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霊貴冥孤こと汀ひなたとの面会から数日後。
怪異探求倶楽部の部室には、どこか妙な静けさが漂っていた。
信愛が姿を見せなくなって数日。
たった一人欠けているだけのはずなのに、部屋はいつもより広く、どこか寒々しく感じられる。
窓から差し込む昼下がりの光を眺めながら、茜はぽつりと呟いた。
「なんか部室が広く感じるよね・・・」
さくらは苦笑しながら肩をすくめる。
「まぁ、まだ休んでるからね」
焔垂は腕を組み、険しい表情を浮かべた。
「教団の連中はどう動くつもりなんだろうな」
朝陽も静かに頷く。
「信愛先輩を連れ去って以来
目立った行動を取る気配がないですもんね」
その言葉に、茜は深いため息を漏らした。
「はぁ〜・・・」
落ち着かない。何をしていても胸の奥がざわつく。
「馬場さんたちが調べてくれてるのを
ただ待つことしか出来ないなんて」
焔垂は淡々と言った。
「仕方ねーだろ」
そして少し自嘲気味に笑う。
「未成年なんて、取材する上での
足手纏いでしかないからな」
茜は頬を膨らませた。
「はぁ~、自分の年齢が嫌になるよ」
冗談めかして天井を見上げる。
「なんか一瞬で年齢が18になる
魔法みたいな能力ないかなぁ〜
そうすれば一瞬で成人出来るのにさ~」
焔垂は苦笑した。
「まぁ、気持ちは分かるわ」
しかし茜の表情は晴れない。
「あーもう、なんか色々情報増えすぎて
頭の中がメガドライブ〜」
「いやどんな表現だよ!」
焔垂は薄ら笑いを浮かべながらツッコむ。
そこへ、不意に部室の扉が開いた。
「ちょっといい?」
談笑していた空気が止まり、一同が入口へ振り向く。
入ってきたのは美月だった。
茜は椅子から身を乗り出す。
「ああ、美月ちゃん、どうかした?」
美月は少し言いづらそうに口を開いた。
「いやね、ほら、最近白縫さん休んでるでしょ?」
茜は苦笑いを浮かべる。
「あ、う、うん・・・そうだね」
「何か聞いてない?」
焔垂が答える。
「親御さんから連絡あったんじゃ
ないんですか?確か風邪でしょ?」
そう。信愛はこの数日間、風邪を引いたという嘘で学校を休んでいた。
「いや、それはそうなんだけど」
美月は視線を落とした。
「もう5日も休んでるし、ちょっと心配でね」
少し間を置いて続ける。
「あとほら、月曜が祝日だから、次に
登校してくるのは火曜日になるでしょ?
だから仲良いあなたたちなら
何か知ってるんじゃないかと思ってね」
その瞬間、茜の肩がぴくりと震えた。
「いや、わ、私たちは何も知らないよ、うん」
焔垂が鋭く横目で見る。
「明らかに動揺すんな」
美月も違和感を覚えたように眉をひそめた。
「何か知ってるの?」
茜は視線を泳がせる。
「あ、いや・・・」
朝陽が静かに口を開いた。
「美月先生になら話してもいいんじゃないですか?」
焔垂も頷く。
「まぁ、それもそうだな」
美月は真剣な眼差しで茜を見つめた。
「え?何かトラブル?」
茜は観念したように息を吐き、小さく唇を噛む。
「いや、それがね・・・」
◇ ◇ ◇
一同はこの数日間の間に起きた、身の回りの出来事を美月に話して聞かせた。
話を一通り聞いたみ美月は明らかに動揺している。
「ちょ、ちょっと待って!話の規模が
大きすぎて理解ができない!」
そんな美月に焔垂は苦笑いを浮かべる。
「まぁ、だろうな・・・理解しろ
って方が無理あるしな・・・」
「一旦整理するわね?」
◇ ◇ ◇
美月は皆から聞いた話を整理する。
信愛の母・銚子はかつて『御船愛子』という名前で活躍していた有名な霊能者だった。
そんな銚子は天縁教団によって、インチキ霊媒師の烙印を押され、迫害された経験があった。
その天縁教団は修理固成を実現させようとしている可能性が極めて高く、更にそれに銚子の何かを利用しようとしている可能性も高い。
その陰謀に巻き込まれる形で信愛は、天縁教団関係者に拉致された。
しかし佳苗と千歳の助けにより、監禁場所から脱出できた為、無事に済んだ。
しかも更には、皆が追い詰めた詐欺師・霊貴冥孤は天縁教団の現役幹部だった。
また、霊貴冥孤の詐欺は天縁教団上層部からの指示だった。
◇ ◇ ◇
一通り整理終えた美月は額を掌で覆う。
「こ、こんな感じ?」
美月の問いに、焔垂は静かに頷いた。
「はい、その通りです」
美月はしばらく言葉を失い、やがて小さく呟いた。
「まさかそんな事が・・・」
そして、ある考えに至ったように顔を上げる。
「あの霊貴冥孤が教団の幹部だったなんて
なら、白縫さんの事が教団の人間にバレたのは
あの新聞記事が原因だったって事なの?」
焔垂は慎重に言葉を選びながら答えた。
「そこまでは分かりませんけど」
一拍置いて続ける。
「今まで何の動きも見せてなかった教団が
急に動き出した事を考えると
そう考えるのが妥当だとは思います」
その言葉を聞き、美月は力なく目を伏せた。
「まさか・・・あれがキッカケだったなんて」
苦しそうな表情のまま、ゆっくりと頭を下げる。
「ごめん・・・みんな」
茜が慌てて首を振る。
「え? 何で美月ちゃんが謝ってんの?」
さくらも不思議そうに頷いた。
「そうだよ」
しかし美月は自分を責めるように呟く。
「いや、私がみんなに霊貴冥孤の事相談したから」
その言葉を遮るように、朝陽がきっぱりと言った。
「それは違いますよ」
焔垂もすぐに続ける。
「そうっスよ」
少し笑みを浮かべながら、美月を真っ直ぐ見据えた。
「てか、あれは俺らが強引に動いた結果ですし」
茜も大きく頷く。
「そうだよ、美月ちゃん」
さくらは優しく微笑みながら言葉を添えた。
「信愛やお母さんだって、きっと同じ事言うと思う」
その一言に、美月の目にはうっすらと涙が浮かぶ。
「みんな・・・ありがとう」
部室に、少しだけ重苦しい空気が和らいだ。
だが、美月の表情はすぐに真剣なものへ戻る。
「でも、そんな状況になってるんなら
まず私に相談して欲しかったわ」
焔垂は申し訳なさそうに頭を下げた。
「すいません」
美月は続ける。
「もしかしたら教団の人間が白縫さんの
親族だって身分偽って語って学校に
来る可能性だってゼロじゃないでしょ?」
その可能性に気付いた茜は、思わず身を乗り出した。
「あ! 確かにそうか!」
コメント
1件
お疲れさまです、×××さん。今回のエピソード、読ませていただきました。 部室の静けさから始まる空気感がすごく伝わってきて、信愛さんがいないだけでこんなに違うんだなって切なくなりました。茜ちゃんの「メガドライブ」には思わず笑っちゃいましたけど、それもみんなの不安や焦りの裏返しですよね。 美月先生に話を打ち明ける場面、特に「私が相談したから」と自分を責める美月先生に、みんなが「違う」と返すシーンがじんと来ました。さくらさんの「信愛やお母さんだって同じこと言うと思う」って台詞、すごく優しくて、あの場の空気が少し和らいだ感じが伝わってきます。 教団が学校に来る可能性に気づくラストも、ゾッとしました。続きが気になります!
#普通
野々さくら
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ありあ
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