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しかし一作目がベストセラーとなった直後、天狗になっていた桜子は当時の担当編集者に生意気な口を叩き、彼に叱咤されたことに腹を立て、自信のXに担当の愚痴を書いて投稿した
そしてその投稿が担当の目に入り、桜子の二作目の出版枠は、その翌年の公募で新たに賞を受賞した人物へと渡っていった
作家が自分の意思で編集担当の愚痴は書けても,編集側は絶対作家の悪口などはSNSに書けない、しかし、「SNSに対して承認欲求が高いモンスター作家」のブラックリストはどこの編集部も持っていて、またそれは共有されるため、みごと桜子は出版局が相手にしない、モンスター作家のブラックリスト入りされた
愚かなことに桜子は気づいていなかったのだ、公募は毎年開催され、才能あふれる新人作家が、まさに鮭が滝を登るように世へ排出され続けているという当たり前の事実に、すべての作家に等しく巣食う、あの錯覚――「自分だけが特別な才能を持った天才」という思い込みに桜子もまた深く囚われていた
そして今の現状は、謙虚になることを忘れたプライドだけが高い・・・底辺作家に陥ってしまっていた
桜子は憂鬱な気分で9月の「小説教室」を開催していた、カルチャーセンターの蛍光灯は今日も、妙に白々しく安っぽい合板の机と椅子の列を照らしている、窓の外では、隣接しているフ―ドコートで、家族連れが幸せそうに団欒を楽しんでいるというのに
桜子は退屈でうっとおしい生徒一人一人の机の間を行ったり来たりしながら、彼らが彼女が作成した「キャラクター設定用紙」に何かを書き込んでいくのを眺めていた
どいつもこいつも、ひと昔前の桜子のように、自分は面白いものを書けてベストセラー作家になれると思い込んでいる、桜子はその顔つきを見るたびに、鏡を見ているような・・・それでいて他人事のような、奇妙にざらついた感覚を覚えるのだった
「せんせ~い、あたしって書いているとキャラクターが勝手に動き出すんですよね、だから今、物語が始まっていないのにキャラなんか考えられないわ」
声の主は、いつも一番前の席に座る、自分の子供の日常の日記をアメブロに綴っているだけなのに、なぜ自分がそれで教育番組のレギュラーコメンテーターになれないのか分からないと豪語する「ブロガー主婦」がそう言った、桜子は職業的な微笑みを顔に貼り付けた
ニッコリ・・・「おっしゃる通りですね、浮かばなかったら無理して書かなくてもいいですよ」
「はぁ~い♪今夜ブログを書いたら思いつくかもぉ~♪」
ブロガー主婦は満足げに、キャラクター設定用紙の余白にハートマークをらくがきし出した
「桜子先生!キャラクターってどこまで設定するんですか?僕は音痴だけど歌が好きな主人公にします!乱暴者でそんで21世紀からロボットがくるんです!」
―それはドラえもんのパクリでしょ、このバカ―
喉元まで出かかった言葉を、桜子は長年の訓練で優等生の善人を装って飲み込んだ、声の主はいつも郵便局の制服のまま教室に来る青年で、痩せ細った体つきでガリガリの藤子・F・不二雄になりたいのだと、以前熱っぽく語っていたのを桜子は思い出した
彼のキャラクター設定用紙には、几帳面な字で「未来」「友情」「勇気」といった言葉が並び、その隣に稚拙な線画のロボットが描かれていた
空音
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シュメール
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コメント
2件
生徒に対して色々と思いつつ…現実は日々食べて行かなくてはならないもんね 桜子自身は次の自分の作品書き進めてるのかな🤔
うわあ、第5話……なんか切ないですね。桜子さん、あれだけ天狗になってたのに、今はカルチャーセンターで「ドラえもんのパクリだろ」って内心ツッコミながら笑顔で対応してるの、哀愁がすごい。あの「ブロガー主婦」の生徒と郵便局の青年、どっちもどっちで地獄ですね。現実って、一度滑り落ちると這い上がるの本当に大変なんだな……って思わせる回でした。