耳鳴りが、止まない。
頬に、背中に、手に、流れる汗が、止まらない。
つー、と線を作って流れる度に、全身の気力が一筋毎、失われてゆく。
絶望の鐘が、
止まない。
眼前に唐突に置かれた現実から目を背けて、何も見ないふりで立ち去ってしまいたいのに、縫い留められたように動かない足が、そうすることを許さない。
目を逸らすことが、
できない。
「――瑞希だろ? 驚いた、久しぶりだな」
名前を呼ばれた瞬間、ぶわっ、と、身体の中の水分が蒸発した。
失調なのか、酸欠なのか、そんなことは最早、些末なことで、ただどうしようもないくらい息が苦しく、意識が混濁する。
目の前の人間が誰なのか認識しているはずなのに、網膜が理解を拒絶し、言語を棄却する。
身体の向きを変えて、ゆっくりと近づいてくる足音に、身体中の血液が逃げ惑うように逆流していく感覚がする。
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