサから逃れようと、引きつり顔で必死にあらがうボブ子。
「保湿ローションとかいうやつだぞ。時間が経つと乾いてガビガビになるけどな」
「メリッサは仕事帰りなのか?」
「おう! 客をヌルヌルにしてきたぞ!」
メリッサがなんの仕事をしているかは不明だ。
髪の乾き具合からして、な業務用ローションだろう。
「ワイセツ物さん。どうでもいいですけど、その頭はなんですか? ノコギリクワガタですか? 寝起きの魔王ですか?」
メリッサは普段ツインテールにしている。
下がっているはずのテール部分の髪が、上を向いて固まっている。
へんてこな飴細工、楽器の音合わせなどに用いる音叉にも見える。
月に数回、美少女ふたりのヌルヌルプレイが開催されるため、メリッサとボブ子めあての男性客が急増した。
ネコそっちのけで、今日もお客さんの視線は美少女らに向いている。
まったく、ここはネコ科フェだってのに……。
いっそのこと、ヌルヌル・メイドカフェに改装したろかと思うほどだ。
「連たんもヌルヌルしようぜ!」
「野球やろうぜ! みたいに言ってくれるけど、さっきからお客さんの視線がチクチク刺さっている。針治療なら体が軽くなってるだろうに……。そんなわけで、ボブ子。接客を代わってくれまいか?」
「いやですよ。私は人間が苦手って言ってるっしょ? 高貴なホワイトゴブリン族の私が人間の相手をしろと?」
「なあ、ボブ子たん。連たんもいちおう人間だぞ?」
「そいつは極上の魔虫なんで」
「連たんが魔虫なら、ほかの客はゴミ虫だな! 昼間っから風俗店に来てんじゃねえ! 働けこのゴミどもが!」
メリッサの言葉に、頬を赤らめる男性客たち。
いや、一応はカフェなんだけどね、この店……。
極上の魔虫扱いされた男性客が、羨望のまなざしをレンタロウに向けてくる。
今日の客層は微妙な感じだ。
もう閉めようかな……。
「連たん、スライム狩りにいこうぜ! ひと狩りいこうぜ!」
思案するレンタロウに、メリッサが笑顔を向ける。
「ナイスだメリッサ。今から行こう!」
「ちょっと、お店はどうするのですか? お客という名のゴミ虫どもは放置か!」
お客さんのコーヒーを啜っていたボブ子が、声を荒らげる。
「きょうは店じまいだ。チーターのキヨコがいるから問題ない。メリッサ。バンソウコウをはがしてお客さんを気絶させろ。悶絶させろ。その隙に僕は逃げる!」