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『着いたぞ。降りろ』
体格のいい男が後部座席のドアを開け、瑠衣の腕を引っ張り、降ろさせた。
重厚な木製の両面ドアの横には、小さなウッディプレート。
そこには『Casa dell’amore』と書かれている。
更に下へ目を向けると、外観に馴染んだデザインのインターフォンが備え付けてあり、茶髪男がボタンを押した。
『今日からお前が娼婦として働く場所だ。Casa dell’amoreは、イタリア語で『愛の館』って意味らしいけど、ここでのセックスに愛もへったくれもねぇよな』
瑠衣は冷や汗が出そうなほどに鼓動をドキドキさせつつ、屈強男が嘲るように説明していると、入口のドアが開かれ、三十代くらいと思われる女性が顔を出した。
『愛もへったくれもなくて悪かったね!!』
『うわっ! り……凛華さん!』
『愛はないかもしれないけど、うちらはセレブたちに夢のような時間をを与えてんだよ』
男二人が慌てて姿勢を正してペコペコと頭を下げているのを見やり、凛華と呼ばれた女性は、フフンっと鼻で笑う。
凛華の言った『セレブたち』のワードに、瑠衣は思わず目を見開いた。
(セレブたち? って事は、金持ちとか有名人の皆さんに身体を売る……って事?)
瑠衣は男二人と凛華を大きな瞳で交互に視線をキョロキョロさせる。
『で? この子がさっき電話で話してた新入りの娼婦? 南洋ファイナンスさんも、男ウケしそうな子をよく見つけてくるねぇ』
凛華が値踏みするように、瑠衣を爪先から顔へと視線を這わす。
今の瑠衣の服装は、自宅から直接ここに連れてこられたため、部屋着のTシャツにテンセル素材のワイドデニムといったスタイル。
同性から舐め回すような、ネットリとした眼差しを受け、瑠衣は居た堪れない気持ちになり、穴があったら入りたい心境だ。
南洋ファイナンスで借金を返済できない女たちを、この娼館に送り込み、身体で稼いでもらう。
多くの女たちをこの二人は娼館に送り込み、オーナーと思われる凛華に紹介しているのだろうな、と瑠衣は朧げに考えていた。