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町の外れに、「ミラ」という人物が住んでいました。
ミラの仕事は、少し変わっています。 それは「色を見る」こと。
人でも、モノでも、この世界のあらゆるもの。 ミラは毎日「色」を観察し、その意味を人々に教えていました。
そんなある日のこと。 ミラのお店に、一人の女の子がやってきました。
「ミラさん、ミラさん。聞きたいことがあるの!」
女の子は白いウサギを抱え、目をキラキラさせて身を乗り出します。
「おや、なんですか?」
ミラは穏やかな口調で答えました。 女の子の名前は、近所に住む「ユリ」。 抱えているのは、最近飼い始めたばかりのウサギです。
「あのね。私が飼っているウサギさん、色が茶色いの。私は白いウサギさんがいいんだけど、どうすればいいのかな?」
ユリはどうしても、自分のウサギを白くしたいようです。 ミラは静かに問いかけました。
「どうして、白いウサギさんがいいのですか?」
ユリは答えます。 「学校の友達も、みんな白いウサギを飼っているの。だから、私のも白くしたいの」
ユリは腕の中のウサギをじっと見つめました。 ウサギの鼻が、ユリの体温を感じてピクピクと動きます。
ミラはその様子を笑顔で見つめ、優しく語りかけました。
「そのウサギを白くすることは、私にはできませんねぇ。ユリ、あなたはどうしても色を変えたいのですか?」
「……うん」
「それは、とても難しいことです。他の誰かなら、毛染めのように脱色することはできるかもしれません。でも――」
ミラは窓の外、広がる空の色を見つめて言いました。
「それって、本当に意味があることでしょうか?」
「え……?」
「例えば、ユリ。あなたの色が他の子と違うからといって、ご両親があなたの色を塗り替えようとしたら、どう思いますか?」
ユリはハッとした表情になり、腕の中のウサギを見つめました。
「ユリは、ユリのままでしょう?」
ミラの声は、春の光のように柔らかく響きます。
「あなたのご両親は、あなたがこの先、白くなっても、赤くなっても、黄色になっても。変わらずあなたを愛し続けるはずです。もちろん、私も同じですよ」
「…………」
「そして、それはユリも同じではないですか? そのウサギ、あなたにとても懐いているように見えますよ」
ミラはユリの瞳を覗き込みます。
「だから、色を変えることは、あなたにとっても、この世界にとっても、あまり意味がないことのように思えるのです」
ユリは、腕の中の茶色いウサギをぎゅっと抱きしめ、笑いました。
「うん……わかった。ありがとう、ミラさん!」
ユリは元気よく返事をして、光の中へと駆け出していきました。