テラーノベル
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💚「翔太様、朝でございます」
低く落ち着いた声が、耳元で聞こえる
……無理、まだ眠い
💙「……あと5分」
布団に顔を埋めると、すぐに布団を剥がされた。
💚「昨日も同じことを言っていましたよ。起きてください」
💙「うぅ、寒い……」
渋々目を開ける。
そこには、きっちりと整えられた服を着て、カーテンを開けて立っている阿部亮平。
💙「おはよ、亮平」
💚「おはようございます。ちゃんと起きれて偉いですよ」
💙「……」
子ども扱いすんな、って言いたいけど、
起こしてもらってる立場だから黙る。
この人、俺が小さい時からずっと一緒だ。
朝が弱い俺を起こすのも、
朝ごはんを作るのも、
学校に送り届けるのも、
全部、亮平。
正直、過保護すぎる。
俺の家、渡辺家はヤクザだ。
それが、俺はずっと嫌だった。
幼稚園の頃。
「翔太くんとは遊んじゃだめだってママに言われた」
そう言われて、気づいたら一人だった。
小学校も、中学校も同じ。
渡辺って名字だけで、みんなが距離をとった。
だから、高校は家から離れた場所を受験した。渡辺組のことを知らない人が多いところに。
そのおかげで、今は友達もいる。
普通に笑って、普通に話して、普通の高校生活を過ごせている。
まぁ、送り迎えがある時点で、普通かは怪しいけど。
💚「朝ごはん、できてますよ」
ダイニングに行くと、もう用意されてあった。
栄養バランスも味も、完璧。
この亮平はほんとに何でもできる。
💙「俺さ、もう高校生なんだけど」
💚「ええ、知ってますよ」
💙「だから一人で準備もできるし、学校も──」
💚「危ないですから」
被せ気味に言われ、言葉が止まる。
💚 「翔太様は、渡辺組のご子息なんですから」
食事を終え、制服に着替えると、椅子に座らされる。
💙「髪くらい自分でやるって」
💚「はいはい。動かないでください」
昔から、これも亮平の役目。
💙「過保護すぎ」
💚「そうかもしれませんね」
支度がすみ、部屋を出ると、
そこにはいつもの顔ぶれが揃っていた。
「坊ちゃん、おはようございます!」
「行ってらっしゃ〜い」
「気をつけてな」
ラフな格好をした奴や黒いスーツを着た奴らが、ずらり。
全員、俺の家の組員だ。
💙「おはよ」
そして、全員が一斉に頭を下げた。
「「行ってらっしゃいませ!」」
声でか。
💙「もういいって、毎回それやらなくていいから」
毎回イカつい奴らに、野太い行ってらっしゃは恥ずいし、なんかおもろくて笑ってしまう。
誰かがクスッと笑う。
「昔はちゃんと返事してくれたのになぁ」
「坊ちゃん照れるよ」
後ろで見ていた亮平が、少し困ったように笑う。
💚「はいはい、先輩方そろそろ時間なんで」
「阿部は相変わらずだな」
そんなことは無視して、俺の方に振り返る。
💚「翔太様、行きましょう」
「あいつ無視しやがった」
車に乗りこみ、学校へと向かう。
💙「今日は、帰り友達と帰ってもいい?」
💚「……検討いたします」
それはたぶん、却下と同じ意味。
💙「ちぇ……」
俺はため息をついて、シートに背中を預けた。
過保護な奴とヤクザの息子。
俺たちの朝は、今日も変わらない。
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