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《再び 魔王ピラミッド内部》
「キールさん! 援護に来たよ!」
「アオイ……さん? どうしてここが……」
「アオイさんだけじゃありませんよ!」
「肯定、二人」
「ユキさん! ……と?」
「名前、ユキナ」
魔王メイトをぶっ飛ばしたアオイの後ろから、ユキとユキナがピラミッドに駆け込んでくる。
「キールさん、今なら立てるはずです」
ユキのその言葉に、キールは力を込めて地面を押す――
……先ほどまでの異常な重力が、まるで嘘のように消えていた。
「……どうして?」
戸惑うキールに、ユキが簡潔に説明する。
「アオイさんの放った【零式拳砕】は、魔力のバランスを崩す技です。魔王の重力支配も今だけは崩れているはず」
「なるほど……だが、それを魔王もすぐ察知するだろうな」
「ですから、“今のうちに”です。外へ!」
「……了解した!」
「ヒロユキさんも、気配遮断ローブを着て近くにいるんですよね? ……出てこなくていいです。今、悟られるわけにはいきませんから」
「っ……」
キールは一瞬だけ、言葉に詰まった。
ヒロユキが気配遮断ローブを使っていたのは事実。
だが――アオイもユキも、まだ“真実”を知らないのだ。
「キールさん?」
「……いや、何でもない。ヒロユキ殿も、きっと聞いていると思います」
キールは嘘をついた。
今、真実を話せば動揺が広がる。判断が狂う。
――それだけは避けなければならなかった。
「アオイさんも、行きますよ!」
「うん!」
首を切られた黄金の鎧と、崩れ落ちた魔王を残して――
一行はピラミッドの外へと走り出る。
「……っ、こ、これは……」
キールは足を止め、目の前の光景に言葉を失った。
かつて肌を焼いていた強烈な太陽は、いまや灰色の雲に隠され――
無限に広がっていたはずの砂漠は、その表面から木々を芽吹かせていた。
ピラミッドを中心に、まるで“森”が育っているように。
「驚くのは後にしてください、こちらです」
ユキが足早に向かったのは、ピラミッドのすぐ横。
地面に魔皮紙をあてがうと、土が割れ、《地下シェルター》の扉が開いた。
「灯台もと暗しってやつです。一旦ここに隠れましょう」
次々に仲間たちが中へと入っていく中――
ユキは一人、静かに周囲を見回し、誰もいない空間へ声をかける。
「ヒロユキさんも、入りましたよね? ……閉めますからね。入ってなかったら……知りませんよ」
扉が閉まり、上から土がゆっくりと覆い隠していく。
ユキのその言葉は、
誰にも――届くことはなかった。