テラーノベル
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人は、大切な人を失ったとき、どれほど理性で否定しようとも、一度は願ってしまう。
もう一度だけ、あの人の声を聞きたい。
その願いは、悲しみが深いほど強くなる。
だからこそ、人は奇跡を求める。
ここを訪れた女性もその一人だろう。
金の装飾が施された仮面で素顔を隠し、白装束を身に纏った、霊能者と思しき女性は、依頼人の目をまっすぐ見る。
「あなた・・・」
向かいに座った女性は、静かに目を閉じたまま呟いた。
やがて、ゆっくりと瞼を開く。
「お子さんがいらっしゃいますね・・・」
依頼人の女性は肩を震わせ、戸惑いながら頷いた。
「は、はい・・・」
女性はまるで誰かの姿を見ているかのように、何もない空間へ視線を向ける。
「上の子がタカシくん──」
一拍置き、さらに続けた。
「それから──下の子がマナミちゃん」
依頼人は息を呑み、目を大きく見開いた。
「!!!!!!」
信じられないという表情のまま、震える声を漏らす。
「ど、どうしてそれを!?」
女性は穏やかな口調を崩さない。
「しかしお部屋の中は随分と散らかってる様ですね」
「え?」
思わず聞き返した依頼人に、女性は優しく微笑む。
「お一人で頑張って来られたんですね
私にはわかりますよ・・・」
依頼人は混乱したまま首を振る。
「な、何でそんな事まで分かるんですか?」
女性は静かに言葉を紡いだ。
「交通事故により亡くなられた貴方の亡き旦那様が」
少しだけ間を置く。
「あなたの手を通して私に教えてくださいました」
「しゅ、主人が!?」
女性はゆっくりと頷いた。
「旦那様、マコト様は
貴方をいつも近くで見守ってくれています」
依頼人の瞳から涙が零れ落ちる。
「主人が・・・ぐすっ」
嗚咽をこらえながら問いかけた。
「主人は何と?何と言っているんですか?」
女性は目を閉じ、耳を澄ませるように沈黙する。
しかし、その表情がわずかに曇った。
「申し訳ありません・・・」
依頼人の胸に不安が広がる。
女性は静かに頭を下げた。
「死者との交信は一日の時間が決まっておりまして
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
もうその時間が経過してしまいました」
「そ、そんな・・・」
希望を失ったように肩を落とす依頼人へ、女性は柔らかな笑みを向ける。
「ですがまた日をあらためてこちらにいらしてください」
依頼人は涙を拭いながら尋ねた。
「その時に・・・主人の言葉を?」
「はい・・・もちろんです」
女性は穏やかに頷く。
「私が代弁してさしあげます」
そして誇らしげに胸へ手を当てた。
「私は冥府の王ハデス様より
力を授かった代弁者ですから」
依頼人は深々と頭を下げる。
「ありがとうございます」
もう一度、感謝を伝える。
「ありがとうございます」
女性は営業用の笑みを浮かべたまま、丁寧に一礼した。
「ではまたのご利用をお待ち申し上げております」
コメント
1件
読ませていただきました。最初の「もう一度だけ、あの人の声を聞きたい」という一文に、もう心を掴まれました。依頼人の女性が子どもの名前を当てられたときの驚きと、その後の涙——悲しみの深さがひしひしと伝わってきて胸が締めつけられました。でも最後の「ハデス様より力を授かった代弁者」という台詞で、ふと冷めた気持ちにもなって。この霊能者、本当に力があるのか、それとも巧妙な商売なのか……続きが気になります。×××さん、繊細な心理描写と、読者を考えさせる余白の作り方がとても上手いですね。次話も楽しみにしています🌷