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#普通
野々さくら
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ありあ
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銚子桃子は静かに坪野を見つめた。
その瞳には責める色はない。
ただ、一人の人間を見つめるような、穏やかな光だけが宿っていた。
「私が思うに、あなたは──」
少し間を置いて、言葉を続ける。
「この世界と人間を、誰よりも嫌い
そして誰よりも愛していた。そんな人だと思うわ」
坪野は目を丸くした。
「誰よりも嫌い・・誰よりも愛した?この私が?」
思わず吹き出すように笑う。
「わははは」
だが、その笑いはどこか寂しげだった。
「そんな訳ない」
俯き、小さく呟く。
「私は──」
銚子は優しく問い返した。
「あなたはね?」
そして静かに口を開く。
「『坂本龍馬』になろうとしたんじゃないかしら?」
坪野は首を傾げる。
「坂本・・・龍馬?」
銚子は頷いた。
「坂本龍馬は、自分が生まれ育った
土佐の階級制度を誰よりも嫌いそして同時に
土佐という土地を誰よりも愛していた
その言葉は、まるで歴史を語るように穏やかだった。
「だからこそ、大政奉還という偉大な改革の礎を築いた」
「大政奉還で国を変えようとした坂本龍馬と
修理固成で国を変えようとしたあなた」
銚子はまっすぐ坪野を見る。
「二人はリンクしているように、私は思うわ」
そして微笑んだ。
「あなたは偉大な人よ」
坪野は呆然と立ち尽くす。
「私が・・偉大・・・」
銚子はゆっくり首を振った。
「けど、あなたはやり方を間違えたの」
少しだけ口元を緩める。
「けどね?人間はやり直せる」
その一言が、静寂に溶けていく。
「確かにあなたがやった事は、許し難い事かもしれない」
でも、罪を償う権利がない訳じゃない」
銚子は胸に手を当てた。
「人間にはね?産まれながらに、罪を償い、悔い改め
それを背負って生きる権利が与えられてるわ」
坪野は呆然と呟いた。
「権利・・・」
銚子は優しく微笑む。
「あなたはやり直せる・・・
自分自身を、創り固め直すのよ」
坪野は震える声で繰り返した。
「私・・自分を・・・」
だが次の瞬間、その表情は曇る。
「だが・・無残に殺された村民の魂は──」
その問いに、信愛が静かに前へ出た。
「大丈夫だと思います」
坪野は思わず顔を上げる。
「なに!?」
信愛は遠くを見るような目をした。
「私がこの村に来た時に、無数の霊を視ました」
「霊?」
坪野は息を呑む。
「とても悲しい表情をした霊でした」
信愛はゆっくりと言葉を選ぶ。
「最初は村民の霊、そう予想してましたが
その表情が疑問でした。馬場さんから
新開村は国の陰謀に巻き込まれて消されて
しまった村田って、そう聞かされてましたから
無残に殺された人の霊なら、もっと怒りに
満ちた表情をしてなきゃおかしい」
小さく首を振る。
「けど違った・・・」
そして確信を込めて続けた。
「けど今なら、その表情の理由がわかります」
坪野は固唾を飲む。
「なんだ?」
信愛は優しく微笑んだ。
「坪野さん・・・あなたに自由に
生きていて欲しいって思ってるんですよ」
「わ、私に・・・?」
坪野の声が震える。
信愛は静かに頷いた。
「村民は復讐なんて望んでないんです」
「『私たちの事はいいから
あなたは自分の人生を行きなさい』
そう言ってくれているんじゃないでしょうか?」
坪野は目を閉じた。
「くくく、復讐は何も生まないと?」
苦笑しながら首を振る。
「そんな使い古された決まり文句で私を──」
その言葉は最後まで続かなかった。
突然、嗚咽が漏れる。
堪え切れなくなった感情が決壊し、坪野の目から大粒の涙が次々と零れ落ちた。
その場にいた全員が息を呑む。
信愛も思わず目を見開く。
「え?な、なに?」
突然涙を流し始めた坪野に信愛は動揺を隠せない。
茜も思わず信愛の名を呼んだ。
「の、信愛・・・」
さくらは震える指で信愛の背後を指差す。
「あ、あれ!」
二人に促されるように、信愛はゆっくりと振り返った。
「う、うしろ?」
そこには、新開村へ向かう途中で目にした、あの無数の霊たちが静かに立っていた。
誰一人として怒りの形相ではない。
悲しみを抱えながらも、どこか穏やかな表情で、ただ坪野を見つめている。
坪野は震える声を漏らした。
「み、みんな・・・」
焔垂が目を見開く。
「あ、あれは・・・」
龍河は静かに息を吐いた。
「新開村の村民だろうな」
朝陽も言葉を失う。
「村民・・・」
誰も声を上げなかった。
ただ静かな風だけが吹き抜ける中、村民たちは何も語らず、坪野を優しく見守り続けていた。
コメント
1件
いや~、このエピソード沁みたわ…。銚子さんの「あなたは偉大な人よ」って台詞がガチで刺さった。坪野が泣き崩れるとこも感情移入しすぎてやばかった。あと村人の霊が怒りじゃなくて、坪野の幸せ願ってるのがもう…切ない。この先の再生、祈ってる🔥