テラーノベル
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月曜日。出社した凛が席に着くと、フロアに来ていた西岡匠が声をかけてきた。
「二階堂ちゃん、おはよう!」
「あ、西岡さん、おはようございます」
「どう? その後、彼氏とは?」
「ええ、まあ……順調ですよ」
「ん? そのネックレス、新しい? 見たことないな」
(げっ……なぜそんなところに気づくのよ。気持ち悪いにもほどがある……この『ズボンずり下げ腰振り男』め!)
心の中で毒づきながらも、凛は笑顔を作って答えた。
「彼に買ってもらったんです」
ちょうどそのとき、通りかかった同僚二人が驚いたように声を上げた。
「えーっ、うそー! それ銀座の高級ブランドのネックレスだよね?」
「わあ、彼氏さんお金持ち!」
「素敵~。私もそれいいなぁ~ってずっと思ってたの」
「二階堂さんの彼、センスいいね~」
羨ましそうに言い残し、二人は席へ戻っていった。
その様子を見て、西岡は内心舌打ちした。
(ちっ……そんな高いものを贈る男? いったいどんな奴なんだよ)
イライラを押し隠しながら、西岡は話を続けた。
「お前の彼氏、すごい金持ちなんだな」
「そんなことないですけど……」
「じゃああれか。好きな女には金を惜しまないタイプってやつ?」
「どうなんでしょう?」
凛は苦笑いを浮かべた。
(それにしても、しつこいなあ……私が何をもらおうと西岡さんには関係ないのに……)
早く仕事を始めたかった凛は、会話を切り上げるように席へつき、言った。
「すみません、朝いちで電話しないといけなくて……」
「ああ、ごめんごめん。邪魔して悪かったな。じゃあ、またな」
一方的に会話を終わらせられた西岡は、少しムッとしながらその場を離れた。
営業部へ戻る途中、彼の苛立ちはさらに募っていく。
未練がましい思いを抱えたまま歩いていた西岡は、ふとある考えに行き着いた。
(どんな男なんだ? せめて一目でも見られたらなあ……)
その瞬間、脳裏にひらめきが走る。
(そうだ! あの手があったか!)
途端に機嫌が良くなり、西岡は鼻歌まじりで自分のフロアへ戻っていった。
数日後、凛はいつものように出社し、席についた。
まずは奈美のレコーダー付きボールペンを確認する。最近は毎朝の習慣になっていた。
(これもいい加減やめてほしいなぁ。電話も会話も全部聞かれてると思うと、落ち着かないし……)
そう思いながらペン立てを見ると、奈美のシルバーのボールペンの隣に、見覚えのない黒いボールペンが挿さっていた。
(えっ、うそっ……。これって、まさか同じレコーダー付きの……?)
震える指でそのペンを取り、中央部分を回してみる。
すると、奈美のものと同じように内部にレコーダーが仕込まれていた。
凛は茫然とした。
(誰……? 誰がこんなことを?)
そのとき、机の上の携帯が小さく震えた。画面には、颯介からのメッセージが届いている。
凛は、思わずすがるような気持ちでメッセージを開いた。
【おはよう。リフォームの最終チェックの件だけど、今度の土曜でいい?】
凛は、最終チェックの日が決まったら連絡すると言われていたのを思い出す。
工事はほぼ完成に近く、土曜ならちょうど良さそうだ。
凛はすぐに返信した。
【承知しました。では土曜で。それと、もうひとつご相談がありまして……】
【ん? また何かあったの? 電話しようか?】
そのメッセージを見て、凛は慌てて返事を送った。
【電話だと録音されてしまうので、文字の方がいいです】
【わかった。で、どうした?】
【実は今デスクを見たら、レコーダー付きのボールペンがもう一本増えていまして……】
颯介は客先へ向かう前、車内で時間をつぶしていたところだったが、凛の言葉に思わず眉をひそめる。
【どういうことだ?】
【私にもさっぱり……】
【沢渡が二つ仕掛けた? それとも別の誰かが?】
【カメラを見てみないとわかりませんね】
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颯介は呆れたように息を吐き、こう返した。
【今日の夜、時間空けるよ】
【え? でも今週は予定がいっぱいのはずでは?】
【9時なら行けると思う】
【無理しないでください。私は大丈夫ですから】
【でも、一人で録画を見るのは嫌なんだろ?】
それは図星だった。
奈美と西岡の現場を見て以来、凛は社内の人間関係に不信感を抱いていた。
尊敬していた先輩の裏の顔を知ってしまい、ショックも大きかった。
そこへきて、また新たな不審人物が映っているかもしれない……その瞬間を一人で迎えるのは気が重かった。
【すみません……では、お願いします】
【わかった。じゃあ、この前のカフェに9時で】
【承知しました。ありがとうございます】
メッセージを終えると、凛は体中からふっと力が抜けるような安堵を覚えた。
そして、颯介に守られているような感覚がくすぐったくて、思わず小さな笑みがこぼれた。
一方、颯介は怒りに似た感情がこみ上げてくるのを感じていた。
(いったいあの会社はどうなってるんだ。なぜ凛ばかりが盗聴される?)
先日、思いがけず楽しい時間を過ごして以来、彼は凛のことが気になって仕方がなかった。
本当は昼休みか夜に送ればよかったメッセージを、なぜか朝一番で送ってしまった。
一人の女性にここまで心を奪われるのは初めてだった。
夜眠る前には、凛の首筋で自分が贈ったダイヤが光る光景が脳裏に浮かぶ。
その白く滑らかな肌に触れてみたい……唇でなぞってみたい……そんな衝動が、毎夜颯介の胸を締めつける。
(俺は……どうしちまったんだ?)
困ったように微笑みながら、颯介は視線を窓の外へ向けた。
コメント
51件
やはり『ズボンズリ下げ腰ふり男』も同じ事してる⁉️ なんて奴らなの😡 ところで、颯介さんはもう堕ちてますよねー⁉️🤭
西岡も?考え方が奈美と同じってのが笑えるね。 もしかして奈美に教えたのは西岡? そこまでして知りたいの?
西岡と奈美の歪んだストーカー気質な思考が似てる😓 そんな事がバレたら仕事もクビになるのでは?🫠🫠 颯介さんは凛ちゃんが気になるし変な輩から守りたいよね。 段々と思いを自覚してきたかなぁ🤭