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銀色の雪が舞い落ちる浜辺で

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銀色の雪が舞い落ちる浜辺で

第3話 - 第3話

565

2025年01月26日

#大人の恋愛

#大人ロマンス

#ハッピーエンド

#イケメン

#オフィスラブ

#恋愛

瑠璃マリコ

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瑠璃マリコ

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男性は省吾だった。

省吾は腕を伸ばし奈緒の上に傘を差し出していた。

奈緒は驚いて省吾を見る。

歳の頃は30代後半。

顎の辺りまである髪は緩くウェーブがかかり、口周りにはうっすらと髭が生えている。

顔は彫りの深い濃い系のイケメンで、奈緒はその顔に見覚えがあったがどこで見たのか思い出せない。

もしかしたらテレビで見たのだろうか？　という事はもしかしたらモデルか俳優？

「あ、あの……ありがとうございます」

「何か落とし物ですか？」

「あ、はい……」

「落とした物は？」

「えぇと…指輪です……」

それを聞いて省吾は困ったように呟く。

「指輪かぁ……指輪は小さいから見つけにくいよね？　落としたのはこの辺り？」

省吾は傘をグイと奈緒に渡すと、ダウンのフードを被り屈み込んで指輪を探し始める。

それを見た奈緒は慌てて言った。

「あっ、あの、大丈夫ですから、一人で探しますので……ご親切にありがとうございます」

奈緒はそう言って省吾に傘を返そうした。

しかし省吾はそれを制止する。

「二人で探した方が早いですよ。それに早くしないと雪が積もっちゃうからね」

省吾は微笑んで言うと再び探し始める。

申し訳ない気持ちでいっぱいの奈緒は、そこで省吾に言った。

「多分もう見つからないと思います。だから探さなくても大丈夫ですから……」

「え？」

省吾は意味が解らないといった様子で、奈緒の方を振り向く。

その時省吾は初めて奈緒を正面から見た。

そこにいる女性は20代後半くらいだろうか？

肌は白く大きな瞳が印象的な清楚な美人だ。

体型は細身の華奢なスタイルで、肩よりも長いブラウンのロングヘアがとてもチャーミングだ。

寒さのせいで女性の鼻は少し赤くなっている。

（おとなしい雰囲気の正統派美人か……）

そう思いつつ省吾は聞き返す。

「見つからないのに探しているの？」

「あ、はい、すみません……実はその指輪、昨日失くして……あ、じゃないか……つまりその……私が海に投げたんです」

「投げた？　指輪を？」

省吾は驚く。

どうやらその落し物は何やら訳アリのようだ。

「実はもう必要ないかなと思って海に投げ捨てたんです。でもちょっと事情が変わって、もしかしたら捨てちゃいけない物だったのかなって……だからもし見つかれば持って帰ろうかと……アレ？　なんか私の説明、変ですか？」

省吾は奈緒の説明を聞き、その落し物がどういう物なのかが大体わかった。

そして笑いをこらえながら言った。

「あーなんとなくわかります」

（きっと彼氏と喧嘩でもして捨てたんだろう。でも急に寄りが戻って捨てた事を後悔した？　多分そんな感じだろうな）

そこで省吾は続ける。

「海に投げた物が軽い物だったら波で戻って来る可能性はあるけど、指輪は金属だからどうかなぁ？　もしかしたら投げた瞬間砂の中にめり込んでいるかもしれないしね。あ、ちなみに僕は釣りをやるんですけど、金属製のルアーや錘は海に落とすと二度と戻ってきませんよ。だからちょっと厳しいかもなあ…」

省吾の説明を聞き奈緒は「やっぱり」という顔をした。

「やっぱりそうですよね」」

「ごめんね、なんかズバリ言っちゃって」

「いえ、私も薄々そう感じてました。だからはっきり言っていただき逆によかったです。これで諦めもつきますから。本当にスミマセンでした」

奈緒は省吾に向かってぺこりとお辞儀をすると、借りていた傘を省吾に返す。

「傘、ありがとうございました」

「家は近く？　雪がすごいから良かったら車で送りますよ？」

省吾の親切な申し出に驚いた奈緒は、慌てて手をブンブンと振りながら言った。

「家は近いので大丈夫です。お気遣いいただきありがとうございます」

「そう？　じゃあその傘は使って下さい」

「えっ？　でも傘をお返しする機会がないですし……」

「ハハッ、傘ならまだ家に何本もあるから大丈夫ですよ」

省吾はそう言って腕時計をチラリと見る。そろそろここを出ないと午後からの会議に間に合わない。

「おっともうこんな時間か……じゃあ私はこれで！　風邪ひかないようにね」

省吾はニッコリ微笑むと、駐車場へ向かって走って行った。

奈緒は省吾の後ろ姿に向かって大きな声で叫んだ。

「ありがとうございましたっ！」

その声に気付いた省吾は奈緒に向かって軽く手を挙げると、大粒の雪が降りしきる中階段を駆け上がって行った。

奈緒は浜辺にじっと佇んだまま、省吾の後ろ姿を見送った。