テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「うわぁ…………めちゃめちゃ広いお部屋だねぇ……! それに、サックス? あんな大きいサックス、初めて見たよっ」
初めて招かれた奏の住まいに、美花は大きな薄茶の瞳を見張らせながら、ショーケースに近付いていく。
「一番大きいサックスは、バリトンサックス。主に低音部分を演奏する楽器だよ」
「さすが、元吹奏楽部っ! あ、そうそう、あの箱型の部屋みたいなのは何?」
「あれは防音ユニットで、箱型の防音室だね。あそこで怜さんがサックスの練習をしてるよ」
「おおぉっ……れいチェル、今もサックスを吹いているんだねぇ」
音楽に溢れた住まいは、美花の好奇心をくすぐり、部屋中をつい見回してしまう。
そこへ、リビングのドアが開く音がして、奏のフィアンセ、葉山怜が入ってきた。
「美花ちゃん、いらっしゃい」
爽やかな笑みを深めている怜は、くたびれた黒いTシャツとベージュのチノパンツに、ハヤマのロゴが入ったエプロンを纏っている。
「ハハハッ! いきなりこんな格好で入ってきて、美花ちゃんビックリしてんな」
「あっ…………こんにちはっ! お邪魔してますっ」
まさか怜がいるとは思わなかった美花が、僅かに瞠目させ、慌てて頬を緩めた。
「怜さん、ハヤマで営業課長と掛け持ちで、管楽器リペアラーをやってるの。リビングの他に、部屋が三つあるんだけど、そのうちの一部屋がリペアの作業部屋で、今日は朝から急ぎの仕事をしてるんだよ」
(ん? 管楽器リペアラー?)
美花は、初めて聞く言葉に、頭の中がクエスチョンマークで覆われていく。
この前、二人が店に来た時、怜から名刺を渡された時は、おにーさんと違う名刺って事しか頭になかったけど、改めて考えてみると、どんな仕事なんだろう? と疑問が湧き上がった。
「あのぉ……管楽器リペアラーって…………何ですか?」
「トランペットやサックスなどの管楽器を修理したり、奏者が楽器を吹きやすいように調整したりする仕事だよ」
「うわぁ…………すごいですねぇ……」
美花の質問に、怜が分かりやすく説明してくれた。
「あっ! そうそう……!」
美花は手にしていたペーパーバッグに気付き、奏に差し出した。
「かなチー、れいチェル。かなり早いけど…………これ、私からの結婚祝いだよ。おめでとうございますっ」